第34話
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名前 ゴルエちゃん
種族 ゴールデンエンペラースライム
HP 1/ 1
MP 1/ 1
腕力 10
体力 999
敏捷 999
精神 999
魔力 10
耐性
[クリティカル以外全て無効]
スキル
なし
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敵がすぐ襲って来る様子もなかったので、とりあえず【霊視】した。
そういや最初にスライムと戦った時以来、魔物をこうやってマジマジと霊視したのは久しぶりだな。
ミミックのときは、真贋判定だったしね。
霊視のレベルが上がっているからなのだろう。見れる情報量が格段に増していた。
名前や耐性、スキルまで視える。
いや、名前。
ゴルエちゃんって親近感湧きそうで知らなくていい情報だったな。
能力値的にはものすごい極端な事になっている。
極振りしすぎだろ。
耐性がクリティカル以外無効っていうのもまた……。
これ、スキルもなにもかも効かないって理解でいいのかな?
「霊視で敵のステータスは視れましたか?要はクリティカルを一撃いれる以外に倒せる方法がないってことです。それも当てられればの話ですけど」
「当たらないってことね。アレ、倒せた探索者って今までいるの?」
「勇者PTが倒したらしいですよ。どうやったかまでは知りませんけど……」
また勇者PTか。
世界で5人しかいないと言われている固有職持ちの男、勇者。
ん?男でいいんだよね?
ここに来るまでに何回もその伝説を見たり聞いたりしてきたものだから、さすがに少し気になりだしていた。
:倒せた瞬間を見たヤツはいない
:配信してないからな
:噂しか聞いた事ないし真偽は不明
:神域級突破しちゃうくらいだから全然あり得るだろ
:でも黒い噂もあるよね
:運営側なんじゃないかって
:表向きは英雄だけど、ダンジョン好きの間では嫌われている
:性格激悪らしい
:サツキやウサギの比じゃない
:有名になりそうな探索者を狩ってるって話もある
:おっさんもここ出たら気を付けたほうがいい
サツキちゃんの勇者PTという発言から、その話題に切り替わっている様子の視聴者さん達。
ところどころコメントを把握した感じ、ロクな奴じゃなさそうだな。
噂ばかりだから実際会ったら違うのかもしれないけど。
いや、会わなくていいな。
面倒ごとの匂いしかしない。
「アレの経験値はすごいらしいです。私も最近レベル上がらなくなってきましたけど、アイツを倒せばきっと……」
「一応確認だけど、やっぱ倒した人にしか経験値って入らないんだよね?」
「ここまで私はレベルがひとつも上がってないです。そういう事です」
「んじゃ、早い者勝ちってことで」
俺も木の杖を構えてみる。
「ダイシさんはもう強いからいいじゃないですか!サポートしてくださいよ!」
「いやいや。そんなレアな奴なら俺も戦ってみたいし」
「乙女が頑張ろうとしてるんですから、それを後ろから優しく支えるのが紳士ってものじゃないんですか!?」
サツキちゃんは乙女ではない。
そして俺も紳士ではない。
「S級なんでしょ?勝ち取って見せてよ」
「……煽りますね。わかりました。ただ、いくらダイシさんがSS級並に強くなったとはいえ、さすがにここは私が有利」
そう言って、剣を構えたままのサツキちゃんは1つのスキルを発動した。
「強化スキル発動!クリティカルアップ!」
さらに
「直撃スキル発動!」
もうひとつ
「加速スキル発動!」
……ちょっとなにそれ。
バフてんこ盛りじゃないですか。
サツキちゃんって探索者として必要なスキル、全部使えるんじゃないの?
:サツキが本気を出したww
:S級のガチ
:たまにはいいところ見せろよサツキ
:そっか!バフのスキルならいけるか!
:サツキたん、ファイト!!
:おっさんに負けるな!!
:まぐれおじさんに一泡ふかせてやれ!
:サツキちゃんの強くなるとこみたい!
:サツキ厨が湧いてきたw
:おっさんがやれよ
:俺たちのダイシはS級なんかに負けない
:サツキ厨は帰ってよし!
:イケメン無罪
:またかっこいいとこ見せてよ~
最近あまり見なかったサツキ推しの方達のコメントが息を吹き返す。
そして幾分、コメント欄が俺推しとサツキ推しで争いだしている気がする。
そういえば、まだサツキちゃんの視聴者は俺が吸収したままだった。
もうこの際みんな俺のところに移って来いよ!
「お先です!」
「あっ!」
サツキちゃんが先制攻撃を繰り出す!
は、はえぇ!!
加速スキルの影響なのか、サツキちゃんは掛け声と同時にゴルエちゃんとの間合いを一瞬で詰めていた!
「もらった!!」
突撃の勢いそのままに、袈裟斬りを繰り出すサツキちゃん。
敵はまだ動く様子がない!
やばっ!これは一瞬で勝負が決して……
「……はぁ?」
俺は目を疑い、思わず間の抜けた疑問符付の言葉を発してしまった。
いやまぁ、敏捷999だしすっごい速いってのはわかってたけど……。
あれはもはや……
:何回見てもこれは瞬間移動
:動きまったく見えへんかった
:えっ?いつの間にあんな端っこに!
:サツキのバフ無意味
:あれどうやって倒すの?一生攻撃当たらないだろ
:腕力とか魔力ないからやられることはないと思うけど
:ずっと倒せなかったらどうなるの?
:一生ここにいることになるな
:葬拳あるから扉破壊すれば出れるでしょ
:果たしてどうなることやら
「出現直後がチャンスかとも思ったけど……。そんな甘くないか」
剣を肩に乗せそうつぶやくサツキちゃん。
先制攻撃で一気に片を付けようとしたみたいだけど、まったくかすりもしなかったようだ。
さて、俺はどう攻撃しようか。
手持ちのスキルで……っていや、スキル効かないんだった。
【応報】ならちょっとチャンスあるかな。概念系っぽい技だし。
いや、あのスピードでしかもスキル無しだからちょっと無理か。
あとは……
前の階で身に付けたアレか……。
……
「ダイシさん!【地獄門】だけは絶対使わないでくださいね!こんな密閉空間で使用したら……」
「……とんでもないコトになりそうだもんね」
冥王固有スキル【地獄門】
どんなスキルかは未知数だけど、このスキルだけは絶対に使ってはいけないという点において、俺とサツキちゃんの意見は完璧に一致していた。
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