第3話

 ぽよん



「あれ?」



 杖でスライムのど真ん中をぶっ叩いた。


 手ごたえはあったのだが。


 スライムは後ろに飛んでいったものの、特にダメージを負っている様子はない。



 :お、今のクリティカルじゃね?

 :でも倒せてないな

 :霊視でスライムの残りHP確認してよ



 コメントがチラチラ目に入ってきて気になるな。


 配信やってる以上あまり無視もできないけど、こっちに気を取られすぎてるとやられちゃうよな。


 慣れるしかないか。



「スライムの残りHPは……4。って、今ので1ダメ―ジっすか……」



 会心の当たりだったんだけどな。


 あれで1ダメージはきつい。



 :スライムに打撃はダメージ入りにくいよ

 :腹狙え、腹

 :右足になんかついとる



 ジュワァ



「あっつ!うわわわ」



 どうやら叩いた瞬間にスライムの一部が右足に付着したらしい。


 灼けるような痛みが脳を駆け巡る。


 無意識にその粘着物を手で払いのけてしまう。



「うわっ!手についた!あっつ!」



 左手にもダメージを受けた。



 :草

 :杖でやれ、杖でw

 :これは死亡フラグ不可避



 この視聴者さんたちは応援してるのか茶化してるのかどっちなんだ。


 っていうか、俺のHPどうなった?


 ステータス画面を開き、自分の状態を見てみる。


 ……なんか4ダメージも喰らってるんだけど。


 残りHPは6。


 大丈夫か?俺。


 ほんとにここでやられちゃうんじゃないの?



 :1回逃げたほうがよくね?

 :回復スキル使えないの?

 :ポーションは??



 回復スキルが使えないのに不用意だった。


 早くダンジョンを体感してみたかったから、ついポーションは買い忘れてしまった。


 ちょっと様子を見てすぐに引き返すつもりだったから用意しなかったのだ。


 ここは最初の視聴者さんのコメントに従って、一旦逃げて態勢を立て直した方がよさそうだ。


 やっぱこのステータスでソロプレイは無理があったな。


 ……いやでも、待てよ


 逃げるにしても、確か俺の敏捷って1だったよな。


 これ、逃げられなくない?


 回り込まれたらアウトだろ。



 ……覚悟を決めるしかないみたいだ。



「腹を、狙えばいいんだったな」



 腰を少し落とし、両手で持った杖を眼前に構える俺。


 ダメージが通りやすい(らしい)腹を狙えば、なんとかなるかもしれない。


 そっちのほうが逃げるより確率が高そうだ。


 ……でもスライムの腹ってどこなの?



 :地面にくっついてる側ね

 :そこ叩けば打撃でも割とダメージ入るよ

 :いや、急所は目だ



 目?目とかないんですけど。


 もうわけわからん!とりあえず腹を狙う!



「キシャアアアア」



 うわっ!来たぞ!


 今度は地面を這いずって迫ってきてる!


 腹見えねぇ!!



「うおおおおおお!」



 元社畜、舐めんじゃねぇぞ!



 ドカッ!



 :蹴ったw

 :うわぁ……

 :触ったらダメだって。これは死んだな。



 いや、まだ生きてる!


 蹴ったほうの脚にスライムの一部がまた付着し、激痛が走る。


 ダメージは受けている。


 でも



「うおおおおりゃあああ」



 少し宙に浮きあがったスライムの、その一瞬を見逃さない!


 蹴った勢いそのままに、俺は右足を踏ん張り、杖を下から思いっきりすくい上げ、ゴルフスイングのようにスライムの腹に強烈な一撃を再度お見舞いしてやった!



「フシュゥゥ……」


 

 透かした屁のような音とともに、青い煙を上げながら地面へと吸収されていくスライム。


 た、倒せた……のか?


 傷の痛みで気を失いそうになっていたが、なんとか【霊視】を発動し、スライムが溶けている場所を確認してみる。



―――――――――――

種族:スライム

HP:0/5

MP:1/1 

―――――――――――



 どうやら削りきって倒せたようだ。



「ふへぇぇぇ。あっぶねぇ」



 間一髪だった。


 俺のHPも見てみたが、残り2になっていた。


 あれで倒せてなかったらヤバかったな。



 :おつかれ~

 :お、やるじゃん

 :残念



 残念ってなんだよ。コノヤロー。


 いやーほんと死ぬかと思った。



《ダイシはレベルが上がった》



 ん?なんか空中に見慣れない表示が浮き出している。


 レベルが、上がった?


 そういえばギルドで説明受けてたな。


 ゲームと一緒で魔物を倒して経験値を稼げばレベルが上がる。


 レベルが上がればステータスも上がる。


 そして新しくスキルを覚える、こともある。


 こんな感じなんだな。


 さて、初めてのレベルアップ。


 ステータスとスキルはどんな感じになったかな……


 空中で指を動かしレベルアップ画面を操作する。


 少し慣れてきた。



《HP+3 MP+5》



 はいはい。まぁそんなもんだろ。

 

 続き。



《腕力+1 体力+1 敏捷+1 精神+1 魔力-10 葬力+44》



 ……なんかもの凄い違和感がある。


 ま、まぁとりあえず最後まで見てみよう。


 まだ続きがある。



《ダイシはあたらしいスキルをおぼえた》


 

 スキル覚えた!おっしゃ!

 

 たぶんヒールだよな?そうに違いない!


 まだ続きがあるようだ。


 なんとなくだけど、次で能力値の上り幅と覚えたスキルを一覧で確認できるような気がする!


 さて、どうなったかな。


 

―――――――――――

名前 阿尻 ダイシ

職業 僧侶そうりょ

レベル 2(+1)


HP  2/13(+3)

MP 15/20(+5) 


腕力 3(+1)

体力 3(+1)

敏捷 2(+1)

精神 6(+1)

魔力 0(-10)

葬力 44(+44)


スキル 

 New【火葬 LV1】【霊視 LV1】

―――――――――――


 

 うん。


 魔力値どこいった?


 そして葬力ってなんなんでしょうか?


 あと覚えたスキル。



 【火葬】



 これは絶対に、回復のスキルではない。

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