第43話 無双。


「チィ……ぬかったか。あの桃色頭、いったい何を宿している?」


 悪魔たちを統べる銀髪の悪魔、アビゲイルは玉座で目を覚ました。


 ここはホワイトコールの本拠地、深層、アークティック大魔堂。


 人間たちが住む王都に、ある人物を介して触媒をばらまき、多量の悪魔たちを召喚させた。アビゲイルもその内の一体。大悪魔を三体と顕現させた時には、人とエルフの都など、数時間で落とすことができるだろう。


 そう算段をつけていたというのに……。


「クソ、〝傲慢〟の魔女め。完全に同期できていれば、俺が勝っていた。人間が器では、まともに魔力も引き出せん」


 赤髪の悪魔リザリオンは、アビゲイルの右席で意識を覚ました。


「ああ、その通りだな。この俺が、人間風情に負けるはずねえ。本気の俺なら、一撃で消し飛ばしてたぜ、クソが……」


 青髪の悪魔フィームも、アビゲイルの左席で悪態をつく。


 実際のところ、彼ら大悪魔たちの本体は、王都で見せた仮の自分たちよりも、倍近く強い。人間が器となっていたことで、元の力を引き出せなかった。せめて、悪魔と人間の魂を完全に同期できた状態で戦っていたら、また違った結果になっていただろうが、敗北は敗北。


 自分たち悪魔は、たかだか人間とエルフに後れを取ったのだ。


「言っただろ、フィーム。決行は明日にすべきだった。剣舞祭の第一部ともなれば、人間共の欲望がいっそうと高まる。同期も即座にすむだろう」


「……ああ、いや、だが、ここまでとはな。今回は、俺が悪かった」


「よかろう。しかし、思い詰める必要はない。奴らの戦力は、把握できた。今頃奴らは、ゲートから湧いた多量の同胞たちに、手を焼いていることだろう。いまこそ、我ら軍勢が動く時だ。カスケーロ大陸の地を、血と冬で染め上げる」


 アビゲイルの宣誓に、歓喜で応えているのは、総勢三〇〇にも及ぶ高位の悪魔たち。さらに大魔堂の外には、低位から中位の悪魔も整列している。


 悪魔たち大軍勢の総数は、一〇万体にも上る。


 王都が大混乱に陥り、エルフたち幹部が疲弊し切っているいま、蹂躙するにはまたとない好機だ。


「ふっ……ふふはははっははははははぁっ! 小手調べは終わった! 奴ら人間とエルフは、精鋭クラスでさえ、低位の悪魔に一〇人掛かりだ! 数では劣っているが、戦争は数ではない! 蹂躙、虐殺、悲鳴に、嘆きが、大陸に満ちる! いよいよだ……いよいよ、念願の大戦が始まる!」


 リザリオンが、珍しく感情を表に出している。

 フィームも鼻息を荒げて昂揚し、アビゲイルは微笑まし気に見守っている。


「お前たちは、初めての経験だろう。まずは落ち着いて、人間の血と涙でもすするがいい。アレは美味いぞ。特に、子持ちの母親は格段にいい」


「なんだよ、アビゲイル。何が、そんなにいいんだ?」


「未だに意味は分からんが、奴らは泣くのだ。どうかこの子だけは、どうか何々だけはと、鼻水と涙を垂れ流しながら、こいねがってくる」


「……なんだ、子供を食ってほしいのか?」


「恐らくな。千年前、その母の前で子供を食ったら、血涙を流して喜んでいた」


「おいおい、アビゲイル! 人間を喜ばせたらダメじゃねーか!」


「いやなに、俺は情け深いのでな。どうせなら、楽に死にたいだろう」


「んあー……まあ、手当たり次第、殺してみるか」


「飽きたら、緩急をつけるといい。なぶり殺しにするのも、なかなか通だ」


 談話を繰り広げながら、三体の大悪魔も外へと向かった。

 何やら、外がうるさい……いや、世界が唸っている?


