第3話

夏休みが開けても、雅俊は理由をつけて一人で帰る。

それがもう当たり前となっていたため、俺もしつこく言うことはなかった。

そして帰り、気になった俺は倉庫に入った。

首のないマネキンが十九体。

つまり首のあるマネキンが残り一体となっていた。

俺はふと思った。

このマネキンの全ての首が亡くなったら、一体どうなるのだろうか。


数日後、倉庫に入ると全てのマネキンの首がなくなっていた。

俺はなぜかわからないが、背筋が寒くなった。


「おい、行くぞ」

朝、雅俊を迎えに行く。

しかし雅俊は出てこず、かわりに雅俊の母親が出てきた。

「うちの子、今日はちょっと調子が悪いみたいで」

「そうですか。じゃあお大事にと伝えてください」

一人で学校に向かう。


学校で先生に言われた。

「川田は休みか。じゃあおまえ、このプリントを届けてくれ」

俺はプリントを受け取った。雅俊に渡すための。


「ごめんください」

そう言うと母親が出てきた。

「雅俊君に渡すプリント。持ってきた……」

見れば母親は、真っ青な顔をしてぶるぶる震えている。

「どうしたんですか」

「雅俊が、雅俊が……」

俺は玄関を上がり、そのまま二階へ向かった。

そして雅俊の部屋に入った。

――!

雅俊は部屋の真ん中にいた。

そしてその周りを多くのマネキンの首がぐるりと囲んでいた。

そのマネキンの首は、全て雅俊の方を向いていた。

「やあ、来たね。喜んでよ。僕、こんなにいっぱい彼女ができたんだ」

何か聞こえる。

よく聞きよく見れば、雅俊のまわりにあるマネキンの首が一斉に「雅俊君、大好き」と何度もささやいていたのだ。



       終

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マネキンの首 ツヨシ @kunkunkonkon

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