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あれから1週間が過ぎていた。



何もする気がしない。

パソコンをオンにすることも、日記を書くことも、メールを開くこともできないままだ。



ハトとの会話も途切れたまま。



【僕はもう誰かを好きになることも、誰かを愛することができない…】


ハトが言い放ったこの言葉が気にはなっていたけれど、今の私には、どうすることもできなかった。



パソコンの前に座らせてとお願いしない私を見て、母は「もう飽きてしまったの?」と少し呆れたように尋ねたけれど、返事をする気力もなかった。




ハトは心配してるだろうか?


私の告白の結果を知りたいだろうか?



そんなことをぼーっと考えながら、時間は流れていった。



ハトに 電話をかけたい、話を聞いてもらいたい…。

だけど、番号を知らない。


そっか、アドレスしか知らないや。ハトのこと、何も知らないや。


そう思うと、涙がこぼれていた。




メールBOXを見ると、

いくつかのメールがあって、やっぱりハトのメールが目に付いた。



「ハト。」

静かに、名前を呼んだ。



不自由に動く右手は、しっかりとマウスを握り、ハトのメールを開いていた。



【ちぃ。元気ですか。

体調壊してない?そのことだけが気がかりです。ちぃからのメールがないので、寂しいけど、メールがないってことは、うまくいって、彼との時間を大切にしてるのかなと思っています。


元気でね。ちぃと友達になれたこと、嬉しかったです、ありがとう。】



ハト、本当に真っ直ぐな人だね。



違うんだ、ダメだったんだ。



文字でハトに、そう告げることが精一杯だった。




私の想いを告げた彼には、彼女がいた。

だから私の思いは届かなかった。



でも、ちぃの気持ちは嬉しい、ありがとう。これからも、友達でいたいと言ってくれた。




【よく頑張った、ちぃ頑張ったね。】

ハトは、こう綴っていた。




【ちぃの気持ちは無駄じゃないからね、これから先、この頑張りは必ずどこかで叶うから、そう考えた方が前向きになれるよ】



『うん、ありがとう。

まだ辛くて、日記を書く力がないんだ』



【ゆっくりでいいよ、今は休んで。

だけど、ちぃの日記を楽しみにしている人もいるから、僕もその中の1人だから、日記を書くことを続けていてほしい】




その日、私は久しぶりに外へ出た。

2月ももう終わりを告げようとしていた。




電動車椅子をゆっくり走らせ、いつもの公園へ向かった。


まだまだ風は冷たかったけれど、空を見上げると、太陽が柔らかく笑っていた。



(ハトもこんな風に笑うのかな)



そう思った瞬間、私の中から温かい涙が溢れていた。


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恋文~想いを綴った日々~ ちぃ @mahue

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