 大地は天変地異がごとく震え上がり、空には雷鳴が轟いている。

 闇夜の空に見えるのは……人影?


「アビゲイルさま!! 人間です!! 人間が、ホワイトコールに攻め入ってきました!!」


 統率者は、理解しがたいとばかりに顔を顰めた。


「そんな報告は要らん。さっさと殺せ」

「ですが……空を、飛んでいるやつが……」


「第一層、第二層の悪魔は何をしている? 空は俺たちの支配下だ。あれが何であれ、さっさと始末を――」


 チカチカッと、遠く彼方にある人間の手元が、何度か光った。

 その直後に、ホワイトコールの大地は猛烈な炎に支配された。


「な、なんだ……どういうことだ!!?」


 爆撃だった。あの子供・・が指先で魔力を飛ばすだけで、雪の大地には、爆炎と爆風が吹き荒れる。一発ごとに、直径一〇キロほどだろうか。あの子供がピュピュっと指先を向ける度に、悪魔の都市は甚大な被害を受けて、同胞たちは芥子屑も同然に死んでいく。


「あっ、あいつです!! 一層と、二層は、あいつに陥落されました!!」

「バカな!!? この短時間で……だが、構わん! 迎撃しろ! 本気で殺せ!」


 上位悪魔たちが、黒翼をはためかせて空を飛んだ。

 その瞬間のことだった。


「月夜極光」


 宵闇を切り裂く法外なまでの魔力の束が、暗いホワイトコールの地に燦然たる光の柱を形成する。


 極光は都市に、十数キロにも及ぶ大穴を形成した。

 立ち向かった上位の悪魔ごと消滅し、それはこの世の奈落も等しかった。


「なんだ……なんだ、あいつは。……知らん、あんなものは、知らんぞ!!?」


 人の子は、目下で喚く悪魔の王に一瞥をくれた。

 ぴいぴいとうるさい、実に不愉快な羽虫に見えた。


「存在価値のない蒙昧共が、天に座すこの俺を仰ぎ見るか」


 シーグフリード・エルランデル。

 これまで王都で実力をひた隠しにしていた彼こそが、カスケーロ大陸を統べる、唯一無二にして最強の覇王。


 悪魔たちが彼を知らなかったのは、必然でもあり、悲愴な命運でもあった。


「ふふっ……つまりあいつが、大陸の切り札だということか」


「アビゲイル、奴はどうするのだ」


「リザリオンとフィームは、まだ待っていろ。あれだけの範囲攻撃だ、繰り返していれば魔力が尽きる」


「流石はアビゲイル。では、いまはまだ」


「ああ、雑魚から先に向かわせる。――総員、あの子供を殺しにいけ!! 散開して叩き、我ら悪魔の威容を見せつけるのだ!!」


 シグは指先で、円を描いた。破格のレーザー光線だ。

 都市の外周は爆裂し、そこから黒き劫火が立ち込める。

 指先ひとつで、悪魔共の街並みは崩壊し、幾多の悪魔共が散る。


「化け物め……だが、こいつはどうだ! 空の支配者、フェリアーノ! 亜竜と悪魔の混合種だ! この悪魔を解き放ったが最後、いつまでも高みの見物ができると思うなよ!!」


 大檻から放たれたフェリアーノは一五〇体。

 さらに全方位からは、低位から中位の悪魔たちも迫っている。

 全てで幾千、幾万とくだらない、出し惜しみのない総攻撃だ。

 これにはやったと、アビゲイルはほくそ笑む。


「……は?」


 しかしシグの力は、悪魔が想像できる範疇を、遥かに超越していた。


「慮外千万。知能が低いと、戦力差すら推し量れんか」


 シグが右腕を、天に向けた。


 そこから炎属性の魔法陣が、二二五、展開された。


 魔法陣は、重ね掛けできる。

 だが、シグのそれは、もはや重ね掛けという領域を外れている。


 ひとつひとつが超広域攻撃を意味する魔法陣が、あれだけ展開されているのだ。


 アビゲイルが同じことをしようと思っても、錬成でいる魔法陣は一〇が関の山だろう。それが、シグは二二倍だ。呆れを通り越して、悪い夢を見ているんじゃないかと錯覚してしまう。


