1.追いついてみせる

 学校の駐輪場を抜けた俺は、教職員用駐車スペースに向かった。

 本来であればここから学校がレンタルした貸切バスに部員全員で乗車し、郊外にある『広郷ひろさと市民陸上競技場』まで直行する予定だった。

 いや、バスは予定通り出発したのだ。

 俺を残して。

「大丈夫、まだ諦めんな」

 己を鼓舞するように独り言ちる。

 そうだ、諦める訳にはいかない。

 俺は今日に賭けている。

 その時ジャージのポケットに入れていた携帯が震え、開いてみるとマネージャー兼務の一年部員・中武なかたけからのメールだった。

宇佐美うさみ先輩、今どこですか。さっきのメール見れくれましたか。俺らは今ちょうど着いたとこです。連絡ください』

 俺はそこで溜まりに溜まったメールを遡って確認していく。

『すいません、先行きます。学校に来てたら、裏のセイコマ前のバス停から広郷行のバスが出てるらしいんで、追いかけて来てください』

七瀬ななせです。会場で待ってます』

『宇佐美どうした?大丈夫か?電話でてくれ』

『うーちゃん早く来い。学校で待ってるよ』

 キャプテンからも来ている。みんなに心配をかけて、俺は……。

 ダメだ、立ち止まっている場合じゃない。

 俺は顔を上げ、学校裏に建っているコンビニに向かって駆け出した。

 裏門を抜けると道路の向こうからバスが来ているのが見える。

 あれか?

 迷わずダッシュする。

 俺はスプリンターだ。絶対間に合う。

 ――絶対に追いついてみせる。



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