最悪の体育祭~出来ないことを怒るよりも~
kayako
出来たことを、褒めてほしい。
私は体育祭が大嫌い。
理由は運動音痴。それに尽きる。
去年、ボールを使ったダンスをやった時なんか最悪だった。
チームを組んでボールを操りながらダンスをしたのだけど、チームリーダーと私の相性が最悪中の最悪。
ダンスしながら背中ごしにボールを投げ上げ、それを他の人が受けるという動作があったのだけど、私はどうしてもうまく投げられなかった。
練習のたびに飛んだのが、リーダーの叱責。
「全然ダメ! 貴方だけボールの投げ方が変!!
何で皆と同じように出来ないの!?」
背中ごしに投げる為、自分の投げたボールがどう動いたのか分からない。リーダーも他の子も、何が悪いのかろくに説明してくれない。
投げても投げてもボールはおかしな方向へ飛び、そのたびに怒鳴り声。怖くてたまらなかった。
だからいつまでたっても、私の動きは改善されないままで――
当然、体育祭当日は大失敗。
その後リーダーは勿論、チームの子たちはあからさまに私を避けた。
今年もまた、悪夢の体育祭はやってきて。
しかもまたまた、ボールを使ったダンスをやることになってしまった。
当日はいっそ仮病を使ってしまおうか。そこまで思い詰めていたが――
しかし、今年チームリーダーになった子は、違った。
相変わらず、背中ごしにボールを投げられない私。
でも、リーダーは怒鳴ったりしなかった。
最初こそ渋い顔だったものの
「もう少し腕の力、抜いてみたら?」
「膝をちょっと柔らかく曲げてみない?」
と、何度もアドバイスを重ねてくれた。
それでもなかなかうまくいかず、数日が経過。
やっぱり私は駄目なんだ――
しかしそう思った時、リーダーは。
「すごい! 前より大分良くなったじゃん!」
間違いなく、心からの言葉だった。
彼女は、認めてくれたのだ。例え成功しなくても、私が「前進した」ことを。
嬉しかった。
それから、猛然と練習した。
結果――うまいとは言えないけど、ダンスは成功した。
少なくとも、去年ほどの大失敗はしなかった。
他から見れば出来て当然。出来なければ叱責されて当然のこと。
でも、私には出来ないこと。
それでもリーダーは、私のほんの少しの前進を、認めてくれた。
親に、先生に、先輩に怒られるたび、私は思う。
出来ないことを怒るより、出来たことを褒めるのは、いけないのだろうか。
20点だった数学が40点に上がったのを褒めるのは、いけないのだろうかと。
あの時のリーダーみたいな人が、もっと増えてくれればいいのにな。
Fin
最悪の体育祭~出来ないことを怒るよりも~ kayako @kayako001
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