#100 挫けない少女の覚醒
ケンくんにキスをした。
ホッペにだけど、私のファーストキス。
ロストバージンに向けて、色々と作戦を考えて遂行中だったのに、衝動的な勢いだけでキスしちゃった。
今まで、キスなんて通過点で、誰でもするような大したことじゃないって思ってた。でも、実際に初めてのキスをしたら、全然違ってた。
一瞬だけ頬に口を触れただけの行為に、唇の感触がドンドンリアルになってくると、ジワジワと羞恥心と高揚感が押し寄せてきて、顔が熱くなるのが分かった。
羞恥心に耐えられずに自分からしたその行為に言い訳しようとするけど、自分でも何が言いたいのか分からなくなって、冷静になろうと『キスしただけ!平常心平常心!』と必死に自分に言い聞かせた。
そして、ケンくんの前だから何とか取り繕おうとしたけど、ケンくんの表情をひと目見たら、頭から水を被ったみたいに羞恥心や高揚感が一気に冷めた。
ケンくんは、凄く困った時の表情をしていた。
それは、中2のバレンタインに私が告白した瞬間を思い出させる表情だった。
私はまたやらかしちゃったっぽい。
おっぱいにタッチもホッペにキスも、今のケンくんにはやり過ぎだったんだ。
ケンくんをその気にさせるギリギリのラインを読み誤って、超えてしまっていた。
心のどこかで、私がキスしたらケンくんは喜んでくれる。またニヤニヤと嬉しそうな顔を見せてくれる、と思い込んでいた。
でも、実際には全然そんなことにはならなくて、困惑させてる。
自分の甘さと
今日はロストバージンという大いなる目的があったのに、こんなところで
ツバキの言った『ただの幼馴染なのに』という言葉を思い出してしまう。
ケンくんとのデートが楽しくて、つい浮かれちゃってた。
ケンくんと一緒にロストバージンを迎えるのなら、もっと慎重になるべきだった。
もうこの状況じゃ、私に出来る事は反省して謝ることだけ。
いつもケンくんには気を遣わせて謝らせてばかりだったから、今度は自分からちゃんと反省しなくちゃダメだ。
でも、私が謝っても、ケンくんは寛容だった。
私のキスを、驚いただけで嫌じゃないと言ってくれてる。
それでも不安を見せる私を安心させようとしたのか、私との幼馴染という関係への想いを聞かせてくれた。
それは、私のことをとても大切にしているという強い意思を感じる話で、けど、私に対する恋愛感情が無いと言われている様にも聞こえた。
ケンくんをまた困らせてしまったという懸念は何とか解消されたようだけど、ココに来て、幼馴染という関係を強引に作り上げたことの弊害が出てきたように感じる。
事あるごとに幼馴染であることをアピールして、このアドバンテージを上手く活かそうとしてきたけど、ケンくんまで幼馴染であることに拘り始めちゃって、私を恋愛対象としてじゃ無く、守るべき幼馴染として認識してるっぽい。
ツバキが言ってた通り、それはそれでケンくんにとって私が特別な存在だってことだから喜ぶべきかもしれないけど、でもそれは、私の望むものじゃ無い。
私はケンくんと恋人になりたい。
ケンくんとラブラブなセックスするのが目的なの。
ぶっちゃけ、ケンくんは、根が真面目で朴念仁だ。
恋人でも無い女性とセックスなんてしないと思う。
寧ろ、大切な守るべき幼馴染に手を出しちゃダメだって思ってそう。
勢いと雰囲気で何とかなると目論んでたけど、ココは作戦を変更したほうが良さそう。
ケンくんの中での『幼馴染>恋愛対象』を逆転させる必要があると思う。
でも、私のことを恋愛対象として意識して貰おうと思ったら、もう告白するしか無いってことになるんだよね。
そうなると、過去にフラれたトラウマが・・・
告白するしか無いって分ってても、恐怖で踏み出せない。
踏み出す勇気が欲しい。
幸い、まだ恋人プレイは続いてるし、それを利用してみようかな。
告白する勇気が欲しくて、ケンくんにリクエストしてギュっと抱きしめて貰った。
うん、良い感じ。
抱きしめられてケンくんの体温に包み込まれると、例えようのない幸福感と安心感が湧いて来た。
今なら言えそう。
私の想いを。
「―――ケンくんラブは今までもこれからもずっと変わらないし」
今の私の精一杯の告白。
中2の時のことがトラウマで『好き』とか『付き合おう』って言葉は使えなかった。
「・・・・」
あれ?無反応?
え?なんでなんも言ってくれないの?
返事くらいしてほしいのに、なんで無反応なの?
ヒシヒシと不安が押し寄せて来る。
あ、また困惑させちゃってるの!?
