第6話 【三人称視点】
薄暗い広い空間の中に100人の女たちが円卓を囲んでいた。
「では、第831回サイ報告会を始める。報告する者はいるか」
そう発言すると炎が現れ、発言者の顔が照らし出される。
その正体は―――サイの母レイだ。
普段の儚い姿とは一変し、レイはこの100人の女たちを統べる威厳を示していた。
「はいっ!報告したいことがございます!」
「発言を許可する。【
シャルロッテは椅子から立ち上がり、レイに体を向ける。
「本日、サイ様と剣術訓練を実施し…サイ様の聖遺物を入手致しました」
すると、円卓がざわつく。
「皆、静まれ……続きを話せシャルロッテ」
「はい、こちらのサイ様の聖水(汗)が染み込んだタオルです!」
シャルロッテが高々にタオルを掲げる。
「「「おぉおおおおおおっ」」」
女たちはシャルロッテが掲げたタオルをうっとりとした表情で眺める。
「シャルロッテ…あなたの功績を認め、序列を7位から4位に上げましょう」
「……!ありがとうございます!レイ様」
シャルロッテがレイに深々と頭を下げ着席する。
「他に報告するものはいるか?」
「は~い」
マリアンが手を上げたまま椅子から立ち上がる。
「発言を許可する。【
「私は~今日サイ様と~魔法訓練をして~こちらを入手致しました~」
マリアンが小瓶を少し上に持ち上げ小瓶を揺らした。
「それは……まさか!」
「は~い、サイ様の~唾液で~す」
瞬間、沈黙が訪れるがそれはすぐに終わった。
「「「欲しい~~~~~っ!!!」」」
レイとシャルロッテ以外の女たちが一斉に立ち上がり、小瓶を欲望と狂気の孕んだ目で見つめ息を荒くしていた。
「ぐぬぬ…!……唾液だなんて……羨ましいぞ……マリアン!」
シャルロッテは心底悔しそうに唇を噛む。
「静まれ」
レイがそう言うと、先ほどまで騒いでいた女たちは一斉に沈黙し着席した。
「マリアン」
「は~い」
「お前の序列を10位から3位に上げる」
「よっしゃあっ!!」
「「「………」」」
マリアンが椅子から立ち上がりガッツポーズを決めると、女たちが無表情でマリアンを見ていた。
「こほんっ…え~いいんですか~ありがとうございます~」
マリアンが両手を胸の前で組み、お辞儀する。
それを見た女たちはこう思った。
(いつまでも猫被ってんじゃねぇぞ。さっさとサイ様の前で本性を現しやがれ、このクソ女)
「他に報告するものはいるか」
「「「…………」」」
「……無さそうだな。では、本日から【サイハーレム王国】の計画について会議を始めよう」
すると、女たちが雰囲気が真剣なものへと変わり、視線がレイに集中した。
女たちの真剣な顔を見て、覚悟を決めたレイは皆にこう告げた。
「―――この計画を遂行する上で邪魔となる……ユースダリア帝国現皇帝ジークの殺害方法について作戦を立てよう」
「ですが、それだと皇帝を排除するだけで、その後の皇位継承の問題が残ります。どうするおつもりなのですか?」
シャルロッテの発言に賛成をするかのような声がちらほらと上がった。
「静まれ皆の者。それとシャルロッテ、私の話を最後まで聞け」
「いえしかし、明らかにレイ様はそのことを忘れ―――」
「いいから聞けぇえええっ!!」
「「「…………」」」
レイの怒号によりこの空間の音が一切無くなった。
そして、レイはこの静寂の空間を切り裂くが如く咳ばらいをした。
「わ、私は皇帝ジークを殺す前にサイが皇位継承されるよう手伝おうということを話そうとしたのだ。決して早計な判断をしたわけではない」
「それは無理があると思いますが」
そう隣の席からレイに言い放ったのは、サイたちのメイドを務めているエルンだ。
エルンはこの中で唯一レイに物言いをつけられる人物であり真の支配者とも呼べる存在だ。
「ぐぬぬぬ……エルンめ……後で覚えておきなさいよ……」
「…………」
レイの睨みにエルンはスンっと表情でスルーした。
そのことで、レイは多少なりの冷静さを取り戻した。
「はぁ…では我々はのこれからの行動は、更なる勢力の拡大と皇帝ジークに対する精神的攻撃を仕掛けることに集中する。いいな」
「あの~精神的攻撃って~何をするのですか~」
「あぁ…それはだな―――」
レイが皇帝ジークへの精神攻撃の方法について話した。
すると、「おぉ~~~」という皆の納得するような声が上がった。
「皆、納得いったようなのでこれにて会議を終了する。
……サイ、もう少しだけ待っててね」
そう言った瞬間、この空間から光が消えた。
【連載版】異世界転生ものが大っ嫌いな俺が、異世界転生をしてしまった件~今すぐ元の世界へ帰りたい俺ですが、美形すぎる顔のせいでド変態女どもが群がり俺を元の世界へ帰さないよう邪魔をしてきます~ 大豆あずき。 @4771098_1342
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