第24話 エピローグ?

彼女との初めての登校を果たした月島は、いつも通り教室で受け、4時間目まであっという間に時間が過ぎた。


お昼休みを知らせるチャイムが鳴ると、教室がいつものように騒がしくなっていく。そんな教室内を他所に月島は、カバンからお弁当箱を取り出すと、少し急いだ様子で机に突っ伏していた佐藤に声を掛ける。


「今日、ちょっと用事があるから、ごめん」


月島はそう言うと、少し急ぎ足気味に教室内の人混みをかいくぐっていく。


「ん・・・、はぁ~」


佐藤は大あくびをしながら目をこすり、教室内を見渡す。


「あれ・・・?月島はどこ行った・・・?」


佐藤は、まだ眠そうな様子で一人、声を漏らした。


そんな佐藤の一人事を真梨香は仕方がなく拾った。


「光なら用事があるって言って、今出ていったけど」


「まじか~」


佐藤は残念そうに項垂れながらも、瞬時に運動部の集まりに絡んでいった。


◇◇◇


月島は、息を少しばかり乱し、屋上へ上がる。さきほど降っていた雨は見事なほどに上がり、むしろ今は、カラカラしているくらいだ。

日は月島の顔を照らし、月島はとっさに視線を下げた。


「眩しい・・・」


だんだん慣れてきた目をこすりながら、視線を上げると、空を見上げる後ろ姿の女の子がいた。さらさらとした髪をなびかせる彼女は、月島に存在に気づき後ろを振り返る。なんだか、既視感を感じる。


月島は、彼女に声をかける。


「お待たせ、待った?」


「ううん。そんなことないよ」


日向は少し照れ臭そうに微笑んだ。


二人は木陰ができていた端のスペースに座り、お弁当を広げた。


「おお、美味しそう」


月島は、日向のお弁当を覗き、そう呟いた。

日向は、月島の様子を見て、玉子焼きに箸をつつく。


「食べる?」


彼女はそう言うと、自分の箸を月島の口に近づけた。

月島は、日向の突然の提案に動揺し、顔を逸らした。


「い、いいよ。別に・・・」


「ほらほら、遠慮しないで・・・」


そう言う日向の表情を見て、仕方なそうにため息をつく。月島は箸に口に着かないように玉子焼きを食す。


「美味しい...?」


日向は、心配そうに月島を見つめる。


「うん。美味しいよ。」


月島がそう答えると、日向は嬉しそうに微笑んだ。


◇◇◇


「はぁ~、お腹いっぱい」


日向のお弁当の三割くらいを追加で食べた月島は、少し辛そうに壁に体を預けた。


「そうだね~」


秋とはいえ、日中はまだぬくぬくと暖かく、二人に眠気を誘う。


月島はそんな眠気を取り払うように軽く腕を伸ばしてから、日向に声をかける。


「今日は、久しぶりの登校だったから疲れたんじゃない」


「うん。少し疲れたかも。でも、まだ保健室登校だけどね」


「いいんだよ。マイペースで」


そういう月島に対して、日向はどこかもどかしそうな様子だ。


「そう言えば、今日は帰りとかどっか寄っていく?」


「ごめん。今日バイトがあるんだ」


「へぇ~、バイト始めたんだ」


「ある程度勉強も固まって来たし、できれば学費は自分で稼げればなぁと思ってね」


日向は、月島の話を聞いて、何かを決心したように立ち上がった。


「私、教室にいく!!」





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僕は恋ができない。 佐藤太郎 @taro_sato

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