お題:スタート タイトル「あー、異世界転生してー」

マサムネ

スタート 「あー、異世界転生してー」

 日曜の昼下がり。

 アパートの一室。

 八畳の部屋に置かれた炬燵に足を突っ込み、L字になって二人の男が寝そべっていた。

 一人の男がこの部屋の主で、もう一人がその友人。

 二人はいわゆる腐れ縁で、小学校から大学まで同じで、卒業しても毎日のごとく二人でつるんでいた。


「あー、異世界転生してー」

 天井を見上げたまま、友人が声を上げた。


「じゃあ死ななきゃだな」

 部屋の主もまた、天井を見上げたまま呟くように返した。


「えー、それは嫌だなあ」


「いや、死ななきゃ始まんないでしょ? 転生なんだから」


「じゃあ、見本見せてよ」


「なんでだよ。俺、別に異世界転生したくねーし、転生しなかったらただの犬死だし」


「だったら、あれだな。異世界召喚にしよう」


「召喚されても何もできないでしょ? それこそ犬死するだけやん」


「そんなに自分を卑下すんなよ! お前は素晴らしい! 何せ働いているからな!!」

 言いながら、友人が勢いよく体を起こし、部屋の主に視線を向ける。


「お前はさっさと仕事見つけろよ」

 部屋の主は冷静な視線でそれに答える。


「……」


「……」


 ドン! と音を立てて友人は炬燵に突っ伏した。


「明日の朝、『勇者よ、起きなさい』て起こされないかな……」


「お前の母ちゃんに頼んどいてやろうか?」


「それ、転生ルートだから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お題:スタート タイトル「あー、異世界転生してー」 マサムネ @masamune1982318

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