現在

 再び3年連続リーグ優勝をしたキャリアーズは第二の黄金期と呼ばれていた。


 前回の3連覇は『守護神』伊吹投手を中心とした『投のチーム』であったが、3連覇中の現在は『打のチーム』になっていた。

 キャリアーズは毎年毎年、新人の強打者が出現してはチームを牽引して快進撃を続けている。

 他チームの投手陣は、快進撃を止める事が出来ずにいた。



 チーム初のリーグ4連覇を目指す春季キャンプ。

 今年もドラフト上位の有望な新人選手にマスコミの注目が集まっていた。

 新人選手の初めての打撃練習が始まった。カメラの砲列は打撃ケージに向けて集中する。

 次々と放たれる大飛球や弾丸ライナーに観衆や記者達が驚嘆の声を上げる。


「これは、今年もキャリアーズで決まりだな」

「こんなにも強打者が輩出すると、天城監督もレギュラー選びに苦労しそうだな」

「でも、嬉しい苦労でしょう」


 記者達は口々に言う。

 その中で淡々と新人選手に向けて球を投げ続けている男がいた。


 磯浜キャリアーズ 背番号149番 伊吹 ただし 33才 打撃投手


 伊吹は自由契約後、球団から打撃投手の依頼を受けていた。彼は現役復帰の未練を断つ為に快諾をした。

 今までの打者に打たれない投球から、打者に打ってもらう投球へと意識改革をした。


 彼が打撃投手に転向後、チームの打力は急激に上昇していった。

 特に新人選手が彼の球を打つ事で自信を持ち、急成長のきっかけを掴んでいった。

 不調のベテランも彼の投球で調子を回復していた。

 以降のキャリアーズは強打の球団として成長していった。


 チームメイト達は彼の事を、こう呼ぶ。

『神の左腕』と……




 END

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神の左腕 わたくし @watakushi-bun

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