狂気の伝染

しき

第1話

この物語はフィクションです。



陶器の緩衝材として使われていた紙を広げて男はその場に立ち尽くしてしまった。

その紙には絵が描かれていた。そしてそれはおそらくは江戸時代の有名な絵師が描いた貴重な作品であった。

日本は開国と共に西洋の文化を必死に取り入れようとしたあまり、このような貴重な独自の芸術作品をおざなりにしてしまったと聞いたことはあったが


「ここまで存外に扱われるとは作者も気の毒に…」


男はアメリカの売れない小説家であった。分野は違えど作品に対する冒涜に異国の絵師に同情した。

それほどまでにその絵は素晴らしい出来であった。しかし、同時に見れば見るほど気味の悪いな絵でもあった。それは気色の悪い色をした巨大な蛸が人を襲い絡みついている恐ろしい絵であり、その蛸の触手の不気味な動き、吐き気をもよおす生臭さまで伝わってくるようだった。

男は海産物が大の苦手であった為、尚の事その絵に恐怖を感じてしまった。

やがて男は狂気に飲まれて正常な判断が出来なくてなってしまい。この絵の巨大な蛸は本当に存在していると思い始める様になった。

絵に記載された異国の字がこの世界の言語ではないようにも思い始めた。


「あぁ、これはきっと太古の昔、宇宙からこの地球に降り立った邪神に違いない」


男はこの考えを小説にした。

そして何年の時が経って、男の狂気は世界中に伝染した。


イア、イア、クトゥルフ!!

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狂気の伝染 しき @7TUYA

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