第14話
《HP+10 MP+15》
《腕力+3 体力+2 敏捷+2 精神+4 葬力+666》
《【回帰】Lv+1》
「……あれ、もう終わり?」
空中の画面を操作し上昇したステータスの内訳を確認していたのだが、いつものアレが出ない。
《ダイシはあたらしいスキルをおぼえた》がない。
前回までは毎回新スキルを獲得できていただけに、先がなかったことに少しがっかりした。
まぁ今までのスキルを覚えるペースが異常すぎただけだろう。
毎度毎度そんな都合よくいかないよね。
ただそれよりも……
もはやお約束感さえあるあのステータスについては、今回も桁違いのパフォーマンスを見せていた。
ともあれ、全体がどうなったか確認してみようと思う。
―――――――――――
名前 阿尻 ダイシ
職業
レベル 8(+1)
HP 33/63(+10)
MP 0/80(+15)
腕力 11(+3)
体力 8(+2)
敏捷 6(+2)
精神 16(+4)
葬力 999(+423)[243]
スキル
【応報 LV1】【成仏 LV1】【回帰 LV2】【火葬 LV2】【霊視 LV3】
―――――――――――
あれだけミミックを倒したのに、レベルは1しか上がってないのか。
でも葬力は……なんかカンストしてるっぽいな。相変わらずワケわからん。
そしてMPはついに0になってしまった。
「ダイシさん!」
静寂が戻ったトレジャーハウス内にサツキちゃんが俺を呼ぶ声が響く。
彼女は小走りで俺の前まで駆けてきた。
「あ、サツキちゃん。大丈夫だった?」
「ある意味、大丈夫じゃないですけどね」
そう言い放つサツキちゃんの表情は硬かった。
パッと見服装の乱れや露出した肌に血の跡なんかは見受けられない。
どこか見えない部分で怪我しちゃったのかな?捻挫かな?
:精神的にってことだろ
:S級のメンツまる潰れだもんな
:おっさん強すぎ
:もうサツキより強いんじゃね?
:SS級って言われても信じるわ
確かに、視聴者さんの言う通りだ。
こんな初心者のおっさんがワケわかんない力で常識壊しまくってたら、これまで頑張ってきたS級の探索者に立場がないってのはよくわかる。
俺も社畜やってた時、新人にアッサリ営業成績抜かれた時はとてもいたたまれない気持ちになった。
そういうのって、あると思う。
ただ、俺も命かかってるんでね。
そんなことを言われても困る部分はある。
「いや、ダイシさんがおかしいのはバグってるからだし、別にいいんですよ」
別によさそうな表情ではない気がするけど。
「ただその力……。あまりにも異常過ぎるんですよね。あとで代償とかなければいいんですけど……」
「えっ?代償??」
「はい。今思い出したんですけ、実は以前、明らかにレベルが低いのにやたら強い探索者の人に会ったことがありまして……」
サツキちゃんは俺と似たような性質を持った探索者に実は会ったことがあるらしく、その顛末を端的に話してくれた。
……正直、聞かなければよかった話だった。
:ああ、そういえばそんなヤツいたな
:おっさんほどじゃなかったけど彼も強かったよな
:俺アイツの最後の配信見てたよ
:私も。結構トラウマ
:突然ビチャって感じだったもんな
:おい、思い出させるなよ
:寒気したわ
:アレは放送事故
:ライブ見てたヤツらは阿鼻叫喚だったな
能力の暴走でその男は突然亡くなったって今聞いたけど、死に際もすごかったらしい。
……マジで怖いんですけど。
「それもあって本部で見てもらった方がいいって言ったんですよ、わたし」
「そうだったんだ。じゃあ今からでも帰ろうかな……」
「もう遅いです」
「……えっ?」
なんですと?
「ギルドで聞いてないんですか?ダンジョンを引き返せるのは地上にいる間だけで、地下に降りたらワープポイントまで引き返せませんよ」
「えええええっ!!」
「引き返すためのアイテムはいつもは持参してくるんですけど、今日は急いでたんで持ってきてません」
「マジか……」
「ってことで、地下10階までは嫌でも付き合ってもらいますんで、よろしくお願いしますね!」
地上にいる間に教えてくれよ……。
この子、ソレ知ってて俺をここに同伴させてるな。
S級探索者ってコワイ。
:もう諦めろ、おっさん
:お、視聴者1000人超えてね?
:すごいじゃん
:最下層行ったらヤベーことになってそう
:無事に進めればの話だがな
:そんなことよりレベルあがっただろ
:ステ教えてよ
そんなことって……。
まぁもう覚悟を決めて進むしかないな。
幸か不幸かライブ配信は好調みたいだし。
それだけは、素直にうれしいと思える。
「えっと、ステータスは……」
ゾッとする話をされて一瞬忘れていたが、そういえばステータスもまた新たな領域に突入していたことを改めて思い出した。
視聴者さんとサツキちゃんにその内容を丁寧に説明する。
「999は限界値です。それについてはもうこの際、驚かないんですけど……」
俺の説明を聞いたサツキちゃんの視点はカンストした数値のところにはなかった。
葬力値の一番右側に表示された[243]という数字。
どうやらこれも俺特有の症状らしく、視聴者さんも含めて皆とても不思議がっている光景を俺はただボケっと眺めているだけであった。
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