episode16 世界で1番素敵な女性

瑠々花、私が大学時代しつこくて嫌だった後輩


距離感おかしくて

なんだこいつって思っていた後輩


けど彼女は本気で私のことを好きだった



私がひどい振り方をしたせいで

自殺未遂をして心を閉ざした


あの時ちゃんと話し合って、私が逃げないで

向き合っていたら結末は変わっていたかもしれない


あの時は本気で気持ち悪くて逃げてしまった


あんなひどい振り方をしたのに未だに私のことを素敵な女性だって思ってくれているんだ



なんか全て思い出した気がする


これは私が真緒を好きにならなきゃ起こらない出来事だったんだ



私はやっと人を本気で好きになれたことに少しづつ誇りを持てるようになった


けどもう瑠々花と同じく、恋愛はしないだろう


真緒以上に素敵な人が現れることなんてない


もう真緒という一人の人に出会って好きになって

一生分の本気の恋をしたから



初めて本気で命をかけて好きな人を想えたから


人生で初めての本気の恋だった



「俺も、一生分の恋したかな

汲田さんに」



『私も、真緒に一生分の恋をしたかな』



「汲田さん、さっき話していた結婚式や見送り、行かないんですよね⋯?

行かなくていいんですか?」



『うん。後悔はしない

どっちにも行かない。

彼女もその方が救われると思うし

私の顔なんてもう見たくないでしょ?


私は真緒のために姿を見せないし話しかけない


それでいいの。


それがいいの。


俊哉って名前が嫌い。

真緒が結婚してから大嫌いな名前になった


私の好きな人を奪った恋敵だから。


もう俊哉って名前を聞きたくない


二度とね』



「俺も小森さんに負けたんですね⋯笑

汲田さんが好きだったのに、その汲田さんが小森さんのことを好きだったのなら俺は完敗です


俺も茜って名前を聞きたくない


今はね⋯笑」



『おい!笑』



「ちょっと本心です笑」


『真緒も旦那さんの転勤に着いていくのに台湾行っちゃうんだよね。

もう話せなくてもいいや。


真緒、“地元以外の研修や転勤は嫌”って言うくらい地元大好きだから


そんな真緒があっさりと台湾に行くってことは



確実に私に会いたくないから


でしょ?


それなら会わない方がいい

姿を見せない方がいい。

彼女の幸せのために

私は一生見えない存在でも良いの!』


「本当に小森さんのことを想っているんですね」



『⋯まだほんのりとね。

最近思うんだ。


こんな失恋に縋ってたら女の価値が下がる

ってね!


もう真緒のことなんてだいぶどうでも良くなってきたの


そして⋯

真緒に少しだけでも“あんなこと言って悪かったな”って後悔させてやりたいの



そのために少しづつまた仕事を増やしてる』



「汲田さんは強いですね」


『こんなくだらない失恋に縋ってないで、上に上がらなきゃ。立ち止まっていられない。

気持ち悪いとか迷惑とか言ってしまったな。って後悔させてやりたいの


泣いてばかりいられないってね!


真緒、たくさん幸せになれ!!!

ってね。


私も真緒に振られたからもう何も人生で守るものや大切なものが無くなっちゃった


だからもう人生どーなってもいいや。



真緒に振られて人生の色が無くなったけど



自分で人生の色を作れないと意味が無いって気が付いたし



自分のパレットで、自分の人生の絵の具を作れるようになるよ。』



「俺もです。汲田さん、カッコイイです 」



『ありがとう。

真緒、幸せになれよ』



「汲田さんも、自分の手で幸せになってください」


『ありがとう!

でもね、真緒が結婚式をあげるって話を聞いたのにちょっと心が痛くなっちゃった。

もうこんな恋に取り繕ったってくだらないのに』


「まだ失恋からは少し立ち直れてない様子ですかね⋯?」


『かもしれない。

もう私は恋しないって決めたから

もう一生分の恋をしたから』


「⋯⋯⋯⋯⋯俺ともですか?」



『⋯⋯⋯⋯うん』



「⋯⋯⋯汲田さんの本音聞けてよかったです。

俺も失恋したんだなぁってやっと自覚出来ました。

俺も汲田さんみたいな状況だったんです、汲田さんが小森さんのことを好きと分かって


俺は選ばれなかった

失恋した

汲田さんとの未来まで想像していた


俺は汲田さんに選ばれなかった

という事実から目を背けたくて


失恋したという事実から逃げていました。


最初は復讐のつもりが、本気で失恋する程惹かれていた。俺は大バカものですね」


『そんな事ない!!

本気で恋する人にバカも何も無い!

私がやった事は永遠に許されないことが沢山ある。

真緒がいない所で嫉妬で罵ったりとか、瑠々花の気持ちに向き合わないで気持ち悪いって罵倒したりとか⋯

たくさんある。


真緒のウェイティングドレス姿は私が見る権利なんてひとつもない。』


「そう思うなら⋯そうなのかも知れませんね。

ちょっと厳しいこと言っちゃいました」


『いいの。自分の戒め。』



近藤くんと屋上の腰をかけられる場所で2人で話していた


こんなに堂々と話したのは初めて


近藤くんの本当の姿も見れた気がする



私の贖罪を償っていこう


真緒の結婚式という言葉で少し気持ちが荒ぶってしまった


けど彼女は幸せになるべきだ


私は幸せにならなくていい

私の幸せを彼女に全てあげる


彼女が幸せになってくれるなら、私は一生不幸でも良いんだ


最悪、彼女の為なら悪魔や鬼になってもいい


そう思えるようになった


それが本当の愛なんだと知った


本当の愛を知ったから、もう恋なんて要らない



真緒に五回も失恋したかもしれない


一回目は好きな人と付き合ったという報告から

二回目はその人と結婚するという話から

三回目は想いだけを伝えた後から

四回目は私とすれ違っても何も言わず話さずから


そして五回目が

結婚式をするという話、台湾に行くという話を聞いてから



私が出る幕なんて本当になかったのだ

私は彼女の人生に必要なかったのだ


むしろいらない存在であった


『さて、そろそろ戻ろう、休憩終わるよ』


「はい、ありがとうございます。戻りましょう」


お互いまた研修に戻る

明日から先輩と後輩の関係


笹浪さんの本当の姿を知れた

私が過去に犯した罪を思い出せてよかった


本当の愛を知れてよかった


私は失恋ごときで立ち止まっていられない

















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失恋から立ち直る5つの方法 @susu333

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