数える
妻は夜、指を一つ一つ丁寧に折って
「かぞえごと」
をする。
ふと目をやると、首をかしげながら、優しい微笑みを浮かべて、ゆっくり何かを数えている。
「何を数えているんだい?」
彼女は瞬きを一つしてから、私の方を向いて言う。
あなたの誕生日まであと何日なのかしら。
冷蔵庫のアイスが何日後になくなるか…。
お芋を何軒におすそわけできるかと思って。
それから二人でそのことについて話すのだ。
どこまでも平穏な時間は続く。
居間に、玄関に、寝室に、笑いの余韻が残る。
こわいものがある。
私のいない家で、彼女が一日ずつ指を折っていく。
私がいなくなって一日が過ぎ、また一日過ぎ、また一日…。
十一日目で、彼女は折る指がないことに気付く。
けれど、そのことについて話す人はいない。
私のサンドイッチ riasu @ariasu
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