地球侵略の日
甘宮 橙
第1話
それはニューヨーク タイムススクエアの上空から始まった。
何の前触れもなく空に巨大な穴が開くと、しろがねの宇宙船団が現れた。そして、恐怖に恐れおののく人々の頭の中にテレパシーで宣戦布告が発せられた。
「オロカナニンゲンドモヨ ワレワレハウチュウジンダ イマカラコノホシハワレワレガシハイスル」
今日この日が新たな地球の第一歩となる。グレイは決意を胸に、宇宙船の操縦桿を握りしめた。
*
それは1年以上前の話になる。グレイが地球にたどり着いたのは本当に偶然だった。
彼の星は同族間の戦争により崩壊した。宇宙へと逃げ出すものも多数いたが、もちろん行くあてなどない。それぞれが運を天に任せワープホールを作り、時空を滑っていった。
グレイを載せた小型の円盤は時空を超え、地球にたどり着き、アリゾナの砂漠に墜落した。
グレイが目を覚ますと、自分の体は地球人によって手当をされていた。テレパシーで地球人の脳内を探ってみる。どうやらここはアメリカ軍による極秘基地であり、彼等はグレイの正体を探ることに躍起になっているようだった。グレイはテレパシーで彼等との交信を試みた。
それから間もなく、彼のもとには「フレンドチーム」という軍人の部隊が結成され、意思疎通を図っていくことになった。こうしてグレイは地球の文化や歴史を勉強していくことになる。
特に親しくなったチームリーダーのジムは明るい男で、彼から聞く映画やスポーツの話はグレイを夢中にさせた。特にヒーローの話が大好きで彼と一緒にビデオを楽しんでは盛り上がった。
危険があるということで外には出れなかったが、戦争しか知らないグレイはこの地球の時間が本当に楽しかった。
ある時ナイン大統領が一人の男を連れて現れた。その男はフィクサーと呼ばれる人物の使いであり、フィクサーとは世界を動かすほどの影響力を持った男との事だった。彼等が話した内容はこうだった。
現在、地球では様々な国、民族、宗教などで戦争が行われている。その人類を一つにまとめるためにグレイに人類共通の敵になってもらえないかという話だった。共通の憎むべき対象を与えることにより世界に新しい秩序をもたらすのだ。
もっとも提案と言っても断る術はない提案なのだが。
ジム達フレンドチームはこの提案に猛反対した。「こんないいやつを悪者にするのか」と。
グレイはそれが嬉しかった。だから影のヒーローとなり、悪に徹することを快く引き受けた。
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