第4話 アップル&ワシミミズク編

この2人はカカオとワシミミズクの仕事を手伝いながらも、各地のちほーの調査をしていた。ここ数年で不思議なフレンズが見られるようになった。悪魔で可愛らしいフレンズもいたりだとか。そのように新しく生まれたフレンズが楽しく暮らせるようにサポートをする仕事をしている。

そんな中、とある新しい仕事を始めた。それは…


「いらっしゃい、なのです。今日はどういった悩みを持っているのですか?」


多くのフレンズの悩みを聞いてあげたりして、それに対するアドバイスをする相談所を始めた。もちろん図書館の仕事も欠かさず行うが、そのついでとして行う。なんとこの相談所は懺悔室としての役目も果たしてしまう。

この懺悔室、数十年という長い年月であったとしても自由気ままに生きるフレンズたちにとっては驚くくらい早くすぎるものであり、実際にオレンジたちがもたらした生活に慣れていないフレンズもいたため、このような相談所を設け、少しでも日々が過ごしやすくなるように、という願いを叶えるために始めた。

本日の一人目の客は…


「マーゲイですか。PPPはいいのですか?」


マーゲイ。PPPのマネージャーであり、PPPの大ファンである。そんな重要な位置に存在するフレンズであり、今日も仕事があるはずのフレンズがなぜこんなところにいるのかというと…


「大変なんです!」


「落ち着くのです。用件を伝えるのです」


「すみません…プリンセスが、喉を枯らしてしまったんです!」


昔と変わって信頼が築かれ、マーゲイも呼び捨てで呼ぶようになった。

…が、そんなことはどうでも良い。アイドルにとって喉を枯らしてしまうことは重大なことである。いつも通りのパフォーマンスができずにライブの延期などをしてしまうとファンとの信頼関係にまで及ぶ…というのはワシミミズク…基ミミちゃんはアップルから散々聞かされていた。アップルは結構なPPPファンになってしまった。


「…とりあえず、今からいうことを覚えておくですよ。そして伝えるのです」


「はい…!」


「まず、喉を酷使するのはここしばらくはやめるのです。無理して練習するとそれこそ喉をさらに痛める原因となるのです。しばらくは声を出さないパフォーマンスの練習をするといいのですよ。あと、はちみつを使った飲み物を飲むのです」


「はちみつ…?」


「はちみつです。喉をよくする効果があるのです。ですが、そのまま食べるのは逆に不味かったりして食べにくいので…ロッジに行くと良いのです。タイリクオオカミが特製のココアを出してくれるはずです」


「タイリクオオカミさんが?」


「そうなのです。我々もそのココアを再現しようかと思っていたのですが、タイリクオオカミがやる粉やミルク、はちみつの配合が完璧で美味しく飲めるのでおすすめです。お願いすれば水筒で追加ももらえるはずなので、ねだってみるといいのです」


「なるほど…!」


「あと、食べ物にも気を遣ってやるともっと早く治るのです。例えば、喉越しがよかったり消化のいい食べ物を食べると良いです。うどんや豆腐です。間食はゼリーとかがいいのです。紹介状を書くのでレストランに寄って行ってうどんをいくらか貰っていくといいのです。アライグマが作るうどんはかなり美味しいと評判なのです」


「ありがとうございます!」


ミミちゃんは毎日訪れる悩みを持ったフレンズのために得た知識をフル動員して的確にアドバイスをしていく。ミミちゃんにとってこの仕事は天職のようなものだった。図書館で学び続け、アップルによって更なる知識をつけたミミちゃんは今日もフレンズのために悩みを聞いていた。

