初原の片想い


中学の同窓会は、成人式が終わってすぐに始まった。

久しぶりに会った子、そういえばこんな子いたなと思い出した子。

皆、成長してあの頃とは違う。もう大人になったんだ。


「久しぶりじゃん、初原」

「うん。久しぶり」


卒業式で一緒に写真を撮った友達に話しかけられた。


「ねえ、速川さんは?」

「速川さん?えっと、写真部の子だっけ?」

「えー?だれだれ?」


覚えてないんだ。変なの。


「卒業式で写真撮ってくれた子だよ」


そう言うと皆、あーそんな子いたねと返す。

誰も速川さんがどんな子だったか、なかなか答えられない。


「ねえ、速川さんと同じ高校だったよね?」

「え?速川?あー、うん。そうだったけど...」


それより先のことは聞けなかった。

ここにはいないみたいだ。


今、どこで何してるんだろう?


好きな人だった。話したことは一度もないけど。

何事にもいつも、必死に努力してる子。

サボったり、すぐに楽な方に行こうとする私とは正反対のすごい子。


上手くいかなくても、結果が出なくてもがんばってる強い子。

写真部はサボってる人ばっかで、あんまり活動もしてない部活だった。

でも、速川さんがサボってる所は見たことがない。


誰よりも部活熱心で、よく私も写真を撮ってもらっていた。

皆もそうだったはずなのに、忘れてるなんて薄情だ。


「速川さんが今どこにいるか気になってるって本当?」

「本当だよ。何か知らない?」


話しかけてきてくれたのは、速川さんと同じ写真部だった子。

速川さんと仲が良かったようなイメージは全然ないけど。


「アメリカ?だったかな?留学してるんだって。うちの父さんと速川さんのお父さんが会社同じでさ...」


なんで留学したのかまでは分からなかった。

でも、すごいな。速川さん。

ずっとがんばってたから、やっと結果が出たんだ。

それを認められたんだろうな。


どうして話しかけられなかったのかな......なんて、勇気がなかったの一言で片付けられることをずっと気にしてしまう。

女同士だからとかは、きっと気にしたことがなかったと言ったら嘘になる。

でもそんなのはただの言い訳でどうしようもない。


「あれ?速川さん!?」

「........!」


飛行機は時間通りに動いたけど、電車が遅延して遅れてしまったと語る速川さん。

皆と違い、晴れ着姿ではなく、普段着で少し息切れしている。


よっぽど急いで来たんだろうな。

おどおどしていた中学の頃と違って、満ち溢れているとまではいかないけど、昔と違って自信がついたらしい。

すごいな。やっぱり。


「ねえ、速川さん......」


がんばろう。今度こそ、告白できるように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カメラ越しでしか、見ることができない人 曲輪ヨウ @kuruwa_yo_u

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