修学旅行のような実習生活 前編
『ギンブレット グレイヴェルズ シラー
2021
トリニティ ヒル 』
NZ北島ホークスベイ地方に30年程前に設立されたワイナリー、「量より質」をポリシーに、低収量で高いクオリティとエレガンスを追求してワインを造り出す。
世界的にも良質なフルボディタイプの赤ワインが造り出されるギンブレット・グレイヴェルズという地区に、早くからその可能性を見出した先見性もある。
ギンブレット・グレイヴェルズという土地については後半に語ることにして、特に成功を収めている品種の1つ、シラーを開けてみよう。
インクのように濃厚な色合い、見た目からどっしりとした質量を感じる。
香りにはカシスのような黒い果実、ベリー系の甘さもあって、シラー独特のスパイス感もある。
味わいは意外にもなめらかなタンニンでスッと入ってくるが、芳醇な果実の味、やはりスパイシーな後味である。
どっしりと落ち着いた、どこか畏まってしまうところがある。
『米の娘ぶたのネックステーキとチップス』
米の娘ぶたは、山形県北東部金山町で育成された豚である。
主に米と乳製品の固形分と分離された液体であるホエーを餌とし、食肉関連のコンテストでグランドチャンピオンになったこともあるブランド豚だそうだ。
今回はそのネック、希少部位の首にあるトントロを塊でステーキにしてみた。
シンプルに塩こしょうとローズマリーで焼く。
その間に、付け合せでNZらしくチップス(イギリス連邦であるNZではフライドポテトをこう呼ぶ)を揚げる。
ネックステーキの中まで火が通っていることを確認したら、完成だ。
では食べよう。
実にジューシーな脂が溢れ出てくるが、思ったよりも歯ごたえがあり、癖がなく食べやすい。
とろける霜降りよりも肉を食べている実感があって好印象だ。
さて、ワインと合わせよう。
たっぷりの脂を持つトントロであるが、味わいに癖が無いためタンニンのなめらかなこのシラーとよく合う。
単体だとどっしりとした飲み疲れしそうなタイプだと思えたこのワインも、どこか打ち解けたように飲みやすくなった。
シンプルな味付けにしたことも良かったのか、シラー独特のスパイシーさも肉の旨味を増幅させてくれるようだ。
ワインと料理はどちらも単体だと一側面の味わいしか見えてこない。
だが、お互いに組み合わせることで新たな一面が見えてくる。
人もまた、誰かと出会い、知り合う。
それだけでも自分の新たな一面を発見することもある。
ちょっと遠くに足を伸ばすだけでもまた一つ違ったモノの見方ができるようになる。
旅はいつだって探求の楽しさがあるのだ。
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