「貴様らの醜さは、見るに堪えん。せめて散り様で花を咲かせよ」

「――ッ!!」


 シグの炎は、天地万物を焼き尽くした。


 立ち向かってくる悪魔たちも、ホワイトコールの冬も、白く覆われた大地も、空に渦巻いていた闇も、全てが苛烈な炎によって焼き払われる。


 あえてシグは、調整していたのだろう。この炎はあくまでもホワイトコールの冬と闇を吹き飛ばすものであり、地上において壊滅的な被害はそこまで・・・・及ばなかった。


「ああっ……あっ……ああっ!!?」


 ただ、豪雪と雑魚を一蹴することにより、ホワイトコールの景色は一変した。

 熱風が吹き荒れ、茶色い地面が幾千年ぶりに姿を見せた。

 夜なのに空は晴れ、淀んだ雪雲も消し飛んだ。

 全天に満ちる、燦然とした烈日の光。

 信じ難いことに、それは全てシグの魔力だった。


「審判の時だ」


 シグは、とある錠剤を呑み込んだ。

 一時的にダークファンタジーの覇王として顕現する、深淵の一端ノクターン


 すらりと伸びた長身と、長く伸びた純白の頭髪、真理を見通す銀の瞳。

 総身から溢れるエネルギーは、魔力ではなく生命力だ。

 この世の理とは異なる覇王を前にして、アビゲイルは怯える子供のように震え出した。


「なんだ……お前は、何なんだ!!?」


 声を荒げる悪魔の元へと、シグ……いや、ヴィルゴッド・フィルディーンは一歩、また一歩と近づいている。左手には黄金に輝く剣を携え、その冷めた眼光は、罪を下す審判者のようだ。


「先日――五体の悪魔が王都に現れた。二週間前にも一体。貴様らが、こちらの戦力を偵察していることは、分かっていた。本格的に仕掛けてくるのなら、剣舞祭の二日目か、三日目。そうして今日、貴様らは王都を混乱に陥れた」


