10年振りの起きた吸血鬼。一族の再建の為に頑張る

@twweqte2

第1話寝過ごした

俺は吸血鬼だ。

なのに陽の光が、肌を照らしている。

陽の光で目覚めるなんて吸血鬼にとって最悪な目覚めだ。

いや待て?

なんで陽の光を感じるんだ?

俺は、しっかりと棺の中で眠りについたはずだ。

穏やかな風と共に、潮の匂いを感じる。

海?

俺の領地は、海に囲まれている。

毎日のように潮の匂いをかんじてきたが、今感じているのは、それよりももっと強い匂いだ。

陽の光に、潮の香り。

少なくとも海の近くにいるみたいだ。

何故?

寝る前にみた最後の記憶は、いつも通り棺の中で寝たはずだが。

その疑問を解決する為に、長らく開けてなかった目を開けていく。

最初に見えたのは、雲ひとつない青い空。

そして、こちらを見下している髭面の男達数名。

この髭が伸びてしまってる感じは、長期間髭を切れない環境にいるもの。

つまりこいつらは、船員か?

髭面の男達もこちらに気付いたようだ。

「おい!棺の中のこいつ生きてるぞ!!」

酷く驚いた声が、周りからしている。

お?

棺には入ってるのか。

寝ぼけて棺から出てしまって大冒険したわけではなく、ちゃんと棺にいたままらしい。

じゃあ俺の城から棺だけ外に出てしまったのか?

棺の周りにいる髭面の声を聞いたからか、どんどんと上から人が降りてくるのが、分かる。

「そんな馬鹿な。だってこの棺は、海中で見つけたんだぞ。最初から目が開いてただけじゃないか」

「本当だって!目閉じていたのにパチって開いたんだよ」

棺の周りにいた男達と、新たに来た立派な帽子を被った男が言い争いをしている。

周りがボロい服を身につけているに対して、立派な帽子を被った男は、身なりもしっかりとしている。

なんか面倒な事になってきたな。

「おい。ここはどこだ」

威厳たっぷりになるべく舐めならないように言ってみた。

こいつらみたな奴らには、舐めれた時点で終わりだ。

「ま、まじかよ。これってなんなんだよ」

「旦那。これがあんたが探していた宝箱か?」

「そんなわけねぇだろ!」

おーい。

俺の威厳に満ちた声でした質問は、無かった事にされた感じかな。

髭面達と身なりのいい男は、殴り合いに発展しそうなくらいにヒートアップしている。

こっちに意識を向かせるには、少し乱暴するしかないかな。

お腹も空いてるし、丁度いいかな。

「ちょっといいかな。俺は起きたばかりで、お腹空いてるんだ」

自分は好き嫌いのない方だが、食の見た目はこだわりを持っている。

なので髭面の男達よりも立派な帽子の男を選ぶことにした。

とりあえず棺から素早く立ち上がった。

多分周りの男達は、反応することもできないだろう。

そして、そのまま立派な帽子の男の首をリンゴをかじるように噛んだ。


殺さなように手加減をしているが、血は噴水のように出てしまった。

しまった。

まだ体が本調子じゃなくて、手加減をする事が出来なかった。

出来るだけ食べ物を粗末にしたくないし、なんとかこの噴水のように出ている血を飲めないか?

