失われた記憶、舞い踊る光

…今日はやけに静かだな。まあこの家には私しかいないからだろうけど。この前の自己紹介、ひとつ忘れてたことがあるんだ。私が使う魔法は光属性。身体に”俊敏”のバフをかけたり剣にかけたり。とにかく速いことが取り柄だ。

…こんなに静かだと昔の事を思い出してしまうな。ん、聞きたい?なら聞かせてあげる。


─約1000年前 聖都デュランダル─

「はぁ、はぁ、はぁ、お母さん、お父さん。どこにいるの?なんで突然攻撃を受けたんだ?熱い、痛い、周囲でも戦いが… あれ、みんな見た事あるな。あ、なるほど。戦争じゃなくて反乱だったか。こんなこと考えてる場合じゃない、急いで逃げないと」

私は1000年前滅んだグラディウス家の”皇女”だった”。反乱が起きたんだ。母も父も死んだ。私は生きる場所がなかった。辛かった。だから焼けた宮殿の屋上から飛ぼうとした。それが琴音との出会いだった。


「本当に飛ぶつもりか?」「えっ…?」「お前だよ」「どこから聞こえて来るの…?」「後ろにいるだろ?」「あっ、ほんとだ」いつの間にそこに…「何が起きたかは知らんがそこから飛ぶつもりか?」「…うん」「そうか」「止めないの?」「止めはせんが一つ言っておきたいことがある。」「何?」「僕は『諦めないでくれ』とか『お母さんが悲しむ』とかそんな薄っぺらい事を言うつもりは無い。それを全て失ったからこそそこに立っていることも分かってる。言いたいのはな、お前が死ぬ事で少なくとも悲しむ人がいることを、お前が生きてくれて喜ぶ人がいることを、お前は忘れちゃならない。」「…」「言いたいことはそれだけだ。飛びたかったら飛べばいい。僕は帰るぞ」「待って!」「?」やっぱりここで死ぬのは勿体ない気がする。だからここでやるべきことは…

「あなたの元で過ごさせてください。今ここで決断しなきゃダメだと思ったんです。だから…」「いいよ」「…えっ? いいんですか?」「いいよ、仲間が少なくて寂しかったとこだ。お前、名前は?」「ア…アテン・グラディウスです!」「分かった」「…あなたは?」「黒神琴音だ。よろしく」

それから、帰る途中、“あれ”についても教えてもらった。教えてもらったはずなのに…私の記憶には、“あれ”についての記憶はほぼ無い。もう少しで思い出せそうなんだ。でも今かろうじて思い出しているのは琴音が言ったあの言葉の一部。それだけだ。

「うXXXれXらXXん」

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一千万年神様 @Akkunsan

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