明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
数ある物語から辿り着き、そして訪れてくださること、読んでくださること。
時には反応までいただき、とても励まされています。ありがとうございます。
今年の予定としては、引き続きプラスを更新していきます。
現在アップしているもので、この章の3分の1はクリアしていると思うので……そんな感じです。
わたし長くなる傾向があるので、定かとは言えないですが。
さすがに1年は引っ張らないと思います(笑)。
その後は孤児院とダンジョンを舞台とした、物語を考えています。
せっかく異世界の後日譚だったり、放課後の続きもどこかのタイミングで始められたらなと思っています。体力のある限り(笑)。
これからも妄想を綴っていくつもりです。
今年もお付き合いいただけたら、激しく嬉しいです。
プラス的は只今『第857話 逃走劇⑨帰路』まで公開しております。
おまけで貼り付けますミニミニストーリーは、813話あたりのお話です。
多分気にされていた方もいらっしゃるかなーと思うんですけど。
アダムたちと会い襲撃されて、トスカたちは街を飛び出しました。
銀髪からもらったお馬さんたちを、馬屋に預けたまま。
その後のお馬さんの話です。
お読みいただければ幸いです。
seo拝
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『馬とネズミ』
馬屋に青がかったネズミが現れた。
馬の背に乗り、何やらチュウチュウ鳴いている。
もそもそと藁を食べていた馬は、興味なさそうに首をあげる。
『聞いているか? もうここは引き上げていい』
奥歯で藁を噛みしめながら、ネズミの言葉も噛みしめる。
獣憑きは獣になると思考が低下する。大型の獣に変わるとその傾向が強い。
複雑なことをするには向いていないが、単純作業にはもってこいだ。
言っていたことを覚えておくとか、そういうのは得意だ。
ゆえにガゴチの諜報員として、様々なところに赴いている。
馬の獣憑きのふたりは、若に頼まれて馬になっていたことを思い出した。
とぼけたふたりではあるけれど、聞いたことを全て言うよう言われたら、馬になってから耳にしたことを人型になった時に思い出せる。
『聞こえてるか? 若がもう引き上げろと』
『聞こえとるよ』
『あんの子供たちは、ちゃんと逃げられたのか?』
藁を喰みつつ、若の直近であるネズミに尋ねる。
ネズミは馬の獣憑きが〝人〟のことを尋ねるのを珍しいと思った。
馬の二人は走らせれば早いが、穏やかな性格で、それゆえにあまり物事にこだわりが無い。仕事のことでも何か質問されたことはなかった。
依頼で請け負った子供たちのいく末を心配している何て珍しいことだった。
馬にも乗れない子供たちだった。乗り方も、走らせ方も知らない。
自分たちだから乗せてやったが、普通の馬だったら振り落とされていたはずだ。
けれどブラッシングの腕は大したものだった。
何も持ってない子供たちなのに、自分たちの食事より、まず馬のことを心配した。水を飲ませ、草を喰むと安心していた。
馬屋に預けてからも、街にくれば自分たちに挨拶を欠かさなかった。
馬たちは子供たちのことを好きになっていたのだ。
『組織に見つかって逃げ出した。もうここには戻れないだろう。だから若が引き上げるようにと』
『そうか。捕まらないといいな。けれど、強いのが一緒だから大丈夫だろう』
あの白いのは力を必要以上に出さないようにしていたけれど、かなり強い。あれが本気になれば街のひとつやふたつ吹っ飛ぶはずだ。
この馬屋も、仕事は無理をさせないし、温度管理も食事もブラッシングも行き届いている。
快適に過ごせていたので、子供たちが無事だといいと思える余裕があった。
『俺たちはすぐ他の仕事につくのか?』
馬がネズミに尋ねる。
『いいや、ゆっくり休んでくれて構わないと言っていたぞ』
ふたりは馬化を解いたので、人の姿になった。
『ガゴチに帰るか?』
『仕事がないなら、ちょっとブラブラしようかな』
ネズミは頷く。
『それじゃあ、適当に帰ってこいよ』
『あいよ』
次の日、子供たちから預かっている馬がいなくなったことで、馬屋は騒然とした。
子供たちが寄った時に謝らなければと思っていたけれど、逃げたことを知っていたかのように、街に子供たちはこなくなってしまった。
時がずいぶん経ってから、子供のうちのひとりが、馬屋に来た。
お金も払わずに放置して申し訳ないと頭を下げた。
馬屋の主人も困ってしまう。
子供たちが街に来なくなったあたりで馬が逃げてしまったのだと説明した。
ここで休ませていたのだがと厩舎を見せていたら、何事もなかったように、その馬たちが中にいて、藁を喰んでいた。
ええ?っと驚きの声がこだましたのは、また別の話。