鉄のカーテンが下りた列島
スルメイカ
第1話 「祖国、そして敵国」
そんな事を考えていると
「もしかしてまた亡命したいとか考えてたんですか?」
「ああ、お前の小言を聞かなくて済むからな」
そう皮肉を込めて言ったつもりだったが、当の斉木は全くもって気にしていない様子だった。
「そういえば
「ガサ入れ?どこをだ」
「例の千代田区の支局ですよ。まあ、あそこは2ヶ月前に撤収されて、今はもぬけの殻ですから大丈夫でしょう」
「何が大丈夫だ、このあんぽんたん。ガサ入れされて何も出てこないにしても、俺たちの支局の場所が連中に知られちまったんだ。下手したらここも危ないぞ」
「流石に考えすぎですよ。それに仮にもしここへガサ入れが入るとしても、事前にモグラから情報提供がありますし」
「まだあのモグラはコンタクトを取ってから1ヶ月も経っていないだろう。もしあいつがZ機関や
「だったらわざわざ情報提供しなくてもいいじゃないですか」
「お前はどこまで頭足らずなんだ。もしあいつが俺たちに情報を渡さずにガサ入れが行われた場合、俺たちは奴をどう思う」
「『わざと情報を流さなかった』とかですか?」
「そうだ。そしてもし今も使っている場所をガサ入れしたら、俺たちはどう思う」
「『今は危険だ。繋がっているモグラとも切ろう』とか」
「そうだ。俺たちがモグラ、つまり奴と手を切る可能性がある。だからもぬけの殻の場所へガサ入れし、その事前情報を俺たちに流す」
「そうすれば私たちはあいつを信頼するようになる」
「ああ、そうだ。まあ今すぐ手を切らずとも、警戒はしておいて損はないだろう」
そこまで慎重になるのは必然だった。対外情報局では敵国に捕らえられた諜報員は一切関知されない。むしろ口を割る前に諜報員を殺す事さえある、高島はそう先輩から聞かされていた。
それにしても何故あそこがバレたのか。
高島は外套を手に取り、新聞を読んでいた斉木に顔を向けた。
「じゃあ俺はこの事を課長に報告してくる。くれぐれも女を連れ込んだりするんじゃないぞ」
「そんな事分かってますよ」
高島は不安な面持ちで扉を閉めた。
鉄のカーテンが下りた列島 スルメイカ @surumeika-san
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