 アビゲイルは、棒立ちから脱却できない。

 理解の範疇外にある男を前に、何をしていいのかも分からなかった。


「ふふっ……ふふふは! なぁんだ……魔力、全然ねえじゃねえかよ!」


 フィームは目を凝らして、男の脅威を見定めた。

 この白髪の男からは、まったく魔力が感じられないのだ。


 実際、ヴィルゴッドはこの世の存在ではない。

 一時的なチート処理で、シグは前世の自分を持ってきたのだ。


 前世の自分というひとつの世界ごと内包した存在で、そこには当然魔力はないし、魔法や権能も行使できない。


 だが、ダークファンタジー世界の異能を、思う存分、発揮できる。


「こんな、雑魚……なにを怖がる必要があるっていうんだ!?」

「待て、フィーム!!」


 氷属性の超広域魔法、フローズンノヴァ。

 それを行使しようとした途端に、フィームの身体は拘束された。

 虚空から出でた、幾重もの黄金の鎖だった。


「〝命の手綱レ・リアエル〟。その鎖は、生命力を支払うことでしか解放できない」


「はあっ!? なにを言ってやがる!?」

「支払うか、支払わないか。さあ、どうする?」

「チッ……生命力? んなもん、幾らでもくれてやるよ!」


 と吼えた次の刹那には、フィームは事切れていた。

 鎖の解放と引き換えにするのは、自身の命だ。


「ああ、忘れていた。この世界の生命体は、ひとつしか命がないのだな」


 万を超える命を宿すヴィルゴッドには、死とは無縁の話だ。

 前世なら、数百の命を持っている者も少なくなかった。

 しかしこの世界では、命がひとりひとつしかない。

 やがて散る花のように、なんて儚い生なのだろうか。


『クソ……器は、どこだ!! 器があれば、俺はまだ、復活できる!! どこか、どこかに……器は!?』


 驚くべきことに、フィームの肉体から青白い冷気が漏れ出してきた。

 魔力ではない。器を宿主とする、悪魔ならではの法則だ。


「なるほど。それが貴様らの、神髄か」


 悪魔――転々と器を変え、数千年と生き永らえる悪しき種族。

 フィームの霊魂は、辺りを探していくが、ここは茶色い大地しかない。


『器、器は……あ、ぎっ』


 ヴィルゴッドに握りつぶされて、フィームの霊魂は消滅した。


「監視は置いていた。ホワイトコールからの侵入はなかったはずだが……いかにして、あれだけの悪魔を顕現させた?」


 ヴィルゴッドが問い質すと、アビゲイルはがくがくと身体を震わせた。

 もはや悪魔の王ではない、無害な子供も同然だった。


「ぶ、ブレスレットだ! ブレスレットに、俺たちの霊魂を分け与えて、それを人間と繋ぐ触媒とした! 人間の魂を侵食すれば、俺たちは第二の器として、その肉体を使役できる!」


 ヴィルゴッドは、不快な事実に目頭を押さえた。

 自分がエルガードにプレゼントしたあれは、悪魔共の罠だったらしい。

 きっと仲間たちが、どうにかしてエルガードを抑えているだろうが……。

 善かれと思って贈っただけに、嘆かわしい。

 帰還した時にでも、新しいプレゼントを見繕うべきだろうか。


「だが、いずれにせよ、カスケーロ大陸とホワイトコールで、交易はない。どのようにして、あのブレスレットを量産した?」


 ヴィルゴッドが一歩踏み込むと、アビゲイルは恐怖に尻餅をついた。


「に、にににに、人間だ! 俺たち悪魔は、人間たちと契約できる!」

「契約?」


「そうだ! ひときわ強い、憎悪と欲望……他者をぶっ殺しても構わない、自分だけが成り上がりたい! そういった強靭な怨嗟を懐いた時、その魂を起点として、俺たち悪魔と対話できる!」


「悪魔崇拝……のようなものか。最初に、契約した人間は?」


「お前も知っている。それは――」


 ボンッ!! と、ヴィルゴッドは爆炎に呑まれた。


「はっ、ははっ、ははははははは! なんだ、殺せるじゃないか!」


 リザリオンだ。彼が隙を見て、炎魔法による暗殺を仕掛けた。


「はははははっは……はっ……ああ?」


 しかし、依然としてヴィルゴッドは佇んでいた。

 火傷どころか傷ひとつない、堂々たる姿のままで。


「ひとつ、命が消費された・・・・・・・か」

「は……おい、何を言って」


「フィームといったか。あの男の命など、欲しくもなかったからな。一度殺してくれたおかげで、胸が晴れた」


「おい……お前は、何なんだ。いったい、お前は」


 ヴィルゴッドが、リザリオンの頭部を掴み取る。

 それと同時に、リザリオンは絶命した。


 命を奪い取る神の右手――生命の化身ヴィルゴッドに掛かれば、対象の異能の一切に関わらず、右手ひとつで殺し切れる。


『そ、そんなこと……俺の、器ッ――』


 リザリオンの霊魂も握り潰して、悪魔は完全に消滅した。


「エストホルム、エストホルム家だ! ちょうど一年前くらいに、ヴィンセント・エストホルムが、この俺を呼び出したのだ!」


 アビゲイル必死の自白は、ヴィルゴッドに納得と理解を与えた。


 ヴィンセント・エストホルムは、力と欲望に溺れていた。


 彼がどれだけ醜悪な理想を持っているかは、彼も知り得ている。自分が気に入らないと思えば、力をもって叩き伏せにきたのだ。


 しかし……自分が成り上がるためなら、他者を殺めても構わない。


 彼は、そこまでの外道であっただろうか?