そんな中、アップルは…


「ミミー、お待たせー」


「差し入れですか。ありがとうございます」


フレンズの中でもかなり勤勉な方とはいえ、ミミちゃんと比べれば頭は悪い故、サポートに徹している。


「どう?調子は」


「いつも通りです。そっちこそ、研究は進んでいるのですか?」


「もちろん。仕事なら、ドンと俺に任せて!」


「助かるのです。ではこの書類を片付けておいてほしいのです」


「…うん、頑張るよ…」


とんでもない量の書類。でもミミちゃんは信頼しているからこそ、仕事を任せている。アップルならこの程度、余裕だということを知っているから。


「ごめんなさーい」


「あ、いらっしゃい…ってか、カエデくんか」


「久しぶりなのです」


次の来客はカエデだった。下の方に用はあまり無い故、山から降りてくることは珍しかった。


「ちょっと、相談がありましてね…」


「わかったのです。座るといいのですよ」


「うん、ありがとう」


「あ、カエデくんもりんごを食べな。俺が今さっき切ったから」


「あ、ありがとうございます」


「…で、相談とはどういうことですか」


「二つあるんですけど、まず一つ。博士と教授の研究については…」


「あの研究隊についてですか。わかっていますよ。結構前にその研究を中止させただとか。私の子供も研究隊に所属していたのでわかっているのです」


「なら話は早い。その研究結果は…」


「ある程度知っているのですよ。一応ここにもまとめた冊子を置いているのですが、見ますか?」


「…いや、遠慮しておくよ?」


2人はすでに嫌な予感を感じていた。カエデがこの研究についての話を切り出すこと。神々でしか取り扱わないと約束した博士と教授の研究。それが再び普通のフレンズたちに話が持ち込まれる。関係者だとはいえ、約束と違かった。


「…で、それがどうかしたのです?」


「…2人は、もし叶うなら、人間と交流してみたいって、思う?」


「俺は絶対拒否するね」


「私もです」


「は、早い…」


「俺はもう、この世界で生きるって決めたからね。戻れるってなっても絶対戻らない。愛する妻を残して戻るのは絶対しない。それに…あの世界にはまだ俺にとって忌々しい記憶が心にこびりついているから」


「…書物を読み漁り、元人間のフレンズにも聞きましたが、これ以上人間の文化を知る価値は無いのです。フレンズはフレンズの暮らしをする。それが我々と神々の決定であるはずなのです」


「…まぁ、そうだね」


カエデにもいくらか思うところはあったのだろう。神々の間で決定されたことも、神は多く存在するため、納得がいかなかったこともあるはず。


「…そっちで何が起こっているか、我々には到底わからないのです。なんせ、高次元の話ですから。だからといって、こちらに情報を渡してアドバイスを求めるのも間違っているのです。カエデにはビャッコという最高のパートナーがいるじゃないですか」


「…そうか…」


「ビャッコとそのことで少し喧嘩した、とかならよく話し合ってみるのがいいのです。互いに納得のいくようにならなければずっと引きずるだけなのですよ。それに、引きずったままだと関係がより悪化しかねないのですから」


「わかった、話してみる」


少しカエデに元気が出た気がする。こういうのも、年長者の役目でもある。


「…あ、あと二つ目の相談なんだけど、これは個人的なことね?」


「ほう、なんですか」


「何か、変わったこととかない?身の回りとか…体調とかでも大丈夫」


「…?特に何もないですが」


「…なら、いいんだ。ありがとう」


おそらくこれも、神々で扱われている問題の一つなのかもしれない。生活が大きく変わった故、神々も大忙しなのかもしれない。自分たちが見てないだけなのかもしれない。


「…深くは詮索しないので安心するといいのです」


「うん、ありがとう。…あ、ありがとね?僕はこれで失礼させてもらおうかな」



「よし、終わった…!」


「やっと終わったですか。お疲れ様なのです」


アップルの書類仕事が終わったらしい。あれだけ山積みの書類を片付けるのも仕事好きなアップルの得意なことの一つだった。


「そこにコーヒーを淹れてあるので、飲むといいです」


「ありがと。…ミミ」


「どうしたのですか?」


「楽しい?」


「…?楽しいですが」


「あー、えっとね、最近…てか、何年もずっと俺たち、図書館とここを行き来している生活送ってて、飽きないかなって」


「…一応これも仕事なので、大丈夫なのですよ。図書館では学びつつ、アップルとの夫婦の生活も充実しているので」


「なら、よかった」


「…最近おかしいのです。どうしたのですか?」


ここ最近、アップルの顔から笑顔が少なくなって来ていた。


「…もしかしたら、カエデくんが言っていた2個目の質問ってこれが関係しているのかもしれないなって、今気づいた」


「ほう、どんなものですか」


「…娯楽だよ」


「…娯楽?なぜ今」


「俺たち、最初の5人のオスはさ、元々人間だったから、あの世界、ゲームだとか小説だとか、娯楽に満ち溢れた世界で…ここに来てからは、しばらくは新鮮味がある日常がずっと続いて、ミミとの生活ももちろん今でも幸せなんだけど…俺は、やっぱり、この生活に慣れすぎたのかなって、思った」


