#101 職人の眼差し
「うお!?んななななにを!?」
「あれ?引っかかって下がんないよ?」
「やめて!脱がそうとしないでぇ!!!」
「ちょっと!大人しくしてよ!もうちょっとなんだから!!!」
「やめてやめて!六栗さん!脱がそうとするのやめて!」
「あ!コラ!逃げないの!」
今日はデートで海に遊びに来てて、今は帰るために更衣室で着替えようとシャワーを浴びていたところだった。
一緒にシャワーを浴びることだって異常事態だと言うのに、六栗は俺の前でビキニを脱ぎ捨て、見せつける様に全裸になってしまった。
勿論、俺は六栗の裸を見ない様に背中を向けて目を瞑った。
そしたら、俺の頭と体を洗い始めて、水着も脱がそうとしはじめた。
目を瞑ってたから隙だらけだった俺の水着は引っ張られ、お尻は半ケツ状態になっている。しかし辛うじておちんちんが引っかかってるから、まだ完全に脱がされていない。
そう、おちんちんが引っかかってしまう程、勃起してるんだよ!
あれ程桐山から口を酸っぱくして、『今日はエロイ目で見てはダメだ』と言われてたのに、全裸になっちゃうんだもん!
しかも、俺はしっかり目を瞑って円周率を唱えてエロイこと考えない様に必死だったのに、イヤらしい手つきで俺の体にボディソープ塗りたくってくるんだぜ?
そんなの無理じゃん!
体が反応するに決まってるじゃん!
なぜ、こんなことになったのだろうか。
今日は六栗の誕生日で、六栗からのリクエストで恋人プレイと称して恋人代理を務めていた。
桐山からも『六栗さんファースト』との指令があったから、俺は六栗の要望には応えようといつも以上に六栗の為に何でもする覚悟だった。
しかし、この六栗さんときたら、おっぱいにタッチさせようとするわ、キスしてくるわ、挙句『一緒にシャワー浴びるよ!』と言って俺の前で脱いじゃうわで、いつも以上に大胆で常軌を逸していた。
海の解放感なんだろうか。
それとも、誕生日で浮かれてるんだろうか。
もしかして、俺が幼馴染としての想いを熱く語ったから、それに触発されたのか。
ああ、あれか。
幼馴染の定番で、幼少期には異性なのを気にせずに一緒に風呂に入ったり一緒の布団で寝たりするエピソードが色々あるが、六栗は今になってそれを再現しようとしてるのか。
それにしても、海水浴場の更衣室のシャワーと言うのは、常識的に考えて如何な物だろうか。
脳内でそんな分析をしてる間に、水着が奪われてしまった。
シャワーの音に混ざって、フゥ~フゥ~と六栗の荒い呼吸が聞こえる。
目を瞑ってるのに、なんだか涙が滲んできた。
いやきっとコレは、シャワーの水だ。
「ほら、隠さないの!気を付け!」
六栗の叱責に、条件反射で気を付けした。
おちんちんが完全にコンニチハしてる状態だ。
「うう」
やっぱりコレは涙だ。
「すっご!?生でも見るとめっちゃリアル!すっご!!! でも、XLじゃなさそうだね。これならMからLかな? うん、Lなら大丈夫そうだね」
何の話か分からないが、六栗は俺のおちんちんを見て、何かを納得してるらしい。
どういうことなのか気になったので、薄目を開けて、六栗の様子を覗う。
相変わらず全裸のまま、腕組みするようにして右手を自分のアゴにあてて、妙に真剣な眼差しでウンウンと頷いてる。
表情だけ見るとシリアスなんだが、ロケットみたいなおっぱいが丸出しだ。
おっぱいどころか、綺麗に整えられた股間の毛も丸出しだ。
そして俺も、おちんちん丸出しだ。
しかも勃起してる。
「おっけー!もう良いよぉ。体拭いて服着ちゃお」
六栗はシャワーの水を止めてタオルを手に持つと、俺に背を向けて頭にタオルを被って髪を拭き始めた。
髪を拭く手が動くたびに丸出しのお尻が連動してぷるんぷるん揺れている。
童貞の俺には刺激が強すぎて、股間が痛いくらいにバッキバキだ。
だが、俺は飢えた獣じゃない。
童貞だが理性を持った男子高校生だ。
