第7話 ふわふわのベッド

 星を帰して、僕も海辺に建つ家に戻った。


 我が家はターコイズブルーの広い海辺の砂浜の上に建っている。砂浜は貝殻が砕けてできたもので、白を基調として、時々ピンクの欠片が混ざっている綺麗な砂浜だ。歩くとキュッキュッと音が鳴る。そして、我が家はその白い砂浜を練って作った壁に、流木を柱に組んで作ったものだ。当然、海に面した壁は全て窓にしている。


 我が家の建て付けの悪い扉をガタゴトと開けると、窓から吹き込んだ風がふわりと僕の頬を撫でた。

 家の奥から優しくゆっくりとした声がする。


「やぁ、おかえり。星屑の賢者さん。待っていたよ」


 僕はふっと口角を上げて、彼女に答える。


「ただいま、メリー」


 少し部屋を歩いていくと、広葉樹の樹冠くらい大きな、フワフワのわたあめみたいな白い塊が見えてきた。眠り羊のメリーだ。丸まって眠っていたようだ。そのメリーが目を閉じたままこちらにゆっくりと顔を動かす。



「今日も沢山歩いたのでしょう?」

「あぁ。でも、今日は一人星屑を帰せたよ」

「良かったね。それは何より。きっとお星さまも喜んでいるよ。さぁ、僕のところでおやすみ」

「あぁ、ありがとう」


 そう言って僕は目を閉じる。

 そして、そのまま倒れ込んで、メリーに体を預けた。


 ふわふわだ。


 メリーは体を沢山のとても柔らかな体毛に包まれている。メリーの体は僕から重力を奪う。まるで宇宙を漂っているみたいに、身体がフワッフワに包まれるのだ。


 ふわふわ、ふわふわ。

 閉じた僕の頭の中で、宇宙の星空が思い起こされる。

 なんて心地良いのだろう。



 そして、体を預けた折に、勢いでメリーの毛から、桃と搾りたてのミルクのような甘くほのかな香りがふわりと香る。眠り羊はこの香りのせいでいつも寝てしまう。だから、眠り羊。それくらいにリラックスできる香りだ。



 僕はメリーに力無く告げる。




「いい……かおりだね。おや……すみ……」


 メリーもうとうとしながや答えた。


「おやすみ……。星屑の……賢者さん」

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