寂しさの重み

@mia

第1話

 左腕が死んだ。一晩中お客様に腕枕をしていたら死んだ。

 お客様に腕枕をするのはサービスの一環である。このサービスは結構喜ばれるが僕の左腕は毎回死ぬ。

 僕は添い寝屋で働いている。一人で寝たくない人と添い寝をするのだ。

 社長は「健全なお仕事だから、健全」と常日頃から言うように添い寝するだけの仕事だ。

 社長の言う反対の「健全じゃないこと」をすると、客も従業員も社長に説教と罰金を食らう。懲りずにまた同じことをしたら出禁になる。社長はどう言っているのか分からないが、その後出禁になった人を見ることはない。

 他の従業員は何事もなく添い寝をしている。

 ここで働くようになって驚いたのは、お客様が独り身の人だけではないということだ。 恋人がいるという人も配偶者がいる人も結構いる。

「高い金を払ってこんなところに来ないで、お相手と添い寝すればいいのに」と同僚が言っていたが、僕も恋人ができる前はそう思っていた。でも、恋人がいるから寂しいということもあるのを独りの時には分からなかった。

 独りでいる時がとても寂しい。

 左手が死んだ日だけ僕は眠れる。

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