月見れば

朝吹ひな

第1話 朝桐学園かるた部

「かるたには人を惹きつける不思議な魅力があると思うんです!!」

 高校一年の廊下でそう叫んだのは幼なじみの一人である清水奈央(なお)だった。

「そうは言っても私とさおりはかるた未経験なんだよ。かるたなんて無理だよ。」

 もう一人の幼なじみの大石さおりは部活なんてどうでもいいと言わんばかりの態度でスマホをいじっていた。

「ひな〜部活なんて適当でいいんだよ。かるた部はなおに付き合って入れば意外と楽しいかもよ。」

 さおりはそう私の名前を呼びまたスマホをいじり始めた。

「分かったよ。一回見学してから決めよ。」

 そう言うとなおの顔に笑顔が浮かんだ。

廊下に並んでいる部活紹介のブースを見てかるた部の活動場所に三人で向かった。

「ここか。和室で活動してるんだ。」

「早く!早く!入りましょう!」

さおりとなおが興味津々の様子だった。

「じゃあ、入ろっか。」

『こんにちはー』

三人で和室の入口まで行きそう叫んだ。

「あれ、誰も出てこないね。」

「がーん!!楽しみにしてたのにー」

そう2人が話しているのを見ていると、和室の中から足音がした。

「はーいはーい!」

はいを連呼しながら出てきたのは、ツインテールでピンク色のリボンを付けている人だった。

「見学の子?三人も来てくれて嬉しいー!」

とても美人な先輩で入ってと手招きされ、和室に入った。

「今ねちょうど部長が職員室に行ってていないから帰ってくるまで少しかかるかもー」

先輩はそう言って簡単な自己紹介をしてくれた。

「高校二年生の三上ゆきって言います!よろしくね」

私たちも挨拶しなくてはと思い、名前を言いかけた時だった。

和室の扉が開きポニーテールの凛々しい顔をした人が中に入ってきた。

「あ!かえちゃん、見学の子が三人も来てくれたんだー」

ゆき先輩がそう言うとかえ先輩という人が挨拶をしてくれた。

「花澤かえです。ゆきと同じ高校二年生。よろしくお願いします。」

少し怖そうな人だと自己紹介で感じた。

だが、すぐにかえ先輩は「ごめんね。顔怖いかな。いつも怒ってると勘違いされちゃうからさ。」

そう言ったかえ先輩に申し訳なさを感じ、三人は勢いよく首を振った。

するとかえ先輩は「ありがとう」と笑っていた。

「じゃあ、みんなの自己紹介も聞かせてー!」

場の空気を、変えるように明るくゆき先輩が私たち三人に話を振ってくれた。

「えっと、高校一年生の清水奈央です!かるたは小学校の頃からやっています!よろしくお願いします!」

「高一の大石さおりです。かるたは未経験です。よろしくお願いします」

「高校一年生の星川ひなです。私もかるた未経験です。よろしくお願いします」

三人の自己紹介が終わるとかえ先輩は簡単にルールを説明するねとルールが書いてある紙を持ってきてくれた。

「なおちゃんは経験者だから紙は必要ないかな?」そうゆき先輩が聞くと

「はい!大丈夫です!」と笑顔で答えていた。

私とさおりは紙を貰い、かえ先輩が大切な部分に線を引いて教えてくれた。

「活動は毎週水・木・金って三日あるから、もしかるた部に入る気があれば来週の水曜日に来てねー」

ゆき先輩が活動日や活動内容について教えてくれた。

その言葉を聞き、「絶対に水曜日行きます!」と

なおが返事をした。

まだ入部するかどうか三人で決めていないのに返事をしたので私は少し驚いたが、私も少しかるた部に興味が出てきたのでまぁ、いいかと何も言わなかった。

「じゃあ、そろそろ時間だから。見学はここで終わりかな。部員は高二が私とゆきの二人だけで少ないから、入ってくれたらすごく嬉しいかな」

かえ先輩がそう言い和室の扉を開けてくれたので私たちも立ち、和室をあとにした。

「すごく雰囲気のいい部活だよね!!二人ともーかるた部入ろうよー」

なおはそう言いながら自分のかばんを手に取り帰る準備を始めていた。

さおりもスマホをいじりながら「先輩も優しそうだったし入部してもいいんじゃない?」と私に向けて言った。

私は今まで全然かるたに興味は無かったが、なにかかるたに惹かれるものがあったと思う。

「楽しそうだし、かるた部に入部するのも良いかも」

それを聞いたなおとさおりが『素直じゃないなー!』と声を揃えて抱きついてきた。

かるたのクイーンになりたいとか強くなりたいとか今はそんな夢はないが三人で楽しくかるたをしたいと心から思った。

「ほら、もう帰ろ」そう二人に言い、楽しく話をしながら下校した。

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月見れば 朝吹ひな @hinao219

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