絶望シーンは作るもの!

夕日ゆうや

魔物も俺の作るもの!

 ライムのジュースにつけ込んだ鶏胸肉を軽くあぶる。

「さあ。ご飯だぞ」

 俺はその肉を魔物に分け与える。

 そろそろ頃合いか。

 あいつを落とすには十分な準備をしただろう。

 俺は慎重に檻を運び出す。その檻には魔物が収容されている。


 彼女が移動を始めている。

 ダンジョン内に入りすぐのセーフティエリアにいる。

 魔道具でそれを確認すると、俺は檻と一緒に走り出す。

「行け、ガーゴイル!」

 檻から放つと、ライムの匂いをたどり彼女に向かっていく魔物ガーゴイル

 俺はその様子を遠巻きに眺める。

 ようやく落ち着いたと思っていた少女が、ガーゴイルの軍勢に襲われている。

 少女は剣を必死で振るうが、その攻撃もむなしくガーゴイルの鋭利な爪に負けてしまう。

 剣は折れ、衣服には傷跡が残る。

「いくか」

「待って」

 フェアリーが隣で待ったをかける。

 少女は背中から短剣を取り出すと、一匹のガーゴイルを切り裂く。

 だが、まだガーゴイルは二匹いる。

 血のついた短剣は刃こぼれをし、まともにガーゴイルを引き裂けないでいる。

「今度こそ、行くぞ」

「いいわ」

 フェアリーは小さな声で呟く。

 ガーゴイルに襲われ、絶体絶命な少女。

 その間に身体を滑り込ませ、剣でその鋭い爪を弾き返す俺。

 すぐに剣を返し、ガーゴイルを切り裂く。

 そして魔法を無詠唱で発動し、もう一匹のガーゴイルを討ち滅ぼす。

「大丈夫か? アイネ」

「は、はい。大丈夫です」

 戸惑いながらも、熱っぽい視線を送ってくる少女であるアイネ。

 やったぜ。

 予言書通りに、俺は七つの種族の長を恋人にする。

 そしてこの氷河期を乗り越えてみせるさ。

 そのための第一歩。

 獣人のアイネを仲間にした――。

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絶望シーンは作るもの! 夕日ゆうや @PT03wing

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