第7話事件解決!そして…

岡崎家の一人娘『岡崎美佳』殺人事件も、真犯人おトキの逮捕により、ようやく解決の運びとなった。


そして、その数日後。

岡崎邸では、チャリパイや松田刑事に対する事件解決の労いと共に、亡き愛娘美佳への供養の意味も込めて、友人知人を集めささやかなパーティーが開かれていた。


「いや、松田刑事。そして森永探偵事務所の皆さん!皆さんのおかげで美佳の魂も無事に成仏する事が出来るでしょう。

本当にありがとうございました!」


岡崎は、五人に向かって丁寧な言葉で深々と頭を下げた。


「ところで松田刑事……おトキさんは、どうして美佳さんを殺さなければならなかったの?」


てぃーだが、最後まで解らなかったおトキの殺害動機について、松田にその後の取り調べの事を尋ねると、松田は何とも理解に苦むような顔でこう答えた。


「あの夜、おトキさんが美佳の部屋を訪れた時……その時はちょうど、小島みどりと例の芸人になる、ならないでちょっとしたイザコザがあった後の事だった」


「確か、みどりさんは美佳さんにビンタをくれて帰っちゃったんだよね」


「そう。……だから尚更美佳は機嫌が悪かったんだろうな……おトキさんの顔を見るなり、凄い剣幕でおトキさんにある事を要求したらしい……そして、おトキさんはその要求に応える事が出来なかった……」


「怒った美佳は、その事を岡崎氏に告発して『おトキさんをクビにしてやる!』と言って脅しをかけたらしいんだ……」


「とんだ八つ当たりね……おトキさんも気の毒に」


松田の話を聞いて、てぃーだがおトキに同情すると……


「まぁ、美佳も本気で言った訳では無いんだと思うよ……何しろ、『本当にそんな事でクビにしちまうのかよ!』って位の事だからな」


そう言って、松田はテーブルのビールに口を付けると、何ともやりきれない感じで、首を左右に振った。


おトキが美佳に要求され、応えられなかったその要求とは、一体何だったのだろう?


シチローがその事について松田に尋ねると……

松田は真剣な顔でこう答えるのだった。


「あの夜、美佳がおトキさんに要求した事とは…………」


「要求した事とは?」


「今すぐ、フランス『ルブラン・ド・ムシュラード』のパティシエ『ピエール』の作ったババロアが食べたい!」


「なんじゃあ~そりゃあ~~~!!」


松田刑事の、そのあまりに予想外の答えにシチロー達は大声を上げて驚いた!


「そんなの無理に決まってるじゃん!」


「いや、しかしそれがそうでも無いんだ……そのパティシエの作ったババロアってのは美佳の大好物のスイーツで、岡崎家では定期的に空輸で取り寄せていたらしい。

ところが、たまたまその日は在庫を切らしていて……しかも、その日最後の1つをつまみ食いしたのが、おトキさん本人だったらしいよ……」


「・・・・・・・・」


絶句するシチロー達。


まさかスイーツ1つの事で、こんな殺人事件にまで発展するなんて……


暫くの沈黙の後、シチローがやりきれない顔で呟いた。


「ルブラン・ド・ムシュラードのババロアねぇ……………………………………ん?…ババロア?」




『ババ…ロア』……









もしかしたら、美佳の書いたあのダイイングメッセージは…………






おしまい♪



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チャリパイEp10~資産家令嬢殺人事件~ 夏目 漱一郎 @minoru_3930

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