あの桐山の涙で濡れた魔性の誘惑にも耐えきった男だ。
こんなところで発情して六栗に襲い掛かっては、幼馴染の関係崩壊どころの騒ぎでは無くなることは分かり切っている。
そうなんだよ。
俺は、六栗の恋人にはなれないんだ。
代理止まりの幼馴染なんだ。
六栗だって、俺には襲われないと信用してるからこそ、ここまで大胆に振舞えるのだろう。
なら、六栗の信用を裏切る訳にはいかない。
それが俺の幼馴染としての矜持だ。
俺は濡れた体をロクに拭かずに急いで服を着ると、本当は直ぐにでも更衣室から出たかったが、更衣室の前には順番待ちの列があって、扉を開けると中が見えてしまうので、まだ六栗が着替え終わってなかったから出れず、仕方ないので更衣室の片隅で壁に向かって体操座りで六栗が着替え終えるのを大人しく待った。
六栗の着替えが終わって更衣室を出ると、股間のテントを帽子で隠しながら一目散にトイレに走った。
六栗を一人にしては、またナンパされるのでは無いかと一瞬頭を過ったが、もうそれどころじゃなかった。
しかし、海の家のこ汚いボロトイレで股間を静めて賢者タイムが訪れると、勃起したおちんちんを六栗にしっかり観察されたという現実が押し寄せて、ただただ虚しくなった。
俺がトイレから戻ると、六栗は階段状の堤防に腰を降ろして、自前の鏡に向かって一人でメイクを直していた。
「おまたせ・・・」
「お帰り~!スッキリした?」うふふ
「ええ、まあ、とりあえずは」
「あ、ケンくんにお願いがあるの!」
うう
また、無理難題じゃないかと身構えてしまう。
「あ、変な事じゃないよ。ヘアオイル塗るの手伝って欲しいの」
「俺、坊主だから手入れなんてしたことないし、やり方が分かんないよ」
「だいじょーぶだいじょーぶ、簡単だし。手、出して」
荷物を降ろして言われた通り右手を出すと、六栗はボトルから透明で粘り気のある液体を垂らした。
六栗も自分の右手に同じ様に液体を垂らすと、「こうやって両手に馴染ませてから、一本一本に馴染ませるつもりで丁寧にね」と実演して見せてくれた。
俺も真似するようにやってみる。
六栗の髪は、色素が薄く天然の茶髪で、触るとくりくりして柔らかくて、いつまでも触ってたくなるような手触りだった。
今の俺たちはハタから見たら、きっと仲睦まじい恋人同士に見えるだろう。
俺のイメージしてた恋人プレイってこういうのだったんだけどな・・・
「そうそう、そんな感じ。初めての割りには上手だよ」
「おう、俺もこれでいつ長髪になっても大丈夫だな」
「ケンくんの長髪とかウケる」ふふふ
髪の手入れが終わり、来るとき付けていたヘアピンを装着すると、今度は俺がプレゼントしたブレスレットを取り出して、「またケンくんが付けて」と言って渡してきたので、受け取って付けてあげた。
二度目だったので一度目よりもスムーズに付けることができた。
髪が整い、ブレスレットも身に着けた六栗は、満面の笑顔で「お家に帰ろっか!」と言って、俺の左腕に抱き着く様に腕を絡ませてきた。
俺の定義するデートとは、『二人で過ごす時間を楽しむお出かけ』だったハズだ。
今日のデートはどう評価するべきなんだろうか。
来るときは手を繋いでたのに帰りは腕に抱き着いて来ることに、それだけ六栗のデートに対する満足度が伺え、それを喜んでいいのか悲しむべきなのかよく分からず、左腕に抱き着く六栗の豊満な胸が遠慮なく当たるのを感じながらも、俺の心境は複雑なままだった。
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新作公開しました。
タイトルは『野球をするなら、こういう具合に』
https://kakuyomu.jp/works/16818093075655352243
コチラもどうぞよろしくお願いします。
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