偏食家 神結あきらの劣情
人を呪わば穴二つ。とは良く耳にする言葉ですが、呪いというモノは必ずしも意として行うものではありません。時には知らず知らずの内に呪いあっているということがしばしばございます。
神結あきらもまた、この呪いの螺旋に囚われた人間でした。
鮟鱇という生き物はたいそう大食いな生物で、あばら骨が無く、胃が膨れるだけ食べることが出来ます。そんな大食い鮟鱇ですから、その胃袋には鯛やカワハギ、時には海鳥も鮟鱇の胃に入っている事がございます。
神結という男は、この鮟鱇の胃袋から取り出した魚介類を食べるのを至福の喜びとしておりました。
鮟鱇の捌き方は、まず吊るして口から水を飲ませます。次に溝内に包丁を当てて、前後させながらまっすぐ切り下ろします。すると、パンパンに膨れた胃袋が自身の重みに耐えかねて下の台に落ちました。この胃袋とかぶさって出てきた肝臓を引きずり出すと小腸が伸びてくるので、それを縛ります。
がらんどうになった鮟鱇の胴体を視界の端に追いやり、体操着を入れた袋のような胃袋に水を掛けながら包丁を入れました。
胃袋から出てきたのは、お粥みたいな白米と胃酸でベトベトしている肉片。神結はそれを手に取り口に含んだ。
ごくん、と音がなったかのように喉仏が動く。そして、神結は黒いスマホで腹の割かれた鮟鱇を写真でとり終えると、スマホをヘアゴムで巻いてポケットにしまった。
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