「…」


「朝起きて、顔洗ったりして、ご飯当番の時にはみんなの分のご飯を作って、朝ごはんを食べて、少し本を読んだらここに来て、書類仕事。午後5時になったら図書館に帰って、夕ご飯を食べて、お風呂入ったら本を見たりして、そしてミミと一緒の布団に潜って寝る…この生活が本当にずっと続いていて、暇なんだなって」


「…そうなのですね。気づけず、申し訳ないのです」


「いや…ミミが謝ることじゃないしなぁ…」


人生そのものが飽きてしまえばそれはもうおしまいだが、アップルはその一歩手前まで来てしまっている。割と事態は深刻だった。


「ふむ、ではこうするのです」


「ん?」


「この相談所をしばらくお休みにするのです。そして、アップルには私のことも気にせず、好きに生活してもらうのです。どこかに旅しに行くのもいいですし、秘蔵書庫の本を読み漁るのもいいのです。それで何か変わればいいのですが」


「…悪いなぁ、ミミには…本当に…」


「こういうときに何もできない私も、本当に悪いのです…ただ、何か出かけたりするときは私に伝えるのです。夕飯がいらない場合とかもありますから」



アップルの数日間に及ぶ自由な日が始まった…


1日目

8:00

本来ならこの時間にアラームを設定しているはずだが…


「…」


寝ている。アラームも鳴っていない。ずっと、寝るつもりなのか。


「…ふふっ、アップルは、寝たかったのですかね」


もちろんここでいつも通りミミちゃんは起きる。アップルを起こさないよう、ゆっくり起き上がり、足音を鳴らさないように静かに部屋を出ていった。



10:00


「ふぁ…ぁ…」


やっと起きた。まだはっきりしない意識の中で目の前にうっすら料理があることに気づいた。


『いつ起きるかわからないのでここに朝食を置いておくのです。好きなタイミングで食べるといいのですよ。ワシミミズク』


ミミちゃんからの朝ごはんだった。冷めているフレンチトーストに常温のヨーグルト、そしていつも飲むオレンジジュースだった。

冷めているからなのか、少しいつもより美味しさが感じられなかった。


朝食を食べ終わり、次にすることは…


「…」


寝る。また寝た。実はアップル、人間の頃は本当に寝ることが大好きだった。今では改善されたが、それでも寝ることは至高と考えていた。



15:00


「ふぁぁ…」


起きた。今度は自然に起きたのではなく、本のページをめくることが聞こえたことで起きた。

そして気づくと、いつもよりまくらが高い気がした。意識を戻せば…


「…やっと起きたのですか?」


目の前にミミちゃんがいた。膝枕をしていてくれていたらしい。


「二度寝なんて、アップルらしく無いのです」


「いや…俺、寝るの好きだし…」


「そうなのですか?ここまで一緒に生活して来ているのに新しい発見なのです…そうだ、少し待っているのです」


ミミちゃんが部屋から出ていった。

少しすると…


「待たせたのです」


ミミちゃんが戻って来た。手に持っているのはティーカップやらお菓子やら、茶会のセットだった。


「ハーブの成分を強みにしたハーブティーなのです。リラックス効果があるので今のアップルに最適なのですよ」


「ん…ありがと…」


「さて、ちょっと暗いですが、二人でお茶の時間にでもするのです。腕によりをかけて焼いたので美味しいといいのですが」


ミミちゃんが淹れてくれた温かいハーブティーと焼いてくれたクッキー、カップケーキ。食べないわけにはいかなかった。


「あれから大体10時間くらい寝ているはずなのですが…気分はどうなのです?」


「…まぁ、普通?」


「…あれだけ昔から夜更かししていればそれが普通なのかもしれないのですが。まぁそれで疲れが取れるならいいことです」


「そうだねぇ…俺も、まだまだゆっくりしていたいな…」


