賢者の日常

第8話 夜の海を眺める

 僕はゆっくりとメリーのベッドから身体を起こした。


 夜だった。

 だけれど、星の輝きのおかげで窓辺の方が室内より明るくて、僕はあかりもつけないままキッチンでホットミルクを沸かしてから、窓を開けて砂浜に座り込んだ。



 目の前に海と星空が見える。人工物の無い純粋で変わることのない自然の景色。数秒毎に流れ星が流れていく。


 潮騒と弱い風が僕を優しく包む。海だ。


 手のひらで包むように持っているホットミルクを入れたカップが暖かい。水平線と星空を見ながら時折ミルクを飲む。



 自然な甘みと生き物由来の温もりが喉を通って心までもあったかくしてくれる。



 ざざーっ。

 波が寄せては引いていく。



 きらり。

 藍色の空を流れ星が流れていく。



 さぁー。

 肌を風が撫でる。



 ざざーっ、きら、さぁー。

 ざざーっ、きら、ささぁー。


 僕はそうして何時間も星空と海を見続けた。


 しばらくしてホットミルクを飲み終えると、僕はカップを砂浜に置き、手のひらで貝でできた砂を掬い上げた。


 そして、砂にふーっと息を吹きかける。砂が舞い上がり、霧散しながら空に昇っていく。この砂がいつか星になるのだ。僕は笑顔で星の子らを見送った。




 

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【眠れぬ夜のお供に】星屑の賢者と呼ばれて〜アラサーの異世界散歩録〜 チン・コロッテ@少しの間潜ります @chinkoro

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