ス夕一卜 〜カクコン9、隠された暗号〜

みちのあかり

深淵を覗く者

「おっ、カクヨムからお知らせが来た。なになに? カクヨムWeb小説短編賞2023創作フェス 1回目お題 ス夕一卜? なるほど、新年らしく爽やかなエッセイとか、希望にあふれる青春ドラマを書かせようってことか。うん。賞を取るには運営の求めている物を読み解いて書かないと、今のカクヨムではすぐ落とされるんだよな」


 僕がそうひとりごとをつぶやいていたら、同じシェアハウスに住んでいる大学生の雪斗が、パソコンを覗き込んできた。


「また小説書くのかスバル? いいかげん諦めたらどうだ?」

「ほっとけ」


「ん? 今度のお題は? スタート? スタートラインに立つことからはじめ……、あれ?」


「どうした?」


「スタートじゃないぞ、これ?

「は?」


「この横棒。伸ばす記号さ、漢数字の一だぞ」


「え?」


「すたいちと、だ」

「すたいちと? ほんとだ!」


「よく見ろ! カタカナのトじゃない。水卜ちゃんのうらだ! タも違う! 夕方の夕じゃないか!」


 僕たちは画面を凝視した。確かにスタートじゃない。すゆういちうらだ。


「すゆういちうら。どういう意味だ? 変換して見るか」


 すゆういちうらで変換キーを押してみた。素祐一裏。分からん。


「これは、カクヨム運営から出されたメッセージかもしれないぞ。なにか巨大な陰謀が隠されているのかもしれない。おや、誰か来たようだ」


 雪斗が玄関に行くと、パアンと乾いた音がはじけた。


「まったく。これだから頭のいいガキは嫌いだ」


 頭から血を流しドサッと倒れた雪斗。銃を持つ黒づくめの男。


「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」


 どこかで聞いたセリフだけを吐く男。


「ハッハッ、見ろ!人がゴミのようだ!!ハッハッハッハッ!! 」


 それムスカ! ここで言うセリフじゃないよね。


「真実にたどり着く者を生かしてはおけない。これはカクヨム運営の総意だ。ここで死んでもらおう」


「なんで? ぼくは小説を書いて書籍化作家を目指していただけなのに」

「恨むなら、彼と運営を恨むんだな」


 コツコツコツと近づき、僕の頭に銃口を突きつけた。


「最後に何か言い残すことはないか、少年」


 どうしろっていうんだよ。


 その時、男が吹っ飛んだ!


「こっちよ!」


 シェアハウスの同居人、OLの美里さんが、僕の手を引いて窓を突き破った。


 キラキラとガラスの破片が散らばり、僕の首から血が出てきた。


「あの車に乗って!」


 ドアが開いている黒いワゴンに乗り込むと、一気に車は走り出した。慌ててドアを閉める。


「雪斗君は残念だった。あなた達、気づいてしまったようね。もう普通の生活はできないわ」


 ごめん。何のことだかさっぱり分かりません。


「選択肢は2つ。私達の仲間になるか、このまま殺されるのを待つか」


 待って、本当に意味わかんないから。


「なろうに逃げこもうにも、タグにカクヨムオンリーと付けられてしまったわ。もうカクヨムの中で運営と戦いながら、この謎を解き運営を乗っ取ることしか私達には生き延びる道はないのよ。よろしく、同士スバル。雪斗の弔い合戦よ」


 カクヨムの謎って何? 僕は訳が分からないままにカクヨム運営と戦うことになった。すゆういちうらの謎を解くために。


 僕の運営との戦いは、ここからスタートした。

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ス夕一卜 〜カクコン9、隠された暗号〜 みちのあかり @kuroneko-kanmidou

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