第10話 スタート

「お兄ちゃん!」


 今聞いたばかりなのに不思議と懐かしく感じる声に振り返ると、誰もいなかったはずの草原くさはらの上にサナの姿があった。ユニークスキルでもう一度やり直して来たのだろう。


 サナは髪を揺らしながら駆けてくると、僕の胸に飛び込んでくる。


「……よかった。今度こそ無事で」


「無事、とは言えないんじゃないか?」


 一瞬で世界は変わってしまった。そしてまだアイツは諦めていない。


「うん、でも、大丈夫だよ!」


 サナの小さな顔が離れていく。なぜだかその笑顔が眩しく見えた。


「私とお兄ちゃんがいる。スタートはここから、いつでも始められるから」


「そう、だな……そうかもしれない」


 スキル値はまだまだある。技も魔法もレベルはもっと上げられる。何よりも広大な世界は冒険が待っている。


「行こうか、サナ」


「うん……あとね、お兄──いや、エイト。関係値がリセットされたってことは、私とお兄ちゃんはもう血は繋がってないの。それがだからどういうことか、わかるよね?」


 サナは、悪戯っぽく微笑んだ。





◇◇◇◆◆◆


お読みいただきありがとうございました。


「スタート」をお題にした現代ファンタジー。文字数制限が一万文字ということで、漫画の読み切りを意識して書いてみました。


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Start over フクロウ @hukurou0223

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