第5話
おそらく今の俺では到底倒せない相手だったと思う。
でも、ただがむしゃらに放った【火葬】のスキルが俺の命を守ってくれたようだ。
ほんと、助かったぁ。
《ダイシはレベルが上がった》
《HP+10 MP+15》
《腕力+3 体力+2 敏捷+2 精神+4 葬力+88》
《【火葬】Lv+1 【霊視】Lv+1》
《ダイシはあたらしいスキルをおぼえた》
オークの焼けてボロボロになった骨を前にしてへたり込む俺。
眼前にはスライムを倒した時と同様にレベルアップ画面が空中に表示されていた。
「はは……やった」
正直オークを倒した感覚なんてまるでなかった。
ただ無我夢中で目の前で起こった問題に対処しただけだ。
ふと、辞めた会社の入社当時を思い出す。
あの時もこんな感覚だったなぁ。
初めてでなにもわからない仕事を一心不乱にこなし、理不尽な命令にも果敢に立ち向かっていた。
その時もある意味命がけだった。
毎日魂を削って会社のために尽くしていたんだから、そう思っても特段大げさということはなかったと思う。
とにかく、よかった。
「さすがに……回復使えるようになったかな」
現状のHPはおそらく2のままだろう。
前回のレベルアップ時にHPの現在値に変化はなかったし、ダメージも受けてないから今のHPはそのままのはずだ。
ゲームだとレベルが上がれば現在HPも満タンになる類のRPGなんかもあるが、ダンジョン探索にそういう都合のいい仕様はないらしい。
とにかくこの瀕死の状態は早くなんとかしたい。
アドレナリンが出すぎて忘れていたが、さっきスライムにやられた手足の痛みが今になって再び感じる。
ステータスの上がり幅にまたものすごい違和感はあったが、とりあえず全体ステータスがどうなったか見てみよう。
―――――――――――
名前 阿尻 ダイシ
職業
レベル 5(+3)
HP 2/33(+10)
MP 13/35(+15)
腕力 6(+3)
体力 5(+2)
敏捷 4(+2)
精神 10(+4)
葬力 132(+88)
スキル
New【成仏 LV1】New【回帰 LV1】【火葬 LV2】【霊視 LV2】
―――――――――――
またしても、回復スキルには恵まれなかった。
「……」
:おーいおっさん、大丈夫かぁ
:なんか放心状態w
:また魔物来ちゃうよー
:レベル上がったでしょ
:ステ教えてよー
「あ、ああ」
俺は全体ステータスを見ながら包み隠さず視聴者さんに現状をお伝えした。
ちなみにいつの間にか同接は7まで増えていた。
レベルは3も上がっていた。
MPの上限は15上がったけど、現在値が2減っている。
【火葬】の消費MPが2だったってことかな。
いや、それよりも葬力の上昇幅が気になる。
ワケわからんくらい上がってる。
この能力値って純粋にスキルの効果に反映するのかな。
魔力だったら同じ魔法系スキルでも数値が高い方が単純に威力は上がるけど……。
それにしても。
またよくわからないヘンなスキルを2つ覚えたようだ。
:【成仏】と【回帰】??
:ガチ僧侶じゃねーかよw
:いろいろおかしなことになってんな
:もうこれ完全にバグってるでしょ
:結局回復は覚えてないみたいだね
:スキルの説明よろしく
「はいはい。えーっとまずは……」
【成仏】:対象を浄化の光で天に召す
【回帰】:天の導きで指定の場所に帰還する
うん。どう見ても回復系ではないな。
ただ両方とも今後使う場面はありそうな説明書きになっている。
特に【回帰】は使い勝手がよさそうだ。
まぁ、俺の認識があっていればの話だけど。
ちなみにスキルレベルが上がった【火葬】や【霊視】に新たな説明書きが追加された様子はなかった。
これは使ってみるまでどの程度効果が拡張されたかわかんないみたいだ。
:回復なしの僧侶って聞いたことないな
:あの【火葬】の火力やばすぎでしょ
:オーク蒸発してたね
:いくら火属性が弱点でもあれは異常
:S級レベルの火力だったな
:絶対僧侶ちゃうわw
うーん。でも確かに僧侶なんだよなぁ。
まぁ一応強い魔法?みたいなスキルが使えるんだし、前向きに捉えようとは思っている。
「それじゃHPもやばいんで、一回ダンジョン出ようと思うんだけど」
俺は視聴者さんたちにダンジョンを一旦出る旨を伝えた。
さすがに回復もせずにこのまま先に進むことなんてできない。
気づけば、同接は12まで増えていた。
:オッケー。おつかれさん
:楽しかった!次の配信、待ってるよ!
:チャンネル登録しといたぞー
:新しいスキル楽しみだな
:次は回復準備してこいよ
:初級ダンジョンくらい楽勝だろ
なんかみんなあったかいな。
配信してよかった。
これからどうなるかわかんないけど、せっかく見にきてくれる視聴者さんたちができたんだし、また頑張ってダンジョン探索続けよう!
「みんなありがとう!それじゃ俺は一旦これで……」
「ちょっとそこどいてぇぇぇぇ!!」
な、なんか入口のほうから絶叫しながらすごいスピードでなにかが迫ってくる!
ちょっ!そんな急に!
なんだアイツ!やばっ!
「うわああああああ!!!」
素っ頓狂な声を上げ、まだその場に座り込んでいた俺は、その向かってくる何かに対して少し体を横にずらす程度の反応しかできなかった。
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