第16話

「俺達全員の赤点回避おめでとう!!!」

「かんぱーい!!」


「「「かんぱーーい!」」」


無事に中間テストは終わり、俺と誠は無事に赤点を回避することが出来た。


というわけで俺と誠の奢りでカラオケで打ち上げをしようという話になったのだ。


「いやぁ……西園寺さんが転校してきてくれて助かったよぉ…」


「いえいえ…野崎くんの要領が良かったからてすよ」


「そうかなぁ???」


「未来ちゃん。誠をあんま調子に乗せちゃダメだからね」


「じゃあ期末は1人でやれるよなぁ?」


「……すいません。身の程をわきまえます」


こうしていざ打ち上げが始まったのはいいのだが……


「なぁ恭華、1つ聞いていいか?」


「どした?」


「なんだこのキャバクラみたいな配置は」


「………そりゃペアごとに分かれるでしょ」


普通こういう時は男子は男子。女子は女子で分かれるもんだと思っていたのだが…


「なに?私の隣が嫌だっての?」


「そうは言ってねぇけどさ…」


真ん中に男を配置し、その両脇に女子を配置するというなんとも不思議な構図になっている。


「慎二は毎日西園寺さんの隣に座れてんだからいいだろ?俺にも美女の隣ってのを味あわせてくれよ」


「美女って………そんなぁ…へへ」



(グッッッッ!!!)



勉強会を経て、誠と西園寺さんの仲は深まったようで、時々優等生モードが崩れつつある。


「ほら未来ちゃんも満更でもなさそうだしさ?とりあえず楽しも?」


「そ、そうだな……」



こうして打ち上げは俺以外を除いて和気あいあいと進み、いつの間にか終わりを迎えていた。



「やーーーー楽しかったなぁ!」


「はい!すっごく!」


「そうだな…」


「またやろっか!」


時計はすでに18時を回っており、この場で解散ということになったのだが…


「では私の家はあっちなので」


俺達とは逆方向に帰ろうとする西園寺さん。

俺は言うべき事があるような気がしたが、それは俺の役目ではないと思い、口をつぐんだ。


「送ってこうか?」


すると、誠は俺が躊躇っていた言葉をさも当たり前かのように口にした。


「え、いや…ありがたい話ではありますが」


「ほら、ここら辺暗いじゃん?せめて明るいとこまでは送らせてよ」


「……そうですね。お願いします」


「てなわけで大通りまで送ってくるから先帰ってていいぞー」


「はーーーい」


「……わかった」


そうして誠と西園寺さんは俺達と逆の方へと歩いていった。

残された俺と恭華も歩きだし、ふたりで帰ることにした。



(もし……もし…そのまま………家にまで行って………)



『今日は親がいないんです……』



(………………何考えてんだ…バカかよ…)



別にそんな深い関係でもないのに馬鹿みたいな妄想ばかりしてしまう。コーチとしてはまだしも友人としては誠の方が仲を深めているはずだ。




「…ねぇ慎二」


「なんだよ」


「あのふたり、良い感じだと思わない?」


恭華と帰りながらも西園寺さん達の事を考えていると、恭華からそんなことを言われた。


「…そう、かもな」


「なんだか西園寺さんも満更でもなさそうだしさ…私達で協力してくっつけてあげようよ」


「……誠は」


「誠だってデレデレしてるじゃん。結構お似合いだと思うんだけどなぁ」


そういうことが言いたいんじゃない。


「……なになにもしかして慎二は西園寺さんの事好きなの?」


「…………んなわけないだろ」


「だったら良いじゃん!ね!」



そうだ。


別に俺はただのコーチで、ファンで、友人なだけで………好きなわけ……



「また今度みんなで遊びに行こうよ!そうだなぁ…ゲーセンとか!誠と慎二が格ゲーしてさ!ちょっと負けてあげれば――


「は?」


恭華の発言に俺は思わずムカついてしまい、反射的に威圧してしまった。


「……いいじゃん一回くらい!たかがゲームじゃん?お金なら私が出すからさ!」


「………………そうだな」


俺は一度冷静になり、恭華の提案を受け入れることにした。


(そうだ……たかがゲームだ………)


その後、他愛もない話をしながら帰っているといつの間にか恭華の家に着いており、そのまま分かれた後、ひとり虚しく我が家に帰るのだった。










「ただいまー」


「おかえり。この後は何かあるの?」


「んー……ないかな」


「分かった。じゃあ早めに寝なさいね」


「はーい」



お母さんとすれ違い様に会話し、自分の部屋へと入る。




「…………」


部屋に入るとすぐに椅子に座り、もたれかかる。そのままパソコンを起動し、作業にとりかかった。


(ここをこうして……うーん…)


いつもはスラスラと出来る作業のはずなのにちっとも進まない。




『…………んなわけないだろ』




嘘だ



もう3年もキミのこと見てるってのに




あんな女のどこが…



ピロリン


スマホに通知が届いたのですぐに開く。



未来ちゃん『今日はとても楽しかったです!』




ムカつく




でも




    『こっちも!めっちゃ楽しかった!』

         『また4人で行こうね!』


未来ちゃん『はい!!是非!』




文章からですら伝わってくる純粋さ




ホントにムカつく




あぁはやく……






慎二の隣から消えればいいのに

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隣の席の美少女から格闘ゲームのコーチになって欲しいと懇願された話 鉄分 @CA1_4

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