「アップルは、割と頭を使うのが苦手なのですか?」


「昔はね。昔は俺も、プラムより頭悪かったからね」


「プラムより…?」


「プラム、あぁ見えてもかなり頭いい方だからね」


「なるほど…ボードゲームとやらであれだけ戦術を考えられるのも納得がいくのです」



雑談をミミちゃんとしばらくし、また一人の部屋となった寝室で…


17:00


「…」


まだ寝ていた。夕食の時間だぞ。そろそろ起きろ。



22:00


「…ん」


「…ようやく起きたのですか?」


2人にとっては夜中の時間、本来この時間に寝つき始める2人だが、そんな時間にアップルは起きてしまった。


「夕食、食べますか?」


「…いや、遠慮しておくよ」


今から寝ようとしているミミちゃんの手を煩わせるのは悪い気しかしなかった。確かにお腹は空いているが。


「…それにしても、一日中トイレも行かず…流石にお風呂とトイレには行って来たらどうですか?」


「…それも、そうだね…すっかり忘れてた…」


「…ここまでくると逆にすごく思えてくるのです。お風呂、付き合うのです」



22:15


本来ならすでに夢の世界に誘われている2人だが、今はお風呂に入っていた。このためにお風呂のお湯を張り直し、掃除もしていた。

そして、この2人も互いに裸になって入るのも躊躇がない二人だった。


「気分はどうなのです?」


「…よくは…なったかな?」


「それはよかったです。私にしてやれることは少ないので」


「…もうこんな時間か…何年か前からもうこの時間から寝るようになったねぇ…」


「我々、性欲も無くなりましたから。やろうと思えばやれますが…もう私も子供を産めない体になっていますし」


「そう思うと、俺たちが愛を確かめ合うのも少なくなったね」


「確かにそうなのです。ここでキスを何度もしてやってもいいんですよ?」


「…寝る前にお願いしようかな?」


「…肌を重ねあって、昔みたいに深く愛し合うのも、いいのですよ?」


「…じゃあ」


風呂から出た後は23:00で、ミミちゃんも珍しく、夜更かしして2人で思いっ切り愛し合った。2人が疲れ果て、寝つき始めたのは3:00だった。



10:00


「…ん…」


ミミちゃんが目を覚ます。隣には静かに呼吸を繰り返しながら幸せそうに眠る夫のアップル。この景色を、ミミちゃんは静かな笑顔で満喫していた。


「…たまには、こんな怠惰な生活も悪くないのです…」


そしてミミちゃんは再び眠りについた。今度はアップルを抱きしめながら。もう離さないと言わんばかりに。一緒にだらけた生活を望んでいるかのように。


「…ふふ…」



あれから起きたのはいつから、だろうか。


「…ふぁぁぁぁ…」


随分と長い時間寝た気がする。外は明るい。太陽の位置から真昼、と捉えていいのか。

隣にはいまだアップルを抱きしめ続けているミミちゃんがいる。それも寝ているにしてはかなり強めの力で抱きしめている。

アップルが時間を気にしない休暇を取れるように、とミミちゃんが時計を外してしまったが故、正確な時間がわからない。だが、お腹が空いた。


「…ミミー?」


「んぅ…ダメなのです…」


寝ているはずなのに、まるで起きているかのような反応。いや。


「…起きてるでしょ」


「…バレましたか」


起きていた。アップルからしたらミミちゃんのこんな姿を見るのは久しぶりだった。


「…おはようなのです」


「うん、おはよ」


「…お腹が空いたのです」


「そうだね…何か作る?」


「いや、面倒なのです。レストランに行くのです。どうせ、昼なのですから」


もう、ミミちゃんも時間だとか日を気にすることをやめていた。ただこの瞬間、愛する夫が目の前にいてくれることが嬉しくてたまらなかった。以前はそのようなことを気にしても、そんなことは感じられなかった。



