エピローグ

第58話 届いてしまった勇気

「絶対許してくれないもん」


 少女は大きな目に涙をいっぱい浮かべていた。


「それは謝ってみないとわからないだろう?」


 9つ下の女の子。こんな妹がいたらよかったのに。

 少年はそんなことを考える。

 ポケットをさぐり、セロファンに包まれた、ビー玉みたいな飴を取り出した。


「それじゃあ、これをあげる。これはね、勇気の出る飴なんだ」


「勇気の出る飴?」


「だから、きっと謝れるよ」


「嘘!」


「嘘じゃない。弟が僕のために作ってくれたんだ。弟は…とっても頭が良いんだ。父の前に出ると何もいえなくなっちゃうから、そんな僕が勇気を出せるように飴を作ってくれた」


「……それじゃあ、お兄ちゃんが舐めなくちゃ、だめじゃない」


 少女は口をとがらせた。すると少年はふわりと微笑んだ。


「僕はいいんだ。弟が僕のためにしてくれただけで、勇気が出たからね。これは今、君の方が必要としている」


 少女はこくんと頷き、手を差し出した。


「ありがとう。私、謝ってくる」


 少女はセロファンをとき、太陽の光を浴びてきらりと光った飴を、口の中にいれた。




<ファンタジーの法則・完>

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