第43話

「そこに鏡があるでしょう?それで一回自分を【霊視】してみるといいわ」



 幼女が指さした先に、大体の大人ならすっぽり投影できてしまいそうなほど大きな鏡があった。


 え?こんなの来た時あったっけ?



「なんで自分を霊視しなきゃいけな……」


「自分で自分のステータスを確認しても、視れないでしょ?前世」



 ……なんでも知ってやがるな、この幼女。


 ダンジョンマスター恐るべしだわ。


 盗撮されてたみたいで少しもやもやした気持ちもあったが、俺は言われた通り鏡に向かって【霊視】を発動し、自分のステータスを客観的に視てみることにした。



―――――――――――

名前 阿尻 ダイシ

職業 僧侶そうりょ

レベル 20


HP 999/999

MP 999/999


腕力 999

体力 999

敏捷 999

精神 999

葬力 999[4817]


スキル 

 【葬拳 LV1】【応報 LV2】【成仏 LV2】【回帰 LV2】【火葬 LV2】【霊視 LV4】


固有スキル

 【地獄門】


前世

 阿尻ダイシ

―――――――――――


 

 展開的になんとなく予想はできたけど、いざ視てみると違和感ハンバない。


 前世、俺。


 どうとでもステとかいじれそうな相手に言われても信用できない部分はあるけど、こうして目の当たりにするとやはり実感せざるを得ない。


 どうやら、俺は本当に一回死んでいたらしい。


 でも、俺は確かにここにいる。


 記憶も鮮明だ。


 俺が死んだとされる5年前より以前の記憶もしっかりある。



「理解した?阿尻ダイシ」



 鏡の隣に立ち、幼くも妖艶な笑みを浮かべながら俺に語り掛けてくる幼女。


 いや、正直理解はまったくできん。



「貴女が、俺を生き返らせくれたんですか?」



 当然この質問になってしまう。



「そうね。半分正解ってところかしら」



 少し困り顔の幼女。


 半分ってなんだよ。



「魂は私ね。身体は私じゃないわ」



 やっぱり順を追って聞かなきゃ何言ってるかさっぱりだな。


 俺から質問するのはもうやめよう。



「ふふ。その顔はようやく黙って聞いてやるかって顔になったわね。従順なのはいいことよ。ドMの阿尻くん」



 地獄門確定な!



「アナタが一度死んでるってことを前提に、これから大事なことを順番に要点だけ話していくわ。覚えられそうになかったらメモ取ってね。質問は最後に受け付けるから。それじゃあ、まずは私が誰なのかってところからなんだけど……」



 幼女が全ての真実を語り始めた。








「……ということなんだけど、話は大体理解できたかしら?」



 15分ほど話し続け、一定の区切りがついた幼女が俺に質問してくる。


 何度も言うが、理解はまったくできん。


 理解はできないが、なんとなくそういうものなんだと思わされたことはいくつもあった。


 記憶はおおむね出来ている。


 自分で状況を整理する意味でも、もう一度幼女の話を思い出しながら、頭の中で少しまとめてみようと思う。



幼女の正体とダンジョンの成り立ち


・幼女の正体は堕女神。もともと人間を管理する立場だった神の一人だが、何かとんでもないことをやらかして主神の怒りを買い、人間界へ堕とされた。なにをやったのかは教えてくれなかった。


・堕女神は人間界に自分の居場所を確保するためダンジョンを作った。西東京第4初級ダンジョンがそれ。ダンジョン発祥の地らしい。


・一人で暇だった堕女神はダンジョン内で魔物を創造して遊んでいたが、それも飽きて神が創った人間と自分が創った魔物を戦わせたいと思うようになり、封印していたダンジョンの入り口を解放する。


・最初は遊びのつもりだったが徐々にヒートアップしていった堕女神は、ダンジョンを世界中の至る所に生成。そこから人間の間で探索者と呼ばれる者たちが徐々に増え始め、ギルドが立ち上げられ、ダンジョン探索が隆盛を極めて現在に至っているとのこと。



魔物のシステムと探索者


・魔物に人間のような生殖システムはない。生体はほぼすべて堕女神が創った自動生成システムでランダムに作られ、魂は循環している。


・ダンジョンでは死ぬごとに魂が[選定域]へ送られる。


・[選定域]には7つの階層があり、より多くの試練を乗り越えることで、次に生まれ変わる生体の強度や種別が決まる。ちなみに羅刹天は5層の選定者だった。選定者は堕女神が直接管理していてすぐに再生可能らしい。なので羅刹天もすぐに生き返る。


・7つある階層の5つ目以降の試練を突破した魂には個別に固有の生体が創造される。難易度の高いダンジョンのボス級はおおむねそれ。ちなみに4層までだとダンジョン内のユニークキャラになるらしい。


・ダンジョン内で探索者が死ぬと、この堕女神のシステムに取り込まれる。



世界三大窟


・神域級、絶海級のボスは魂の選定域第6層を突破した強者。過去2名のみ


・冥葬級の冥王はこれまでで唯一選定域第7層を超越した恐るべき存在。


・いずれも元探索者の魂らしい。


・この3つのダンジョンはいずれも独立している。堕女神の管理を離れ、それぞれ個別のシステムで動いているらしい。人間界的に言えば、子会社が親会社を騙してうまいこと独立していったような感じと言っていたが、よーわからん。



固有職


・固有職とは人間が作ったステータス上の表記だが、堕女神的にはアンノウンらしい。つまり正体不明。ダンジョンや人間界とはまた違う理や因果で存在している可能性があるとのこと。常にマークしているらしい。



阿尻ダイシ


・俺が5年前に死んでいた場所は、ダンジョン側の領域と人間界側の領域のちょうど中間地点だったらしく、魂は[選定域]に飛ばされたが、肉体は人間のままというとてもイレギュラーな存在になったとのこと。


・肉体が復活したのは、俺が元々そこで死ぬ運命ではなかったからとか、六道輪廻がうんたらとかなんとか言っていたが、このあたりのことはさっぱり意味不明。


・ちなみに全く覚えていないが、俺の魂は[選定域]の隠しステージ第8層まで余裕で突破してたらしく、魂的にはおそろしく稀有な存在とのこと。


・この西東京第4初級ダンジョンは、俺が入った瞬間から俺が現世で力を発揮できるようにするための修行の場だった。魂は立派でも現世で力を発揮するには相応の試練が必要だったとのこと。


・俺を修行させたのは冥葬級を取り戻すため。冥王はダンジョンマスターの座を脅かす危険な存在なので、[選定域]第8層を越えてきた俺をその刺客に仕立て上げるため、このような措置をとったとのこと。


・本当は5年前すぐに取り掛かりたかったそうだが、人間界側の因果に肉体が引っ張られてできなかったとか言っていたが、そのへんも全然意味わからんかった。


・俺が探索者になったのは偶然。そのまま普通にサラリーマンで終わっていた可能性もあったらしい。




「少し頭の整理はついたかしら?」



 ダメ神幼女様は俺が脳内整理をしていることを察して待っていてくれたらしいが、正直大雑把なところしか頭の中はまとまっていない。


 情報量が多すぎて、もう考えるのもめんどくさくなってきたので、あとの細かいところは質問しながら整理していこうと思う。


 ああ。


 こんな時、視聴者さんたちが一緒に話を聞いてくれていたら、本当に心強かったのになぁ……。


 今どうしてるのかな、みんな……。




 :次……回……つ……なが……る?

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