くじ

「うおおおお! 当たった! 5万円!」

 

「マジかよ! たまたま立ち寄ったサービスエリアで買ったスクラッチくじ、そんな大当たりしたのかよ!」

 

「よっしゃあー!」

 

「ナイスだよ、よくやった!」

 

「最高だー! くじ買ってみてよかったー!」

 

「これは今日の飯も豪勢なのいっちゃうか! ステーキも良いな! 寿司でも良いなー! 酒も限界まで飲もう! 今夜はパーっとやっちまおうぜー!」

 

「…………。ちょっと待って」

 

「え?」

 

「いや、なんか高い飯屋行く気でいるみたいだけど、このくじは俺が買って、俺が当てたやつだから。この5万円は全て俺のものだから。今日の飯は予定通り牛丼屋だから」

 

「…………」

 

「楽しみだなー。この5万何に使おうかなー」

 

「いやいやいや、ここね、このサービスエリア。今この場所で買ったから、その当たりくじが引けたんだよね? ていうことはさ、ここまで車を出した俺の功績でもあるよね? 恩恵にあずかる権利、あるよね?」

 

「待って待って。ここのサービスエリアに寄ろうって言ったのは俺じゃん? だから全ては俺きっかけの出来事じゃん?」

 

「でもさ、俺がこのくじ売り場が見える位置に駐車したからこそ、お前はくじ引こうって考えになったんだよね? 元々お前はトイレにだけ立ち寄るつもりだったんだよね?」

 

「だとしても結局くじを買ったのは俺の決断なわけじゃん? だったらやっぱりその結果も俺のものじゃん?」


「それでも最終的には車を出した俺に分があるよね? 車に乗ってなかった場合にサービスエリア寄ろうってなるか? ならないよね? 俺のこの車があってこそだよね?」

 

「もちろん車を出してくれたことは感謝してる。本当に助かったよ。でもそれとこれとは話が違うじゃん? 第一、今回出かける計画を立てたのって俺じゃん? 日程も場所も待ち合わせ時間も、俺が決めたじゃん?」

 

「いや、ことの発端で言うなら、俺の方が先に、1週間前くらいに、今度ドライブでもするかーってLINEしたんだよね? その一言こそが今回のきっかけだよね?」

 

「それを言うならよ、そのやりとりをしたLINE。そのLINEを交換しようぜって言い出したの俺だったじゃん?」


「その前、友達になろうぜって言ったの俺だよね?」

 

「その時最初に挨拶したのは俺じゃん?」

 

「まず俺とお前が出会えたのは、俺が頑張ってあの大学に入ったからだよね?」

 

「それを言うなら俺もそうじゃん?」

 

「じゃあ、その出会いの場である大学があったからだよね? あの大学こそが全ての始まりだよね?」

 

「その大学が建てられた土地あってのものじゃん?」

 

「それってつまり日本という国ってことだよね?」

 

「いや、さらに言うなら国というものを作り出した文明そのものじゃん?」

 

「その文明を築いた人類こそだよね?」

 

「人類が人類に至らしめた歴史じゃん?」

 

「世界だよね?」

 

「地球じゃん?」

 

「宇宙」

 

「銀河」

 

「太陽」

 

「光」

 

「空間」

 

「ゆらぎ」

 

「原子」

 

「素粒子」

 

「存在」

 

「時間」


「次元」

 

「ビッグバン」

 

「有」

 

「無」

 

「…………」

 

「………」

 

「……」

 

「…」

 

 


「今ここで、こうして生きてることが」

 

「超奇跡的な大当たり、なんだなぁ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る