なんとか自分の口に納めようと口を大きく開ける。

間抜けな顔になっていると思うが、大切な血。

一滴も無駄にはしない。

そんな努力のおかげで、口の中に血が流れ込んでいく。

生き返る〜。

やっぱり朝の一杯がないと始まらないな。

朝食を楽しんでいる中、また周りの男達は何が起きたか気づいてないようだった。

中には血がかかっている奴もいるのに。

まぁ当然か。

周りから見れば風が吹いたと思うくらいの疾風。

それで気づいたら人が殺されてるんだからな。

「うわぁぁぁ!!!」

しばらく朝食を楽しんでいると、止まっていた時間が動いたように叫び声が聞こえた。

おー。

やっぱり血がかかっている奴が一番最初に気づくか。

恐怖が伝染するように他の奴らも叫んだり、

逃げたり様々な反応を見せてくれた。

嬉しい限りだが、こっちに注目してくれなくては困る。

「少しこちらを見てもらえるかな」

少々勿体無いが、しょうがない。

半分以上血を吸われて青白くなってしまった男を周りの男達に向けて投げ捨てた。

大きな音共にトマトのように木の床に、ビタンと落ちる。

男達は、立派な帽子を被った男が飛んできた方を見る。

屈強な体が小さく震えているように見える。

今度はちゃんとこちらを見てくれたようだ。

「聞きたい事が沢山あるんだが、最初は今いる場所を教えてもらってもいいか」

もし、ここが俺の領地からそんなに離れてない場所なら、俺の城が目印になって帰る事が出来る。

だが、潮の匂いが強いここはどこを見ても、何もなくただ同じ風景がいつまでも続いている。

見知らぬ場所だ。

丁寧に尋ねた筈だが、返事が返ってこない。

「聞こえてないのか?なら、また食事の再開しようか」

ちょうど手の届く範囲に恐怖で固まった奴がいる。

顔に血がべっとりとついた男は、目に焦点があっておらず、逃げようとしない。

「トライアングルだ!ここは、トライアングルって呼ばれる場所だ!」

震える声で、止めに入る声が聞こえた。

仲間がこれ以上殺されるのを見て見ぬふりは出来なかったのか、他の連中より少しだけマシな格好をしている男が言った。

立派な帽子の男と比べると貧相な格好だが、それでもほぼ半裸に近い男達と比べれば幾分マシだろう。

「トライアングル?聞いた事もないな。なんか現在地がわかるものは無いのか?」

トライアングルなんて呼ばれている海なんて聞いた事がない。

すると、何かが足元に転がってきた。

何これ。

鉄製の腕輪のようなものか?

さっきのちゃんと服着てる男がこちらに転がしてきたみたいだ。

「なんだこれは?」

「魔導具を知らないのか?腕に付けるんだよ」

こんな小さいのが、魔導具?

魔力が付与された物を指している。

だが、俺が知ってる魔導具と言われた物は、もっとデカかった記憶がある。

ちょっとした馬小屋ぐらいデカかった。

しかも、その大きさでとんでもなく効果が小さかった。

結局自分でやった方がいいものがほとんどだったし、貴族のお遊びみたいな品物だった筈。

それがこんなに小さくなっている。

改めて魔導具と言われた腕輪を見る。

うーむ。

微かに魔力を感じる。

これを腕に付ければ現在地が分かるのか?

まぁとりあえず付けてみるか。

触れると腕輪の大きさが少し変わった。

なんと俺の腕にちゃんとはまるように大きさを変えたのか。

すごいな。

触れた相手の情報を読み取って大きさを変えているのか。

見た事ない技術に驚きながら、腕輪を腕にはめた。

すると、一緒腕が光り半透明の板が目の前に現れた。

その半透明の板に書いてあったものには、見覚えがある。

「これは地図か?」

「そうだ。ここら辺の地図は、その魔導具で見れるんだ」

半透明の板に書かれてあったのは、シマトリネ帝国と周辺の海域だった。

シマトリネ帝国。

太陽が沈む事が無いと言われている帝国。

この帝国と吸血鬼は親密な関係にあり、多くの吸血鬼が帝国の庇護を受けている。

当然帝国にも目的があった。

現在の皇帝は、不老不死に大変興味を示しており吸血鬼達を帝国に集めていた。

集めた吸血鬼の血や肉を毎日食べる事で、不老不死に慣れると信じていたようだ。

もっとも吸血鬼が、噛んでやれば永遠とは言わなくても他の人間よりは長く生きられる。

そう言ったが、皇帝が求めたのは完全な不老不死。

死の恐怖に狂った皇帝は、偏食にハマってしまったわけだ。

おかげで、大量の吸血鬼がいる国になってしまった訳だが。

そんな帝国の海域にいるかんじなのか。

大陸の方から海域に目を移す。

広い海に赤いポイントがあり、それがこの位置を表しているのはなんとなく分かった。

いや、待て?

