惨劇の夜
遠藤みりん
惨劇の夜
太陽も沈み、光の入らない薄暗い部屋。天井から垂れ下がる裸電球が虚しく部屋を照らす。
雨も降っていないのに部屋には湿気が充満している。そして昨日の残骸だろうか?生々しい香りが微かに残っている。
男は手に入れた獲物を部屋に乱雑に置いた。
かつては確かに生きていたであろう獲物は既に屍だ。決して喋る事は無い。
男は丁寧に研いだ刃物を手に獲物を見渡す。
「さぁ……ショーのスタートだ……」
男は丁寧に皮を剥いでいく。
一枚、一枚丁寧に……姿を変えていく獲物を見ていると不思議と涙が出てきてしまう。
次に丁寧に皮を剥いた獲物に刃物を突き立てる。
まだ命を失ったばかりなのだろう……どこか瑞々しい感触だ。
そしてメインの肉片を切断すると赤い血がゆっくりと垂れてくる…… 今回の獲物は上物だ。
丁寧に切断された獲物を眺めて満足した……
男は部屋の中で火をつける。火は狭い部屋を照らし出した。
「地獄の業火に焼かれてもらおうか……」
人が入れる程の大きな釜にバラバラにした獲物を乱雑に入れる。
「さぁ……仕上げだ」
男はあるルートから仕入れた“アレ”を釜に入れる。
“アレ”は赤黒く変化しドロドロになる……
すっかり形を変えてしまった獲物達は声も出さずに静かに釜の中で浮かんでいる……
男が作り出した素晴らしい作品だ……
男は恐る恐る釜を覗き、呟いた……
「美味しいカレーの出来上がりだ……」
惨劇の夜 遠藤みりん @endomirin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます