Re Start

夏目 漱一郎

第1話Re Start

「本当にこのボタンを押すだけでいいのか?」

「はい、それでこれまでの失策は帳消し。あなたは再び高い支持率の内閣総理大臣としてやり直す事ができます」


思えば党の総裁選を勝ち抜き総理大臣に任命されたばかりの時。国民の過半数は私に期待し、内閣の支持率も60%はあっただろうか。

それが、一年経ち、二年経ち、現在に至っては内閣支持率20%を割り込む体たらく。これでは夢だった”解散”だって出来やしない。


だいたい、支持率が低いのはなにも私だけのせいではない。不倫したり選挙違反したり、それにパーティーやって金ちょろまかしたアイツとアイツ!あのボンクラどものせいじゃないかっ!


私は何にも悪くない。所得税だって減税するし、住民税非課税世帯には給付金だって配ろうっていうんだ。それのどこが悪い!この国の将来の財政、少子高齢化の未来を抱え、どれだけ苦しくなるか分かっているのか!


「なにが”増税メガネ”だ!」

「えっ、何かおっしゃいましたか総理?」

「いや、別に…」


私の内閣の支持率が20%を割り、”危険水域内閣”と揶揄されるようになってきたある日。突然あの男が官邸の私の寝室の枕元に現れた。


「突然現れて驚きになったかもしれません。私は未来からやってきた『ノラえもん』と申します。このままでは、近い将来日本は滅んでしまいます。ですが、今ならこの装置を使ってRe Startする事ができます。


「Re Start だって?」

「そうです、あなたの心の中でRe Startしたいものを思い浮かべながらこの『ボタン』を押すのです。」

「それだけ?」

「そうです、それだけです」

『ノラえもん』は、百年先の未来からやってきた『野良猫型ロボット』だ。日本の危機を救うために未来の最先端ハイテク装置を携えて現代にやってきた。


「さあ、これで総理のあなたがこのRe Startボタンで壊滅的な日本を救うのです!」

「私がこのボタンを?」

「そうです。総理大臣のあなたなら、その資格は十分にある。しかし、チャンスは一度だけです、やり直しは効かない」

「一度だけ…」


『ノラえもん』は私にチャンスをくれた。このボタンさえあれば、私はまた国民の支持を一心に集める人気総理に返り咲くことが出来る!やるべきことは山ほどある。異次元の少子高齢化対策。景気対策。そして待ったなしの防衛対策…しかし、チャンスは一度。はたしてどれを優先するべきか。


「総理、ではいいですか?私が合図したら心の中でRe Startしたいものを浮かべて、このボタンを押して下さい」

「わかった」





「はい、今です総理!」


ポチッ!
















「ああっ、よく見える!裸眼で1.5というところか。これでもう

『増税メガネ』とは言わせない!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


おしまい







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Re Start 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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