「この位置。シマトリネ帝国とこの場所との距離を見る感じ、俺の領地の小島と対して離れてないぞ」

まったく見慣れない海は、俺が知っている筈の場所だ。

潮の匂い、周りを見渡しても何もない海。

「本当にこの地図のような板は、あっているのか」

「合ってるに決まってるだろ。俺達は、この地図を頼りにこの場所まで来たんだ」

奴の顔からして、嘘では無いようだ。

じゃあ何故俺の領地は、何処にも無いんだ。

ふっと少し気になった事があった。

「お前ら俺が入った棺を何処で見つけた?いや、そもそもなんでこの船に乗せられてるんだ?」

「そ、それは。海に沈んだ城から」

「海に城が沈んでいるだと!?」

飛びかかるように男に詰め寄った。

この位置で、沈んだ城。

絶対俺の城だ。

なんで沈んでるんだよ?

突然大声を上げて詰め寄ってしまった為、男はヒィィと言って倒れてしまった。

さっきまで普通に話しているように見えたが、この様子だと我慢していただけみたいだな。

「あんたがあの城亡霊なのか、それとも関係ない化け物なのかは知らねぇ!ただ、勝手にあの城からあんたの入った棺を盗んだのは、謝る!だから、見逃してくれ!!」

「盗んだ?お前ら地図を見てここに来たって言っていたよな。お前らなんの目的でここに来たんだ。あと、俺は化け物じゃない」

「海賊」

なるほど。

こいつらは、その海に沈んだ俺の城から盗みに来たんだな。

「勝手に俺の城?を荒らしたのは許せないが、とりあえずお前らが海から俺を引っ張り上げたって事でいいのか」

「あぁ。あれを使って、引き上げたんだ」

男が指をさした方を見ると、亀のような蟹のような生き物が、寝ていた。

なんだこの生き物。

色々気になる事はあるが、一番はとにかくゴツい。

亀の甲羅に固い蟹の鎧で、余す事なく体を覆っており鉄壁と言って差し支えない感じだ。

「なんなんだ?あれは」

「正式名称は、忘れたけど俺たちはツリアゲ君って呼んでる。あいつに海の中を探索させて、目星しいものがあったら掴んでくれるって訳だ」

ある程度指示を出せるのか。

城を探索させて、その中から俺が眠ていた棺を持ってきてしまった訳か。

確かに、このツリアゲ君とか呼ばれてる生き物腕も普通の亀より長くなっているな。

「じゃあ他の物も持ってこれないのか?色々城から引き上げたい物もある」

「無理だ。さっきあんたが、ダメにした船長

しか指示を出せない」

まじかー。

他の奴を食べておけばよかった。

「じゃあこの城が、いつから海の中にあったか知っている者はいるのか?10年か?それとも、100年か?」

俺から問いかけれた男達は、ザワザワと会話し始める。

ちゃんと服着ている男も、困った顔で周りと話している。

すぐに答えらないくらい前って言うのは、確実か。

溜め息が思わず出てしまう。

吸血鬼は、人の何十倍も生きる。

10年100年眠っていて特に問題はない。

だが、地位や名誉などには寿命がある。

どんだけ凄い伝説を持っていても、人々から忘れられてしまえば、何の意味ももたなくなる。

だからこそ、この100年間俺は、積極的に動き続け、帝国との太い繋がりを手に入れた。

それが、俺が眠っていた時間次第では、全部意味がないものになっている可能性がある。

苛立ちが顔に出ていたのか、恐るようにちゃんと服を着ている男が、近づいてきた。

「確か10年くらい前だぞ」

全然眠てなかった。

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