第9話

 :すげえええ!!!

 :死霊系瞬殺

 :おっさんのスキル規格外すぎだろw

 :それでスキレベ1はやばい

 :まだ終わってないよー

 :敵さん、みんなおっさんのこと睨んでないか?



 想定外の効果範囲と威力でモンスターハウス内の死霊系モンスターを瞬殺したことで、残存している魔物たちの目の色が変わった。



「おじさん!」



 サツキちゃんが叫ぶ。


 どうやらハウス内の生き残った魔物達は、ほぼ全員俺に狙いを定め始めたようだ。


 唸り声の重奏が閉じられた空間に不協和音をまき散らす。



「なんかわかんないけど強敵がいるの!今助けにいけないから、頑張ってね!」



 サツキちゃんは明らかに雰囲気の違う魔物と睨み合っている。


 アレはおそらくこのモンスターハウスのボスなのだろう。


 どうやら魔物側は役割分担をしたようだ。



 :サツキと対峙してるアレ、あれゴブリンキングじゃね?

 :上級ダンジョンの中ボスじゃん

 :なんでこんなところにいんだよ

 :ここホントに初級ダンジョン?

 :さすがのSランクでも瞬殺ってワケにはいかんだろ

 :これはさすがにマズくないか?

 :ずっとピンチだな、おっさん



 要するに、サツキちゃんはボスの相手で助けに来れないから、残っているほかの魔物は俺一人でなんとかしろってことね。



 ……上等だ。やってやろうじゃないか。



 死霊系のスケルトンだけは【成仏】で殲滅したから、見た感じ残りあと30体程度か。


 想像通り、他のゴブリンやスライムには効果なかったみたいだ。


 さっきHPは回復してもらったから、攻撃は何発かもらっても耐えられそうだな。


 ただ、いくらレベルが上がっているとはいえ、葬力以外の能力値が低すぎて物理では戦えない。


 スキルでやるしかない。


 現状【火葬】しか有効なのがないけど、あれだけの火力だ。


 この程度の敵ならいけるはず。


 うまく回避しながら連発しよう。


 【火葬】は単体攻撃用のスキルっぽかったが、敵が密集してくれれば飛び火して同時に焼けるかもしれない。



「グシャアアアア!」

「シャアアアア!」

「グルゥゥァァ!」

「シェェェェェッ!!」

 

 

 ええええ!マジかよっ!全員同時に来た!


 前!横!上!後ろもか!全方位だ!


 そんな連携とれてんのかよ、オマエら!


 視界全部が魔物で埋め尽くされる!

 

 ええい!もうなるようになりやがれ!


 とりえあず目の前の敵に集中しろ!


 サクッと燃やして正面突破だ!



「火葬!」



 俺は再び超火力をイメージし、目の前に杖をかざしてスキルを発動した。


 2,3体倒して道を開き、入り口の通路まで戻って狭い空間で一体ずつ相手しようとか考えていた。


 幾分ダメージは受けるだろうが、その方法が最も生き残るための術としては正しいと判断した。



 だがまたしても、俺の思った通りにはならなかった。



 :ちょwwww

 :えっ?

 :ええええええ!!

 :はっ?

 :どないなっとんねんw

 :これでスキレベ2ってありえんだろ

 :全方位集団火葬www



 どうやら、俺に襲い掛かった魔物は全員もれなく焼き尽くしてしまったらしい。


 焼失したゴブリンたちの骨が無造作に転がっている。



「グブブブ……」



 しかも



 どうやらサツキちゃんと睨み合っていたゴブリンキングにも一定のダメージが入っているっぽい。


 ここから数m先だが、背中が焼け焦げているのが見える。


 はっ!


 ゴブリンキングにかぶって見えないが、サツキちゃんは無事だろうか……。


 一緒に燃えたりしてないよね??



「チャンス!」



 ピンピンしてる声が聞こえた!


 よかった!問題なさそうだ。



「はぁっ!」



 怯んだ隙を見逃さず、サツキちゃんは華麗な剣撃でゴブリンキングを一刀両断していた。


 ボスは塵となって霧散し、この場の魔物は全滅したようだ。



「おじさん!」



 すぐに駆け寄ってくるサツキちゃん。


 俺のスキルによる延焼ダメージはないようだ。


 敵味方の判定まで自動でしてくれるようで助かった。



「正直さっきの映像見てもにわかには信じられなかったんだけど……。おじさん、一体何者なの?」


「えっ。いや、ただの初心者僧侶ですけど……」


「そんなワケないじゃないですか!」



 眉を吊り上げ、少し大きな声で俺を否定してくるサツキちゃん。


 なんか怒られてるんですけど。


 結構気性荒めなのかな、この子。



 :結局ほぼ1人で倒しちゃったな

 :モンスターハウスも問題なしっすか

 :ちょっと鳥肌立ったわ

 :最強僧侶爆誕

 :Sランク探索者立場ねーなw



 コメントの流れる速度が加速度的に上がっている。


 気づけば、同接数は89まで増えていた。



《ダイシはレベルが上がった》


《HP+20 MP+30》


《腕力+5 体力+3 敏捷+2 精神+6 葬力+444》


《【霊視】Lv+1》


《ダイシはあたらしいスキルをおぼえた》



 一応一区切りつかないとレベルって上がんないんだな。


 エンカウント毎の判定基準なのかな?


 夢中だったからステータス確認全然してなかった。


 どれ。ちょっと覗いてみようかな。


 ちなみに新しいスキルをまた覚えたが、正直、回復はもう諦めつつある。



―――――――――――

名前 阿尻 ダイシ

職業 僧侶そうりょ

レベル 7(+2)


HP 33/53(+20)

MP  6/65(+30)


腕力 11(+5)

体力  8(+3)

敏捷  6(+2) 

精神 16(+6)

葬力 576(+444)


スキル 

 New【応報 LV1】【成仏 LV1】【回帰 LV1】【火葬 LV2】【霊視 LV3】

―――――――――――

 


 MPがやばい。


 えーっとさっき見た時はMP13残ってたから、【火葬】で2消費して、【成仏】は……5消費ってことか。


 他のスキルはわからないが、少なくとも火葬はあと3回、成仏は1回使ったらもうMP切れだな。


 やっぱ一回戻らねーとジリ貧だな。



 ああ。それにしても。



 葬力、ヤバない?

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