嗚呼バラ色の第二の人生! 人生???

ハンターシーカーアルゴリズム

第1話 第二の人生。人生???

 僕は五歳の時交通事故に合い片足が義足になった。まったくもって運が良い。


 十歳の時には乱暴な運転のミニバンに轢かれ両手が義手になった。


 友達みんなが羨ましがったのを覚えている。

 生身の手よりも細かい作業も出来るし強いからね。

 腕相撲では負け無しさ。


 事故の場合は義体への代替かクローン培養での再生医療を選べるけど、自己損壊の場合は法でクローン培養固定。 


 自己損壊は人格が未熟だからとか理屈はあるらしい。


 義足のお陰で中学へ入ってマラソンでも短距離でも僕は結構な上位にいることが出きたし、美術の時間では綺麗な南国の海の絵を女の子の爪にネイルしてあげたら、クラス中の女の子から、ネイルしてくれと頼まれた。


 僕は陰キャだったので照れくさかったが頑張ってネイルしてあげたら喜ばれた。

 女の子の手を沢山触れたのは御褒美。


 もはや義手や義足は自分の体の一部であり、むしろ生身の体より使い易くしっくり来る。


 僕の爺さんも、そんな事を言っていた。


 爺さんは、大学の教授だったが、歳を取り衰えた部分を義体に交換するにつれ、義体というか機械と脳の順応度も上がり、建設機械のオペレーターや、配送ドローンの運転もするようになった。


 こいつらを体のように動かせるんじゃよと、幼い僕の前で、曲芸のような動きをしてくれた記憶も懐かしい。


 パワーショベルでのバスケットボールのドリブルとか、爺ちゃんの仲間同士でのパワーショベルバスケとか凄かったなぁ。


 爺さんが『施設』に入る前は最後のご奉公とばかりに、自衛軍のドローン戦車やロボットも動かしてた。


 爺さんが『施設』に入る頃に僕は大学に進学したが、不治の病になった。

 全身への転移に流石の僕も動揺したよ。


 内蔵含め、体のかなりの部分を義体に置換した。


 さすがに全身の義体化は脳の適応がついてけないと、医者にはクローン臓器を薦められたけど、僕は子供の頃から義体に慣れてる。

 義体への順応度テストを受けて基準値クリア、七十歳並みの適応度だと医者に驚かれ、晴れて全身を義体化できた。


 ラッキーだったね。

 義体を動かせるという事はドローンなどをデータリンクで簡単に動かせるという事でもあるので、卒業後の就職は選び放題だった。


 無論PCとかもその流れで生身の同期の人たちより遥かに使える。

 AIサーバーと契約して投資、儲けた金で自分の体を今の奴より高性能にし、更に使える社員となった。


 会社での会議はネット会議で良いし、最近は出先への出向も多目的ドローンで良いから便利だ。むしろ何でも素早くこなすドローン企業戦士の方が喜ばれたりする。

 時代だねぇ。


 最近は自宅勤務で殆ど椅子からも動いてない感じ。食事も電気で良いし。

 というのは冗談。脳や生身部分への栄養アンプルが食事。カートリッジの交換が地味に面倒です。


 そ・し・て! パンパカパーン!


 出世し、給与もかなり上がったので脳の機能拡張をする義脳も購入することが出来るようになった!


 義脳は義体とは違い、保険が効かないから高額な金を出して購入する必要がある。無論メンテナンスサービスも結構な額である。仕事の出来るエリートリーマンぐらいにしか買えないのだ!


 義脳による機能拡張は適応できない人も多い。

 けど僕は子供の頃からの義体化して、機械とのリンクに慣れているという恩恵受けてたから余裕だった。


 僕の生身の脳はエリートというには少し問題あるけど、脳の機能拡張で国立大出身の生身のエリート達とも頭脳面で遜色無くなった! ありがたい。


 悩みの種だった栄養アンプルの味気ない食事も義脳装着で、仮想現実メガ・バースのレストランにアクセスし、最高の食事体験が出来るようになった。


 仕事もデータに多面的にアクセス出来るので、企画、立案や資格勉強も捗っている。


 同期は生身だけの時代が長いから義脳拡張への適応に苦労しているのを見ると早くから義体化できた僕はほんとツイているんだなぁと思う。


 まぁ実家が裕福だったから義体化できたと言うのも大きいけど。


 数年が過ぎ、僕は義脳拡張を繰り返し、自宅では拡張義脳に囲まれ殆ど動けなくなったが、全く問題はない。


 仮想現実インフラのメガ・バースもあるし、仕事で様々なドローンも動かすから不満も起きないんだよね。


 酷使された脳もした。義脳と脳の適応度も、最年少最高適応度者としてニュースにも取り上げられたりしたほどだ。


 そんな僕に一通のメールが来た。来た。キターーーー!


 義脳化した人が行き着く場所。選ばれたエリートの楽園。

 メガ・バース高位会員への招聘。『施設』への招聘だ!


 僕は大喜びで自分を取り巻く義脳や拡張機器とともに『施設』へ。


 そしてそこで最後の生身の脳を義脳へと置換した。


 メガ・バースへの完全アクセス権を得たのだ!


 メガ・バースのCEOや数々の経済界の重鎮達が僕を拍手で迎えてくれた。

『施設』へ先に旅立った爺さんも笑顔で立っている。


 重鎮達が僕のような新参を迎えるイベントに出席する訳ないと思うかい?

 高度に能力拡張した彼らは参加に演算能力の一京分の一も使っていない。


 人間の意識を機械に移す場合、それは単にコピーであり連続する『意識』『個人』では無いとの論があった。

 ならば脳を緩やかに置換すれば、それは連続する『個』であり『意識』である。


 メガ・バースで僕は飛び、熱い太陽のプロミネンスの炎を感じ、静謐な巨大な神殿の神聖さを感じ、遥かプロキシマ・ケンタウリの惑星を再現した異星の大地を歩く。

 そして何百人もの経済界の重鎮や、その他、完全に機械へ意識を移した人々と会話を楽しんだ。もちろん爺さんと昔話もしたさ。教授だった爺さんの高度な話も今なら雑談程度さ。


 もはや僕に肉体の壁はない。『仮想』現実の壁もない。

 これらは僕にとって現実なのだ!


 僕の新しい『人生』の始まりである。

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