第36話

《葬力+9999》


《【成仏】Lv+1 【応報】Lv+1》



―――――――――――

名前 阿尻 ダイシ

職業 僧侶そうりょ

レベル 20(+10)


HP 350/350

MP 200/200


腕力 999

体力 400

敏捷 180

精神 131

葬力 999(+9999)[9999]


スキル 

 【葬拳 LV1】【応報 LV2】【成仏 LV2】【回帰 LV2】【火葬 LV2】【霊視 LV4】


固有スキル

 【地獄門】

―――――――――――



 レベルが10も上がっていた。


 システム側がもうめんどくさくなったのか、細かいHPやMP、葬力以外のステータスはもう上がらなくなっていた。


 新たなスキルの習得はなかったが、スキレベは【成仏】と【応報】が1ずつ上がった。


 そして葬力は9ばっかりが続いていて見ててちょっと苦しくなった。


 いや、心が苦しくなった理由はそこじゃないか。



「ふぇ……ふぇぇぇぇぇん」



 サツキちゃんが、泣いたからだ。



「わたしが倒したのにぃぃ!なんでダイシさんばっかりぃぃ……うわぁぁぁん」



 すでに閉ざされた出口の封印は解かれているようで、奥の通路へ進む準備はできている。


 いつものペースでさっさと進みたかったが、そうもいかないようだ。



 :泣いちゃったよ、おい

 :さすがに少し可哀そう

 :まぁ汚い手を使ったとはいえ、今のはサツキの手柄だしな

 :因果応報だよ

 :ざまぁ

 :サツキたん泣かしやがったな!

 :おっさん許すまじ

 :タダで済む思うなよー

 :俺の地獄門をくらえ!ぶりー

 :サツキ推しが暴れてるぞ

 :落ち着けw

 :葬送してやる!



 荒れるコメント欄。


 いや、俺も別に手柄を奪いたかったワケじゃないんだけど。

 

 ていうか俺、倒してないし。


 なんでそんな判定になっているのか、正直戸惑っている。


 確かに掴んだ瞬間、逃がさないためにちょっとギュって力入れちゃったけど……。


 それとも、本来あるべきルールが捻じ曲げられていると捉えるべきなのか……。



「ご、ごめんね。サツキちゃん。はい、ハンカチ」


「ありがとうございます……ぐすん。別にダイシさんが悪いワケじゃ、ないんですよ……多分……」



 あふれる涙を俺が貸したハンカチで拭いながら、サツキちゃんは震える涙声でそう言った。


 ……あ、いや。鼻かまないで。



「……いいですよ、ダイシさん。私に構わず、ステ振りしてください」



 そうだった。


 サツキちゃんの泣き顔ですっかり忘れそうになっていた。


 ちょっと落ち着いたようだから、少し悪い気はするけど、お言葉に甘えてさせてもらいますね。



―――――――――――

余剰葬ポイント 9999


HP   350(0)  -+

最大HP 350(0)  -+

MP   200(0)  -+

最大MP 200(0)  -+

腕力   999(0)  -+

体力   400(0)  -+

敏捷   180(0)  -+

精神   131(0)  -+

―――――――――――



 さて、どれを上げようか……


 ん?ちょっと待て。


 これって……あれ?


 すぐ計算できないけど……まぁやってみるか。



―――――――――――

余剰葬ポイント 4817


HP   999(649) -+

最大HP 999(649) -+

MP   999(799) -+

最大MP 999(799) -+

腕力   999(0)   -+

体力   999(599) -+

敏捷   999(819) -+

精神   999(868) -+

―――――――――――


 やっぱり。


 余剰葬ポイントが余った。



 :どうなった?ステ

 :ゴールデンエンペラースライム倒したんだし、かなり上がったっしょ

 :見当もつかんな

 :全カンストしてても不思議じゃない

 :スキルも4つくらい覚えたんじゃない

 :【霊視】はスキレベ5になった?

 :【葬拳】とかスキレベ上がってたら地球割れそうだな

 :【応報】ってレベル1だっけ?

 :【成仏】はアンデット以外でも効果発揮するんじゃね?



 視聴者さんたちの期待度だけが上がりつつある様子だったので、事実だけを坦々と説明した。



 :レベル10も上がったのか!

 :20レべで全ステカンストは草

 :余剰なのにさらに余るとか……

 :余った葬ポイントでスキレベ上がらんか?

 :上限突破ないの?

 :もうSSS級すら超えてんじゃんw

 :無敵のダイシ

 :レベル上がる意味がほぼなくなっちゃったね



「……」


「いやぁ。これ、どうなってんだろうね」



 すでに泣き止んでいたサツキちゃんが、次は無言で俺を見つめてくる。


 ただその目は虚ろだった。



「……」



 少し場の空気の重さを感じた俺は、和ませるためおどけて見せたのだが、サツキちゃんは相変わらず無言を貫いていた。


 ……ねぇ、なんかしゃべろうよ。


 怖いよ。


 あ、そういえば余剰葬ポイントの決定ボタンまだ押してなかったな。


 結構余っちゃったからすごくもったいないけど気もするけど。


 とりあえずこれ以上どうしようもなさそうだから、押しとくか。


 決定、ポチッ。


 ん?



『ステータスの限界点を確認しました。最終試練へ移行します』



 えっ?最終試練って……



 ゴゴゴゴゴゴ……



「えっ?地震!?」



 地鳴りとともに突然地面が大きく揺れだし、サツキちゃんが叫ぶ。


 石畳の床に亀裂が生じ、足元がグワングワン唸りを上げている!


 これは!



「ダイシさん!」


「ヤバい!早く出口へ……うわっ!」



 ダメだ!間に合わない!



「うわあああああ!」


「ダイシさん!私の手を握ってください!」


「えっ?」


「いいから早く!」



 突如崩れ落ちる足元。



 まるで地の底から引きずり降ろされているような感覚を覚えながらも、俺はなんとかサツキちゃんの手を握り、共にいきなり出現した巨大な落とし穴の中へと落ちていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る