ゲーム

もっちゃん(元貴)

スタート


友達の遊亮りょうすけが、俺の誕生日プレゼントにバザーで中古ゲームソフトを買って来た。


ゲームのタイトルが《人間操作ゲーム》という聞いたことない名前だ。


気になっていろいろ調べたが、どこにもこのゲームについて情報がなかった。


一抹の不安があったが、せっかく友達がくれたゲームなので、やってみることにしよう。


ゲームソフトについて、説明書が同梱どうこんされていたので読んでみる。


えっと、なになに‥‥‥


『このゲームは、ただのゲームではありません! ホンモノのゲームです 主人公の名前や性別、また全都道府県を舞台に設定ができ、楽しく遊ぶことができるゲームです』


なんだこれ?


裏にもなんか書いてあるかなと見てみたが、この文書だけしか説明がなかった。


とにかくやってみるか!


自宅にあった家庭用ゲーム機を持ってきて、ゲームの電源を入れた。


設定画面が出てきた。


性別は、男性っと、年齢は、自分と同じ二十代にしておこう。


舞台の場所は、自分が住んでいる西端県にしばたけんに設定にしてっと。


主人公の名前は、そうだなぁ‥‥


友達の遊亮にするか!


よし! 設定完了。


さてと、ゲームがようやく始まるな。


しばらくすると、画面が切り替わった。


        


       人間操作ゲーム


       →スタート


        やめる


スタートを押した。


いよいよ始まるな!


どこかの駅のホームにいるところから始まるみたいだ。


あれ?このホームどこかでみたことあると思ったら、最寄り駅の富士橋駅ふじはしえきじゃんか!


すげぇー、古いゲームのはずだけど最近、リニューアルした駅そのまま再現されている。


感心して画面を眺めていると、アナウンスが流れた。


「まもなく一番線を列車が通過します 白線までお下がりください」


アナウンスが聞こえた後、なにやら画面に選択肢が出てきた。


   →飛び込む

    

    飛び込む



いや、両方とも同じじゃんか! バグか?


しかし、どこに飛び込むのだろうか?


まさかとは、思うけど‥‥‥


物語を進めるため、仕方がないので、飛び込むを選択した。


「えっ!!なに、なに、足が勝手に動き始めたんだけど!」


あれ?なんか遊亮みたいな声が聞こえてきたような‥‥‥



「うぁぁぁぁ!止まらない!誰か助けてぇ!」



主人公、遊亮がホームから線路に、飛び込んだ!



すると、通過列車が目の前に来た瞬間


列車の急ブレーキの音と、ホームにいた人たちの悲鳴が!


すると画面が暗転して、ゲームオーバーになってしまった。


「えっ!何これ?どういうこと?」


このゲームについて、一体何なんだと全く理解が出来なかった。


そう言えば、さっき主人公の声が遊亮そっくりだったけど、心配になったから、電話をかけてみた。


『プル、プルルル』


「でないな、今忙しいのかな?」


電話は鳴るから、電源は入っていると思うけど、また後で掛け直すか。


気持ちを落ち着かせようと、テレビを見ることにした。


しばらく、ニュースを見ていたら、テロップが出た。


富士橋口駅ふじはしぐちえきから下上下駅しもあげえき間(上下線)で人身事故のため運転見合わせ』


えっ!もしかして、富士橋駅で人身事故じゃないよなと思って、ネットで調べてみると、富士橋駅で、人身事故って書いてあった。


嘘だろう?遊亮が電話に出ないし、ゲームと同じ富士橋駅で、人身事故って!


まさか、あのゲーム、現実とリンクしているのか?


心配になって、再び遊亮に電話をかけた。


『プッ、プッ、プルルル』


「はい、西端県警の柳原と申しますが」


「えっ!何で遊亮のスマホに電話しているのに刑事さんが?」


「それはですね、今、事故に遭われた人の身元を確かめるために持ち物を調べていたところスマホが鳴ったため、電話に出た次第です」


おっと、驚いて心の声が口に出てしまったようだ。


「ところで、あなたはどちら様ですか?」




「あの、遊亮の友達のあきらと言います」


「なるほど、ご友人でしたか、今ちょうど持ち物から学生証が見つかりまして、大下遊亮さんと確認しました、あなたの友達の名前で間違いないですか?」


「はい、間違いないです」


「そうですか、ご協力ありがとうございます、確認が取れましたので、これで失礼します」


「はい」


そういって電話が切れた。


うっ、そんなっ!遊亮が‥‥‥


涙が出てきた。


俺は、刑事さんに言えなかった。


信じてもらえないかもしれないが、俺のやっていたゲームのせいで遊亮が死んだのを!


いまからでも、遅くない。


刑事さんに、何回も話そうと思ったが、あと一歩のところで躊躇ちゅうちょしてしまう。


でも、このことを言っても、変な人だと思われるだけかと思うようになった。


まだ、このゲームが原因だと確信は持てないし。


もうこの事は、自分の胸にそっとしまっておこう。


そう思ったのだった。



数日後


あれから、毎日机に置いてあるゲームソフトを見るたびに、遊亮のことが頭に思い浮かぶ。


もうこれ以上は、メンタルが耐え切れないので、このゲームを処分することにした。


処分の仕方がよくわからないので、近所にあるリサイクルショップに相談しに行った。


「あの、すみません、このゲームソフトを処分したいのですが?」


「はい!処分ですね!分かりました!」


どうやら、処分してもらえるみたいだ。



「では、こちらで、処分してもらえるんですね 処分費用はいくらですか?」


財布を手に取る。



「費用は、いらないです」



「無料でやってもらえるんですか?」



「はい!」



はぁ、よかった。


これで、もうこれ以上、このゲームで被害が起こることはないだろう。



このゲームで起きたことは、俺の墓場まで持っていこうと決意した。



しかし、その決意とは、裏腹に店員は、ゲームソフトを処分しようとはしなかった。


なんと、店頭で売ってしまったのである。


「なんか変なタイトルのゲームがある!値段も安いし買っていこう」


近所に住む小学三年生の男の子が、そう言って買ってしまった。


家に帰って、男の子は説明書も読まずに、ゲームを始めてしまった。



「えっと‥‥主人公は、誰にしようかな?」


悩んだ結果


「じゃあ、パパにしよっと!」


年齢、性別、都道府県の設定完了っと。


ようやく始まるなー。


どんなゲームなのかな?


ワクワクするなぁー!



ゲーム画面を見ながら、矢印をスタートに選択する男の子であった。





       人間操作ゲーム


       →スタート

 

        やめる




     


         完



















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲーム もっちゃん(元貴) @moChaN315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