第2話

 ニューヨークの空に現れた船団のほとんどは、グレイの星にある技術のホログラムだ。彼の星の文明ならばすぐに見破れるくらいのものだが、地球にはまだその技術はない。

 この後の計画では、上空をゆっくりと飛び回ってから象徴である自由の女神を破壊する手はずになっている。現在、女神像付近は点検補修のために立ち入り禁止になっているはずだ。


 だが人類は本当に『愚か』だった。世界が一つになるはずのこの記念すべき第一歩は失敗に終わる。


 タイムズスクエアの巨大スクリーンが一斉に乗っ取られて映像が切り替わる。

 画面にはグレイに大統領、そしてフィクサーの遣いが現れる。あの日の密談が盗撮されていたのだ。普通ならこれほどの重要な話し合いの盗撮など不可能だ。だがその不可能はグレイの星にある技術の一部を解析した軍事技術班によって可能にさせた。

 そして密談の後にはグレイとフレンドチームが過ごした和やかな日々が続く。

 スクリーンを見上げた人々は混乱した。

 画面はジム達フレンドチームの面々に切り替わる。


「おい大統領、聞いているか? 俺達は軍法違反を行った。これからどんな懲罰でも受ける覚悟だ。だがこんなイカした奴を悪者に仕立て上げた上に成り立つ偽物の平和なんてクソ喰らえだ!」


 グレイはジムの言葉に涙を流した。ここにもヒーローがいた。感情が高ぶり、ジム達と過ごした楽しい日々や美しい感情がテレパシーとしてみんなに流れ出てしまった。

 人々は真実が何かを理解した。そして人類統一計画は完全に失敗に終わったのだ。



 あれから更に1年が経っていた。

 ジム達離反者は厳しく罰せられることはなかった。正しいことを行ったヒーローを罰することは世間が許さなかったのだ。アメリカとはそういう国だとジムは誇った。

 グレイはというと、意外とみんなに認められ、護衛付きではあるが街を自由に歩けるようになっていた。今、特にこの国では『自分と違うものを排除する』行為はダサい行いなのだそうだ。


 グレイは思った。あの地球侵略の日の作戦を切っ掛けにみんなが少しづつ変わっていければ、あれは失敗ではなく成功になるのではないかと。

 そう来る日を願ってグレイはプロバスケットの試合会場へのゲートをくぐった。

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地球侵略の日 甘宮 橙 @orange246

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