僕の平凡な休日
アオヤ
第1話
「ほら、洗濯機止まったよ!」
日曜日がはじまったばかりなのに……
のんびりとしたい午前中、我が家のリビングに鬼嫁の僕を急かす声が響き渡る。
それは僕に『早く洗濯物を干してこい』という指令だ。
鬼嫁はどうしているのか……?
もちろん我が家で一番偉い人だから、次の指令をコタツでゲームしながら考えてるわけさ。
僕は二階の中学二年の娘の部屋を横切りベランダへ出た。
ベランダから眺める部屋の中にはもう10時になるのにまだ眠っている娘が居る。
今日も外は雲一つない晴れ渡る空で冷たい風が吹き荒れている。
僕の耳たぶは冷たくカサカサで、長い時間ここに居ると凍えてしまいそうな寒さだ。
洗濯物も乾く前に凍る事はないのだろうか?
僕はそんな事を考えながら竿に次々に洗濯物を掛けていった。
大きなタオルを竿に掛けていると、目の前の道路をお爺さんが脚を引きずりながら歩いている姿が目にはいった。
お爺さんは我が家の斜め前の家に住んでいて、半年くらい前に脳梗塞で病院に入院し今はリハビリ中という話だ。
こんな寒い朝なのに散歩から帰って来たところなんだろうか?
一歩一歩右足を出しては左足を引き付ける様な歩き方で自宅に向かって行く。
お爺さんの足下にはなんだか黒いモノが落ちていた。
その黒いモノはお爺さんが2〜3歩位歩いたらトコトコトコとまたお爺さんの足下にくっついた。
よく見ると黒いモノは黒猫だった。
別にリードで繋がれている訳でも無いのにお爺さんが歩を進める度に追いかけて足下にくっついて行く。
お爺さんの足下に着く度に下からお爺さんを見上げ「ニャ〜」と鳴いている。
そのニャ〜は『頑張れジイちゃん。もう少しだ』とお爺さんを励ましているのだろうか?
まるでお爺さんと一緒に散歩しながら見守っているかの様だ。
お爺さんが自分の家に到着し玄関の中に入って行くのを猫は見送った。
そして玄関先に置いてある餌を食べ、今日の仕事をやり遂げたと満足した様な顔をして去って行った。
あれは本当に猫だつたのか?
洗濯物を干し終えた僕は不思議な光景を目のあたりにして暫く呆然としていた。
だが身体が冷え切ってしまい部屋の中に逃げ込んだ。
部屋では娘がまだぐっすりと眠っている。
「いつまでも寝ていると日曜日が終わっちゃうぞ。そろそろ起きなさい。起きないとパフパフしちゃうからね!」
娘は僕の言葉など聞こえなかったかの様に、僕に背を向ける様に寝返りをうった。
僕はそんな娘を見てふっとため息をつく。
そしてベッドの隅に腰を下ろし洗濯物の干してある外を眺めた。
いきなり僕の後ろで娘がガバッと起き上がった。
そして僕を後ろから羽交い締めした。
「そんなにパフパフが好きなら私がパフパフしてやる」
僕は娘に後ろから羽交い締めされパフパフされた。
「(´;ω;`)ウッ… 止めてくれ!」
思わず変な声が出た。
自分の娘に後ろから羽交い締めされパフパフされてるオヤジって、他人からはどんな風に映るのだろうか?
こんな日常ってアリなんだろうか?
僕の平凡な休日 アオヤ @aoyashou
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