「対話をしたのだろう? ヴィンセントは、何を求めていた? お前たちが与えた力で、奴は何を成し遂げたのだ」


「婚約者の一件だ。あの人間は、ヘレーナ・リネーという婚約者がいた」

「知っている、妹のシルヴィアがそう言っていた。俺も目にしたことがある」


「だが、上手くいってなかった。母に、反対されたそうだ。ヘレーナは、お前の財産しか見ていない。決して、愛してはくれないと」


「そうだな。ヴィンセントは一年前、荒れ狂っていたとされている」


「だから、あの人間は力を求めた! 自分を否定する全てを黙らせる、圧倒的な力を! 母を黙らせ、父をも凌駕する、唯一無二の剣士を求めた!」


「婚約を反対されたことから、一気に闇に沈んだわけか。……しかし、母は亡くなっているのではなかったか? たしか、シルヴィアが――」


「ああ、母は殺されたな。いまも、犯人は見つかっていない・・・・・・・・そうだ」


 エストホルム家で起きた悲愴な事件に、ヴィルゴッドは落胆を禁じ得なかった。

 つまりは、そういうことだ。

 シルヴィアが突然、強くなったのも、兄が一年前に力を手にしたのも、母の不審死も、全部が悪魔による賜物だった。


 しかしその代償はあまりにも高く、ヴィンセントは取り返しのつかないところまで堕ちてしまった。


 元々、そういう素質はあったのだろう。


 悪魔になんぞ頼るほど、醜き理念を持つ彼――ヴィンセントは、やはり下らぬ蒙昧に過ぎなかった。


「俺と契約したことで、奴に触媒が与えられた。形は何でもよかったが、装飾品のブレスレットにした。同じ形状の物を、北の都市国家で量産させた」


「だが、それではただのブレスレットのはずだろう」


「折を見て、俺はカスケーロ大陸に舞い降りた。魂の同期――ヴィンセントの肉体を使役したまでだ」


 そして大悪魔であるアビゲイルが、ブレスレットに悪魔たちの魂を込めた。

 後は剣舞祭が開催される時まで待ち、王都でばらまく。

 綿密に計算された侵略計画だったわけだ。


「ブレスレットが内なる欲望を誘発し、それに呑まれてしまうことで、人は悪魔に堕ちる。完全なる、魂の同期――早期に出現した悪魔たちは、欲望に抗えなかったということか」


 全てを把握したヴィルゴッドは、アビゲイルに剣先を向けた。


「ひっ……ひいぃっ! ど、どうか、助けてくれ……どうか、俺には、子供が!!」


 不自然な文脈と、自然過ぎる身体の震え、目尻に溜まった涙。

 アビゲイルの演技は、ヴィルゴッドでなければ見抜けなかったかもしれない。


「もういい。なぜ、そんな道化を演じる?」


 アビゲイルは、すんと真顔に戻った。

 身体の震えも、はなからなかったかのように収まっていた。


「人間は、殺されるときにこうするだろう? 俺が子供を食う時、そいつの母も、そんなことを言っていた」


「そうか。死ね」


 ヴィルゴッドは、アビゲイルの首を刎ねて、霊魂を潰した。


「……」


 そうして覇王は、荒れ果てたホワイトコールの都市を見回した。

 民間の悪魔は、虐殺していない。


 戦わない者。殺意がなかった者。ただ怯えていた者は、計算して魔法の効果範囲外としている。これだけ荒れた大地の中でも、無害な家々や住処はある。


「後で物資を送る。拒絶するか、俺たちの支配下につくか。好きに選べ」


 ヴィルゴッドは生命力の種を撒き、荒れ果てた更地でさえも、緑豊かな大地に変貌させた。これだけ一面を覆うほど大量の果実や穀物があれば、飢えることはないだろう。


「また足を運ぶ。その時までには、一族の考えを固めておけ。拒絶しようと、虐殺はしない。それだけは保障する」


 効果時間が切れ、ヴィルゴッドの姿はシグへと戻る。

 小さな覇王は空を駆けて、王都へと戻っていった。

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