レストランに着いた。


「ん、アップルたちか。随分と久しいな」


「コスモスか、久しぶり」


「本当に久しぶりだな。カカオたちから1週間も部屋から出てこなかったから心配したと聞いたが…」


「「えっ」」


まさか、あの時間の中で一週間以上も時間が経っていたとは思っていなかった。その時間の間で、普通の空腹感を感じ、水も普通に足りていることに疑問を感じていた。


「…まぁ、何があったかは詮索しないでおこう。注文をしてくれ」


「んー、ミミは何を食べる?」


「そうですね…アップルと同じのでお願いするのです」


「そうきたか…じゃ、俺はチーズのミートドリアで。あと、デザートにチーズタルトをお願い」


「了解した。待ってろ」


先ほど言われた一週間以上も部屋から出てこなかったこと。気がかりだったが、ミミちゃんはそんなこと気にしていないようだった。アップルと顔を合わせて、幸せそうな顔をしていた。長年2人で生き続けて、今まで見たことがないような顔をしている。

あれだけ寡黙で勤勉で、仕事に励んでいたミミちゃんがこんなに、怠惰になっているとは。


「…?どうしたのですか?そんなに顔を見つめて」


「…幸せそうだなぁって」


「当たり前なのです。幸せなのですよ。今まで以上に」


話し方はいつもと変わらず、冷静な話し方だったが、明らかに顔が綻んでいる。


「…相談なのです。夢の中で、ずっと考えていたのです」


「ん?」


「我々は、カカオと博士の4人で図書館で暮らして来たのです。勉学に励み、助け合い、多くの研究をして来たのです。ですが、以前から私はゆっくり暮らすのも悪くないと思ったのです。アップルが長い時間寝ている様子を見て、幸せそうに寝ているな、と感じ、いざ私も長い時間寝てみれば新たな感情が生まれて来たのです」


「…」


「そこで、私は提案するのです。…我々、図書館を出て、誰にも邪魔されないような場所で2人で静かに暮らしませんか?」


今までのミミちゃんからは絶対に出ないような提案だった。あれだけ毎日本を見て、勉強して、他を導くような存在であるミミちゃんが怠惰な生活を望むとは思っていなかった。だが、これはアップルからも好都合だった。


「…いいの?俺は別に構わないけど…」


「…確かに、特に博士と別れることは寂しく感じます。しかし、もう、アップルと2人きりで静かに暮らせるなら…その代償も、軽く見えてしまうのです」


「…そっか。ミミが望むなら、俺も付いていく」


「…!本当ですか!?では、帰ったら早速!」


「…何話しているかわからんが、待たせたな。チーズのミートドリア2つだ。チーズタルトが欲しいタイミングで声を掛けてくれ」


「あ、ありがとう」



帰宅後…


「博士、カカオ、相談なのです」


「助手、どうしたのですか?」


「なんか、2人ともかしこまってるけど…」


「…その、我々、引越ししたいのです…」


「…えぇ!?」


「助手!?なんで急にそんなことを!?」


「我々、4人で暮らして来ていますが、実は遠慮していることが多いのでは、と考えているのです…」


「…いや、特に遠慮は…」


「実際我々も遠慮していたところもあるのです。2人も、我々に気遣って満足に愛し合えてないのでは無いですか?」


「そ、それは…」


「ここで我々が引っ越すことで遠慮は無くなるのです。もちろんいつでも会いに行けるのです。どうですか?」


「…まぁ、僕は2人が望むのなら…」


「…さ、寂しくなるのです…!」



あれからまた、何年経ったのだろうか。もうわからない。今が何年の何日で、何時何分何秒、わからない。

ここは、ジャパリパークのどこか。何ちほーかも、長く生き続けた2人にはもうどうでもいいことだった。

2人はかつての相談所を閉め、家でずっと2人きりで暮らし続けた。そして、2人だけの幸せを築き上げた。それは、変わらない事実だった。

この2人が今どこで暮らしているか、誰もわからない。かつて活動を共にしていた友も、2人の子供も、誰もわからない。

ただ、いくつかのフレンズが2人のような影を見たという報告があった。

その報告には、誰もが「本当に幸せそうに、肩を寄せて、飛んでいた」と話していた。

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