未知の世界へのダイブ

サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ)

未知の世界へのダイブ

シマダは焦っていた。

「なんてこった!ないっ!7万円入りの財布がないっ!」

その日、シマダは携帯代、クレジットカードの入金のため銀行に行く途中だった。

銀行についてバッグを開けると財布だけがなかった。

家に忘れてきたのかもしれない。資金がなくては入金も出来ないので焦りながらも一旦帰宅した。


リビングルームの机の上に財布は無かった。その机の下や引き出しなど周辺を探したが一向に見つからない。焦りながら今朝のことを思い出そうとしていた。


「えっと…まずお金を準備して財布に入れて、今持ってるバッグに入れたはず…。」


バッグを置いていた場所の付近や車の中など思い当たるところ全てを探したがない。

シマダの焦りは頂点に達していたが、かろうじて理性は働いていた。

「これだけ探してもないってことは落としたか、盗られたかもしれない。それならまず警察へ届けなければ」とシマダは警察に届けを出した。


警察に喪失届を出して発見されるのを待ちながら、家の中の何処かに置き忘れた可能性も考え絶対置いてないと思う場所も含めて家中を探した。

シマダは警察からの連絡を期待して待っていたが財布は見つからず連絡もなかった。


現金がなくなったこともショックだが、財布に入っていたキャッシュカードやクレジットカード。ポイントカード、メンバーカード等々…失くしたものは多かったことに気づいた。失くした当初はそれらの再発行などで時間を費やした。


気が付くと1ヶ月が過ぎ、財布は発見されないままだった。支払い用に置いていた現金がなくってしまったが、予定外のアクシデントがあっても何とかいつもの暮らしが出来ていた。

一段落したこともありこれで心機一転。新しいスタートを切るために財布を新調した。この先の幸運を願って金運を招く色の財布を選んだ。


シマダは財布を新調したことで気持ちも運気も良い方に切り替えられると願った。

「これで次の給料日で赤字も解消して元通りになる!」とウキウキしていた。


翌月の給料日になった。シマダはこれで全て解決すると信じて意気揚々と銀行に行った。

「今日の入金で全て支払いも全部クリアだ!」

シマダは銀行に行ってキャッシュカードで残高照会をした。


「え?569円?入金されてないのか?」

シマダは通帳記入して入出金を確認した。

「財布が無くなった時にカードも盗られたから、キャッシュカードを悪用されたのか?」

色々なことを考えて確認したが盗られた形跡はない。


「っていうことは入金されていない?本社が怠慢して入金操作してないのか?」

シマダは思いつくまま本社に電話したり、同僚に入金があったか確認の電話をした。

本社は間違いなく手続きしていること、同僚らは誰も入金はされてなかったが

「時間が遅れてるだけで、そのうちに入金されるさ。」と呑気な反応だ。


でもシマダはそうはいかない状況だった。

「入金されていない?えっ?今日入金されてなければ支払いも出来ない。

俺は破産だ!ここまで頑張ってきたのに破産?!

嫌だ!それだけは避けたい。どうにかしなければ!」


シマダは帰宅して冷静になって、改めてこの先の対策を考えようと帰路についた。


「新しいスタートを切るはずだったのに…スタート…世界を一新するんだ!」

破産が目の前になったシマダはブツブツと独り言をつぶやきながら電車を待った。


そんなシマダの後ろから笑顔の紳士が声をかけた。

「新しいスタートですか?簡単ですよ。ほら目の前にある線の向こうにまっすぐ行けば、これまで未体験の新しい世界がスタートしますよ。」


破産の言葉で動揺しているシマダには紳士の言葉は救いに聞こえた。

「そうか。まっすぐ行けばいいんだ…。」

シマダは紳士の言葉のまま前方に歩き始めた。


キキーーーーーッ!


不意に電車が止まる急ブレーキの音が駅構内に響いた。


ホームの下を覗きこんで紳士は呟いた。

「どうです?新しい世界は?」


さっきまでシマダだった物体が静かにそこにあった。

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未知の世界へのダイブ サクラ堂本舗いまい あり 猫部(ΦωΦ) @hinaiori

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