不安で声を掛けてみるけど、反応が無い。
どうしよ・・・
恐る恐るケンくんの表情を見ようと振り返ると、ホッペにキスされた。
おおおおぅ!?
コレってもしかして、私の告白、通じた!?
と思ったら、ただの事故だって。
ケンくん、めっちゃ慌てて謝ってるし。
足舐めるとか切腹とか言ってるし。
円周率とか意味不明だし。
力が抜けた。
そんなに必死に謝られたら、許すしか無いし。
っていうか、事故でもキスして貰ったのは事実だし、そんなに謝らなくてもいいんだけどね・・・なんだかなぁ。
結局、私の告白は有耶無耶になっちゃってる。
めっちゃ勇気振り絞って告白したんだけどなぁ。
ケンくんにとっては、前に告白されてるから今更言われなくても知ってるってことなのかなぁ。
もうどうしたら良いんだろ。
雰囲気作りの色仕掛けは通用しないし、告白しても無反応。
後はナニすればいいの?
小細工は通用しないってことだよね?
だったら、押し倒してセックスすれば私の本気が伝わるの?
ケンくんをその気にさせるには、私の方から襲うしかないの?
必要ならするよ?
本当にしちゃうよ?
コンドーム職人の本領発揮しちゃうよ?
もうこうなったら、ヤケのヤンパチ!
雰囲気作りとか
このデートで進展出来んと、この先もっと苦労するの目に見えてるし!
◇
午後3時を過ぎたので、予定通り帰ることになった。
シャワーを浴びて着替えるのに、レンタルの更衣室が順番待ちで混雑してるのを良いことに「待つ時間勿体ないから一緒に浴びて着替えるよ」と迫る。
「え!?それはマズイって」
「恋人プレイなんだし!ヒナの要望には応えてくれるんでしょ!」
「お、おう・・・」
「ほら、空いたよ!ウチらの番だよ!」
宣言通り、シャワー付きのレンタル更衣室にケンくんの腕を掴んで一緒に入ると、躊躇することなくビキニを脱いで、全裸になってシャワーを浴び始めた。
こうなったら女の意地だし。
恥ずかしがってる場合じゃないし。
押し倒す気でガンガン攻めるし。
括ってた髪を下ろして、シャンプーで髪に付いた海水を洗い流して、トリートメントもじっくりと馴染ませる。
ケンくんは水着のまま私に背中を向けて固まってて、私の裸を見ようとしない。
「時間が勿体ないよ!ケンくんも脱いでシャワー一緒に浴びてよ!」
ボディーソープを泡立てて自分の体に塗りたくりながら、声を掛ける。
「ムムムムムリっす」
「もう!恋人プレイなんだから気にしないの!ちゃっちゃと体洗ってちゃっちゃと着替えるの!」
『恋人プレイ』という印籠を容赦なく振りかざす。
けど、ケンくんは動こうとしない。
全裸に泡だらけのままケンくんの腕掴んでシャワーの下まで引っ張るけど、それでもケンくんは眼を瞑ったまま動こうとしない。
埒が明かないから、私が洗ってあげよう。
「ほら!シャンプー付けるよ!頭さげて!」
掌にシャンプーを出して、全裸のままケンくんの坊主頭をワシャワシャと洗う。
でも、坊主だからすぐに洗い終わる。
「シャンプー流すよ!目つむっててね!」
シャンプーを洗い流してあげて、そのままボディーソプを体に塗りたくってあげる。
ケンくんは目をつむったまま、大人しく私にされるがまま。
だんだん楽しくなってきた。
自分が全裸なのを忘れて夢中になりはじめた。
ツバキと一緒にお風呂入った時、ツバキも調子にのって楽しそうに私の頭とか洗って、おっぱい触ったりしてたけど、今ならその気持ちが凄く分かる。
ケンくんの体をまさぐってると、胸筋とか首筋がピクピク反応するし、「んん♡」とか変な声漏らすのがたまらなく楽しい。
っていうか、水着着たまま、あそこが膨らんでるんですケド!?
これって、私の裸に興奮してアレが硬くなってるってことだヨネ!?
もしかして、今水着脱がせたら、サイズわかっちゃうんじゃない???
ケンくんの表情を確認すると、顔全体に力を込める様に目を瞑ったまま、唇がぴくぴく震えてる。
まだ私の企みには気付いていないね。
水着も無防備のまま。
ふふふ
チャーーンス!
目を瞑ったままのケンくんの正面で、向き合う様に片膝付いてしゃがんで、両手で目の前のオレンジ色の水着を掴んだ。
_________
いつもご贔屓にして頂きまして、ありがとうございます。
今日まで毎日休まず連載頑張って、なんとか100話達成出来ました。
近況ノートにて100話連載記念のコメントと少しだけ作者解説を掲載してますので、興味がありましたらご一読してみて下さい。
https://kakuyomu.jp/users/baneya0513/news/16818093075633558146
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