テレパシー

『誰か聞こえるか? このクラスにテレパシーが使える人、いたら応答してくれ』

 

『え? もしもし?』

 

『おっ! ここにもいたのかテレパスが。いやー便利だよなこの能力。周りにバレることなく互いの脳内だけで会話できるんだから。あ、俺、今日転校してきた鈴木。よろしくな』

 

『うわ、久しぶりにテレパシー使った。そういえばこんな感じだったなぁ。誰かと繋がるのいつぶりだろう。そっか、鈴木くんもこの能力者だったんだ』

 

『テレパス同士仲良くしようぜ』

 

『うん。でもせっかくなのに悪いんだけどさ、今は静かにしててもらえない? 授業中だから』

 

『何だよつれないなぁ。前の学校の時なんかクラスに3人もテレパスいてさ。授業中も真面目に授業受けてるフリしてテレパシーで盛り上がったり、テストの時なんてみんなで答え合わせしたり教え合ったりしてたんだぜ。おかげで成績も良くてさ。能力の有効活用ってやつだよ。だから俺達も協力しようぜ、そうすれば真面目に授業なんて聞かなくても平気だって。どーせ今やってる授業もつまんないしさ。テレパシーでも使ってないと眠くなっちまう』

 

『……なるほど』

 

『で、お前誰なの? 名前は?』

 

『田中だよ』

 

『田中か。すまん、転校したばっかりだからまだわからなくて。えぇっと、席はどこ? 』

 

『前だよ。君の列の一番前』

 

『あれ? 一番前の席は確か佐藤じゃなかったっけ?』

 

『その前だよ』

 

『どういうこと……? あ……』

 

 


「鈴木くん、あとで職員室に来なさい」

 

「た……田中先生……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰か達の会話 ミヤコヒト @miyakohito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る