第5話


 翌日、学校の休み時間中。

 宮田がドラムをやってくれる子を紹介してくれるという事で、彼女の教室に向かった。

 教室に着き、宮田は教室の中へ入って行く。


 僕は教室の入り口のところで立ち止まっている。

 何か見えない壁でもあるかの様な感覚は何なのだろう?別に休み時間中なので誰に禁止されている訳でもないのに、自分の教室で無いと独特の入りづらさを感じる。


 そういえば、池上く……池上もこのクラスだったか。


 「何、ボケーっとしてんの?この子がドラムをやってくれる、岡村おかむら 真衣まいちゃん」


 そんな事を考えていると、宮田が岡村さんを連れて戻ってきていた。

 池上に聞いた情報の先入観で、もっと怖そうな風体の人を想像していたが、見た目はキレイ系の女子って感じだ。


 「よろしくお願いします。保科 守です」


 僕は頭を下げて挨拶する。


 「よろしく。で、どんな曲をやるの?」

 「えーっと」


 岡村さんにそう言われて、僕は用意したSDカードを渡す。


 「その中に入ってる二曲なんだけど……SDで大丈夫?」

 「うん大丈夫。ありがと」


 岡村さんは笑顔で受け取った。


 「あっ、そうだ、ギターって池上が弾くの?」

 「その予定だけど、誰から聞いたの?」

 「本人からだけど……」


 岡村さんは一瞬真剣な表情をして、宮田の方に視線を向けた気がしたが、その後――


 「まぁいいや、あたしの考え過ぎだと思うし……。曲聴いてみて、どうしても無理そうだったら連絡するね」

 「うん、ありがとう」


 そう言って僕と宮田はその場を後にした。



  ◇  ◇  ◇



 自分達の教室に戻る途中。

 僕はちょっと気になった事を、無粋かとも感じながらも宮田に訊いてみる事にした。


 「岡村さんと池上って何かあるのかな?仲悪いとか?」


 宮田は少し考えて答える。


 「そういうんじゃないと思うよ。真衣ちゃん自身の問題じゃないと思う……。よくは知らないけどね」

 「いや、その言い方って絶対何か知ってるじゃん」

 「詮索しないほうがいい事ってのもあるんだよ?」


 宮田は僕に顔を合わせずに言った。

 僕が気になった岡村さんの態度というのは……。いや、どちらにしても僕には関係ない事か。


 「……そうですかぁ」


 その話はそのくらいにしておこうと思った。

 ヘタに他人のプライベートに首を突っ込むとろくな事はない。



  ◇  ◇  ◇



 その日の夜。

 宮田から連絡があり、岡村さんがドラムを叩けそうだという事を伝えられた。

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